旅とすあな

旅とすあな

最近の記事

  • 固定された記事

バナナの木

植物をなんども枯らしたことがある。 たぶん一番最初は まりも。 小学校のころ、北海道へ行く友達にたのんで買ってきてもらった。 小さな瓶にコロンと入っていて、とても可愛かった。 テレビで見るあの まりも だった。 コルクを抜いてときどき水を替え、子どもなりに世話をしていた。 瓶の中のまりもは、 ある時から まり であるのをやめて、スクスク成長し、 ただの藻になった。 いまの自分なら、大きな瓶にうつして見守ったかもしれない。 けれど、当時は小さな瓶いっぱいに成

    • 海藻おじさん

      きのう変わったことがあった。 夕方、近所の浜でこん🐶を遊ばせていたら、うしろから人が歩いてきた。 「ちょっと、お話しいいですか?」と言われて。 相手は知らないメガネのおじさん。 「はい」って言って、言ってから変わった人やな..と見てると、 おじさんは手になんか持ってる。 「これって食べられるんでしょうか?」 なんか、アオサみたいな海藻。 「いやぁ、どうなんでしょう…」なんて返す。 おじさんは宮崎から来たと言った。 宮崎から車で、東京まで見物に行くのが趣味だそう。 「下

      • Furi fUri

        「ママ、やめて。」   わたしの声を無視して、ママがインスタライブをはじめる。 あざやかなグリーンのポタージュ。 湯気の立つスパニッシュオムレツ。 お洒落な作家の器に注がれたコーヒー。  ついさっきお店の人から聞いたばかりの内容を、 ママはスマホに向かって喋りはじめる。 わたしはまたか、とうんざりして、あつあつのオムレツを黙って口に運ぶ。 新しくできたカフェ、屋上がすっごい良かったんだって! と、ママが興奮して帰ってきたのが3日前。 るりちゃんが教えてくれたらしい。

        • 見えない世界の物語 奄美大島

          夢をみた。 ひらけた海と、大岩の夢。 オンナガミとオトコガミはゆったりと大岩に坐り、わたしに言う。 「いつ来るのだ。なにをしている。」 そこで目がさめた。 奄美の緑は濃い。 息をすれば、産毛まで染まりそうだ。 「日陰はすこし涼しいでしょう。」 宿のおかみさんが笑う。 涸れた沢。 呼ばれていたのはここだった。 ガジュマルの古木をくぐり、森の奥へとすすむ。 「これだ。」 森からしみ出す水が塞がれていた。 おかみさんと水源に積もった落ち葉をかき集める。 生

        • 固定された記事

        バナナの木

          ママ

          ママ、おこらないできいて わたしはママじゃない ママ、おこらないできいて レースのくつしたがきらいなの ママ、おこらないできいて わたしはとおくでくらすことにきめた ママ、なかないで ちゃんときいて わたしたちぜんぜんにていない ママ、おぼえていて あなたのためにいきたわたし ママ、おもいだして あなたはきれいなおんな ママ、わらっていて わたしたち もうじゆうだ ママ、ママ、ママ。 さようなら あしたから わたしはひとりのわたし

          おっさん

          おっさんはどうして おっさんになってしまったんだろ あんなにカラフルな生き物だったのに 黒い服ばかり着て ビルからは煙(けむ)が出ている

          ひとんずつ

          小説になるまえの りんかくが溶けた言葉は どうやったら 美しくとりだしてあげられる. わたしがきめつけて そうきめつけて とりだしきれなかった 型抜きのあまりの部分が ほんとは一番おいしいかも知れん。 絵にすればよかったか。 歌にすればよかったか。 踊りにすればよかったか。 ひとつのことを やってごらんと いろんな大人にいわれて生きてきて いやだな、きゅうくつだなと ずっと思とったけど、 本当だなと思うこともあるんだ。 ひとつをできたら、

          AIR

          12月の夜の明かりは みんなクリスマスに見える。 オレンジ色ならなおさらに。 寒いのとなんか幸せなのと 一緒に感じるのがふしぎよな。 寒いのに幸せってふしぎよな。 ここからは島が見えるよ。 島のクリスマスはどんなだろうか きっと、街のそれよりも ずっと静かで、神聖で 家族はこたつに入って 海の音を聴いてるんだろう 屋上のオリーブといっしょに わたしは星をみている

          よんだら

          ポーランドはどんなところでしたか。 どうして日本をえらんだのですか。 かわいい子どもが3人もいて おくさんがいて、 日本のおとうさんがいて、 きっと仕事のなかまや、 こちらでできた友達もいるでしょう。 でも、 目の前に立っているあなたはどこか、 ひとりで覚悟をきめて生きている人の孤独の気配がする。 そっとじぶんの世界を抱いて。

          クラクフのよる

          外国の人に話しかけるのは  どうしてかずっと楽なんだ。 わたしが勝手に似ていると感じるのかもしれない。 どこにいてもほんのりと孤独の気配がする。 本当の故郷をはなれて どうして この匂いを わすれていたんだろう みんな煤けたガラスの奥の 焚き火を見ていた。 いつのまにかねむってしまった。

          クラクフのよる

          孤独が深くなってきたら、 立ち止まって、 自分の足で山をおりる。 山をおりたら、 この人、と思った相手に 自分から話しかけてみる。 それができたら大丈夫だ。

          木をうえ、 花をうえ

          「木をうえ、花をうえ、道をつくりなさい。 それはあなたの道。いつか愛するものが集う道となるわ。」 ある朝、花をもとめにきた客がわたしにそう告げた。 生花しか扱ったことがなかった。だから、何もかも手探りで始めた。 最初に植えた柊は苗木のときから驚くほど鋭い葉をもっていた。 周りの草を抜いてやるたびに、わたしの手には傷ができ、血が滲んだ。 次に桜を植えた。 小さな苗からは、甘い春の香りがした。 それにつられてやってくる毛虫、毛虫、毛虫。 柔らかい桜を守るために、

          木をうえ、 花をうえ

          +11

          Lomoで近所をとる

          Lomoで近所をとる

          +11

          誰のことも拝まない

          もう、誰のことも拝まない。そう決めた。 人を拝まないということは、 人を尊敬しないということではない。 人を尊重しないということではない。 人を拝まないということは、 誰にもぶら下がらないということだ。 助けを求めて、救いを求めて、 自分の行く先を決めてもらうために、擦り寄らないということだ。 拝みたくなるような眩しい人に出会う。 これまでも出会った。 これからも出会うだろう。 でも彼らに近づきたくて、 知ろうとすればするほどに気付かされてきた。 本

          誰のことも拝まない

          化学反応

          このまま 白く燃えつきたら あたしは他人になれるだろうか 澄んだ酸素と化合して きれいな人に なれるだろうか Photo by Umi

          絵筆

          パリパリに乾いたみどりが 妙に愛しくて あたしのものだよ、と 叫びだしたくなる Photo by romello-williams on unsplash