深鱶亭風遁

Fukafuka-tei Futon(笑)

深鱶亭風遁

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自選集「よォーこそ」

0.はじめに  書いて、出来が良かったら投稿しようとか、そんな行儀のいいことはできない。人に読まれるなどという意識は二の次で、自分が書き慣れるということがここにおける全てである。それを一年やった。多少はましになったように思う。  書き始めるときに書くことが決まっていることは少ない。なにかを書こうと思って、キーボードと向き合う。思いついた言葉を実際に打ち込んでみて、そこからなにか思いつけば上々、そうでなければもう少し考える。そうして、一時間もかけずにできあがったものを、無責任

    • 死、という暇人の玩具について

      僕は、俗物であって、酒によって、いま眼鏡をかけるより、かけないほうが、画面がよく見えるのである。 俗物は、君に問う。君のいう、君の尊ぶ、君の愛する、不幸、常軌を逸したものごと、異常、欠陥、欠点、救いようのない部分、は、ほんとうに、そうなのであろうか。 世の中は、どうでもよくて、広くて、秩序などないのである。ぜ。ぶち壊せ、ぶち壊せぶち壊せ、ぶち壊せ、ぶち壊せ、ぶち壊せ、ぶち壊せ。 お前なんて、どうでもいいんだ。誰も、お前なんて、どうでもいいんだ。壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、破壊と再

      • 嘘日記20240612

        普通の人の普通の生活 普通の幸せを映した YouTubeの動画 再生数20回くらいの 平日昼過ぎの住宅街を映した 風の音のやたら入ったあの動画は 開放感と 気だるさと ちょっとした罪悪感の入り混じった あの空気を捉えたあの動画は 僕の喉元に 魚の小骨みたいに刺さってる

        • もっと美しいもの

           姉さん。僕はたばこをやめました。もともと、全然必要ではなかったんだ。ただただ、悪く格好つけたかったんだな。やめても、何も変わらない。これで、多少は健康になって、じき姉さん家に遊びにいけるだろうか。静子は、もう二歳か。もう僕のこと覚えてないだろうな。実のところ、僕も顔をよく覚えていない。悪いな。  ここ数年、入れ替わり立ち替わり僕のところに人が訪れては、去り、僕も、さまざま顔を覚えては、忘れ、そういう調子で、まったく、不安定なのです。  姉さん、人は、ひとりでなくなれるのだろ

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        自選集「よォーこそ」

        マガジン

        • 2本

        記事

          連載 猫(2)

           お手紙、ありがとうございました。拝読いたしました。  ぜひうちにいらして、猫をご覧になってください。家にはいつでも人がいますので、特に断りなくいらっしゃって構いません。  伝えなければいけないことといえば、これくらいでしょうか。しかし、ずいぶん詳細なお手紙をくださったので(これは嫌味ではなく、感心したんです)、わたくしのほうでも、いろいろと余計なものを付け足してみたいと思います。  まず、わたくしのこと。わたくしはきっと、あなたが猫を見た日に、猫を膝の上に乗せていたその人だ

          連載 猫(2)

          連載 猫(1)

           はじめまして。突然にこのようなお手紙を差し上げる無礼をお許しください。私は御宅から少し離れたところに住まう大学生です。大学に通う際に、御宅のそばを通ります。すてきな、立派なご邸宅ですから、通りかかるたびに、つい眺めてしまいます。  早速、こうしたお手紙をお送りするに至った経緯について、お伝えしたいのですが、簡潔に言ってしまえば、それは、猫です。猫についてなのです。  私は、ある野良猫の面倒を見ていました。いつからでしょうか。もう、去年の冬ごろには、来ていたと思います。はじめ

          連載 猫(1)

          イワンのばか

           表題の小説、トルストイの、は、読んだことがない。ただ、それをつぶやいてみたい気分だったのだ。  話では、ばかのイワンは、純朴で、キリストの教えの実践者で、つまり見返りを求めず人のために尽くす男で、話の最後ではあくまとの戦いに勝つ、らしい。  私は、イワンにはなれない。私は、ばかというより、馬鹿で、自分の一挙手一投足を意識してかっこうよく魅せようとして、ずっこけるたちである。ばかを、かっこうつけて莫迦と書こうとして、どこかを間違えて書いてしまうたちである。  この馬鹿のたちの

          イワンのばか

          終わりのない追憶

          秋が去ってしまう速度よりもずっとはやく 駆け抜けていった僕らの季節 宙の星よりも高いところから 碧い煇を投げかける 透明な水色で 水銀みたくきらきらで 恥ずかしくなるくらいあたたかくて 悲しくなるくらいやさしくて 僕らの全部を持っていった あの季節の名前 もう二度と思い出すことができない 永遠を僕の詩の中に閉じこめて 僕はその上に腰かけて 泣くんでも ため息つくんでもなく 瞼の裏に浮かんでる 深緑の輪郭のもやもやを眺めていよう ずうっとうずくまっていよう 誰かが僕の肩に手を

