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記憶力が良いと昔から言われてきた



小さな頃から、『あさせちゃんは記憶力が良いねえ』と言われてきた。学生時代の友人達と話すとき、本人たちが覚えていないような会話や出来事を流暢に話すわたしをみて、みんな驚くということがよくある。

最近も好きな人から、『あさせさんは本当に記憶力が良いなって。細かい、みんなが忘れているようなことを覚えているからいつも、すごいなぁって思ってる』というようなことを言われていた。

わたしがほかの人より記憶力が良いのはたぶん、『エピソード記憶』を自然としているからだと思う。


エピソード記憶とは、陳述記憶の一つで、「個人が経験した出来事に関する記憶」であり、出来事の内容(「何」を経験したか)に加えて、出来事を経験したときのさまざまな不随情報(周囲の環境すなわち時間・空間的文脈、あるいはそのときの自己身体的・心理的状態など)とともに記憶されていることが重要な特徴である。内側側頭葉(海馬と海馬傍回)が重要な領域である。

出典 脳科学辞典

エピソード記憶は長期記憶に分類されており、出来事の内容だけでなく、その時の自分の心情や五感で受け取ったものなどを紐づけたものだ。

この概念を知った時わたしは、なるほど確かにと納得した。わたしが友達との出来事を記憶するときは、たいていその空間のイメージ丸ごとを自分の中に収めている。高校時代には友達とのやり取りを、小説の一場面のように仔細に書き出していた時期もある。つまり自分でも無意識のうちに、長期記憶であるエピソード記憶をしていたわけだ。

学生時代の試験勉強の際には、教科書の見開きを俯瞰的に見て、ページの位置で暗記していたこともよくある。暗記科目は。

自分ではそういうふうに、エピソード記憶をすることが自然な方法だったけど、他の人たちの反応をみるに、結構珍しいのかもしれないと思った。ほかの人たちがもし(わからないけれど)3割くらいエピソード記憶をしているとすれば、わたしは7割くらいがエピソード記憶なんじゃないか、とほんのり想像する。

これももしかすると、感覚が人より鋭敏で、環境や世界から受け取る情報が多いと言われているHSP由来のものなのかもしれない。

HSPは自分でも無意識のうちにさまざまな情報を受け取ってしまうので、まるで常に受動喫煙しているみたいでいつも息苦しく感じてしまうけど、その分、自分の中に留めておける感覚も多いのかもしれない。

それは世界や友人達を愛している自分にとっては希望であり、救いだなと思った。

そんなわけで生来的にインプットは得意だけど、わたしはアウトプットの方法が未だにわかっていない。というか、自分に合ったものを見つけられていない。自意識みたいなものを公衆の場にさらけ出すことに抵抗が強いのかもしれない。でも、そのままだとただただ自分の器から情報が溢れるばかりで、いつも溺れているような苦しさの中に留まることになってしまう。

だからこうやって、文字を書くこと、あるいは歌うこと(最近は有難いことに歌を褒められたり、歌って、と頼まれる機会も多い)、絵を描くこと、広い意味での創作活動に身を浸していきたいなと強く思っている。

実は作詞や作曲にも興味があって、いつか挑戦してみたいことのひとつだ。

そうやって何かを表現して人にみてもらう、聴いてもらうことでわたしは他者や社会と繋がりたいのかもしれない。それに気が付くのにも、随分時間がかかったなぁ。

わたし個人として産まれたときから家族にもとめられていた歯車としての「あさせ」は既に死んでいて、いまは余生だと思っていて。紙屑になったわたしはふわふわと社会の隅をただよいながら、風を感じて、空を見上げて、何か良いものを運ぶ存在になりたい。人が一人の夜に、そっと寄り添えるようななにかを。わたしは生来、自分がしたことで親しい人が喜んでくれるのがとても好きなのだ。そういうときにもっとも、存在価値を感じる。自分のために生きられないからこそ、そうやって権力や欺瞞などから遠い存在として、なんとか生存していたい。真摯に、人を裏切らず、できるだけ傷つけず、なにか芳しい香りを運ぶ風のような存在に。


それが今のなによりの願いや夢、かもしれないです。


そういえば書いていてふと思い出したけれど、わたしが学生時代に熱中して読み漁った大好きな作家さん・恩田陸女史の小説のなかに、『記憶は数珠のようにつながっている。』というような一節があった気がする。

それもエピソード記憶と同じようなことかもしれない。わたしは一つの物事から連想してさまざまな場所へ思考が飛ぶことが多いし、そういう思考回路の持ち主なんだろう。何かに何かを紐づけて普段から思考しているんだと思う。自分の思考体系を、こんなふうに時々客観的にみてみるのは非常に面白く興味深いなと思った。


ずっと書きたいなと思っていたことが一つ書けて、気持ち的にとてもすっきりしている。noteを始めて良かったなと思う。これからも細く長く、続けていきたい。

麦の海に沈む果実も、久しぶりに読み返したくなったなぁ。理瀬は今まで出会った物語のなかの人物のなかでも、とりわけ好きでお気に入りの女の子です。


2021.2.10 ベッドの上で寝そべりながら。ハーブティー片手に。 あさせ




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