          終わりのない追憶

          省察Ⅰ

          再びものをかく特訓をしようと思う。 それで、ものをかくのに情緒に依存しているのはよくないと思った。 描きたいものと書く気持ちの両方がなくては書き始められないのは、不安定だ。都合が悪い。 投稿を始めた頃は、常になんというか、むらむらと、もんもんと、いらいらとしていて、しょうがなかったけれど、残念なことに最近は落ち着き始めている。老いである。 ただ、「今、感じているそれ」しか書けないのは、なかなか、三流という感じがする。落ち着き始めたからこそ、以前に感じていた何かを客体化し、冷静

          薄赤紫の夕空

          僕の中には花園があり空があり小鳥が舞う。天使がいて透明なピアノがありみな踊る。真空状態、時は止まり。一呼吸ぶんの空気たりとも入ってこない。出ていかない。 (潔癖。内世界の清潔感に対する異常なまでの追求。外世界の穢れに対する異常なまでの恐怖、嫌悪。) 僕の中には地獄がある。ドロドロ。体温。湿度。身体が剥がれて、肉に押しつぶされる。窮屈だ。子宮の中だ。逃げろ、逃げろと必死に編んだ言葉の笹舟は誰かさんの本能とやらの急降下爆撃をくらって、一つ残らず沈む。 嫌いだ……。 幼稚と健気の間

          薄赤紫の夕空

          辞退願

           突然に、自分の中にある価値が転倒して、裏返って、手の届かないところへ放り出される。これ以上生きていたって仕方がないと囁く声は、耳を塞ぎたくなるほどに甘美。  僕は、何も見たくないし、聞きたくなかった。しかし、自分の内側から溶け出てくる光と音からは、どうしたって逃れることはできないのだ。一日中、心臓に剣を、頭に銃口を突きつけられているような緊張と、不安と、吐き気がして、身体中の力は抜け、感覚はかじかんで麻痺している。  とにかく、だめなんだ。なにが、って言われてもわからないが

          さんくちゅあり宛て 料金受取人払い

          まるで不幸の薔薇でできたアーチを一日一日くぐり抜けて そのたびに頬や腕を棘に傷つけられて それでも歩んでいくのが生 ………… とでも言いたげな 生活に悲壮をみつけることに飽くことを知らぬ君 そんなんだから そんなんだから 君は不幸なんだろ 勝手に死ね 僕は知らない 君がどういう理由で死んだって関係がない 死は平等なんだ 戦争で死んだって 事故で死んだって 病気で死んだって 首を吊って死んだって みな同じように弔われるさ 自殺だからって 特別扱いしてもらえると思っているのか 生

          さんくちゅあり宛て 料金受取人払い

          呼吸する憂

          すきなAV女優の下の名前と同じ名前のプレイヤーとマッチし続けたからという理由で朝六時までゲームをした僕はおそらく愚かなのですがそんなことはどうでもよく今日も蛆虫みたいな生活を潰し切ったという重っ苦しい快感に身悶えしているのであります生活は回転する高速で回転する地球の上でしかし僕の生活は二度と同じところには戻らない一度過ぎ去った春は永遠に過去だ生きることは屈辱的で生きることは何かに縛られることで生きている限り自由とは馬鹿馬鹿しい妄想の産物で飛べないよだから死んだら天使になる想像

          呼吸する憂

          Fda001

          独自性なんてものは、誰でも最初からはないとわかっているけれども、自分とおなじものに影響を受けたのであろう人が、自分とおなじようなもの、というか、自分が頭の中だけで描いていた世界観であったり、作品未満のものも含めた自分の好きなもの、言い換えれば、自分の一部、自分の大切な部分を、自分よりうまく表現できていると、なんとも言えない気持ちになる。まず、自己同一性を著しく脅かされる感覚と、でもそれは自分の好きなものから同じように影響を受けているので、絶対に好きなはずという気持ち、だからこ

          Fda000

          面白くもない飲み会にいて、もう手元に酒もなくて、端っこの席でぼうとしていた。もう閉店にもなるころ、手洗いのために席を立つと、突然に、隣の卓の女が、恐らくは手のついていない七味のかかったメンマが入った、小さい深皿を俺によこして、余ったので、食べてください、だとかなんとか、言ってよこしたが、俺はびっくりして、ひたすらに退けた。すると女は、「つまんなあい」といって、男二人がいる席に戻ったのだ。 俺は押し付けられたお笑いと、その勝手な評価に、腹立たしい気もしたが、なんだか痛快な気分も

          上場おめでとう!

          noteが上場したらしい。ロゴがスタイリッシュになっていた。がんばってほしい。(終) もう秋くらいからずっと言ってる気がするんだけど、最近、書いてもなんか違う感がすごいものしかできない。 去年とか、今年の春には、書いたものは、それを読み返したときに「ああ、これ、俺のことだ。まさしく。書けたなあ。」という感じがあった。ところが最近は、書いてる途中で、違う、となる。それで途中でやめてしまう。 これは、今までのやり方では表現できないものに自分がなったということなのか。模索か。文章の

          上場おめでとう!