宇野重規の「民主主義とは何か」を語る
民主主義とは何か
著者:宇野重規
講談社現代新書
初版:2020/1/20
前書き
今現在、日本の民主主義は危機にあると常に、365日感じている。そもそも「民主主義とはなにか?」と問われると定義づけが難しい。この本の冒頭で著者は読者に対して二択クイズを三つ出すがどれも答えにくい。それは以下の三つである。どちらが正しいか。
一問目
A1「民主主義とは多数決だ。より多くの人々が賛成したのだから、反対した人も従ってもらう必要がある」
A2「民主主義の下、すべての人間は平等だ。多数派によって抑圧されないように、少数派の意見を尊重しなければならない」
二問目
B1「民主主義国家とは、公正な選挙が行われている国を意味する。選挙を通じて国民の代表者を選ぶのが民主主義だ」
B2「民主主義とは、自分たちの社会の課題を自分たち自身で解決していくことだ。選挙だけが民主主義ではない」
三問目
C1「民主主義とは国の制度のことだ。国民が主権者であり、その国民の意志を政治に適切に反映させる具体的な仕組みが民主主義だ」
C2「民主主義とは理念だ。平等な人々がともに生きていく社会をつくっていくための、終わることのない過程が民主主義だ」
日本の民主主義は民意という観点から民主主義なのか疑わしい。ただ、民主主義の問題は日本に限ったことではない。世界の人々はこの危機を乗り越えられるのだろうか?
本書の序章で著者が考える民主主義の危機を確認し歴史を振り返り民主主義がどのようにして現代まで受け継がれてきたのか、そして現状の危機を乗り越えるヒントを探す。
著者:宇野重規
政治学者。専門は政治思想史・政治哲学。東京大学社会科学研究所教授。著書に「保守主義とはなにか」「民主主義のつくり方」など。
民主主義危機の一つにして最も重大な「ポピュリズムの台頭」
ポピュリズムとは?
(1)不正確な、ときに虚偽の情報に踊らされた大衆による非合理的な決定
(2)自らの権力獲得のために大衆を操作したり迎合する政治家の政治スタイル
(3)既成政治や既成エリートに対する大衆の異議申し立て
例えば2016年、米国大統領選でトランプは、ときにフェイクニュースを含む激しい攻撃、特定の国の移民を犯罪者扱いし国境に壁を作るなどといった発言をし勝利した。また、この選挙ではロシアによるサイバー攻撃やSNSを通じたトランプ勝利のための介入があったとも。
これは非常に大問題ですぐ対処しなければと思うのも無理はないがことは複雑である。グローバル化によって不安に苛まれた人々の政治に対する不満や反感を受けとめてくれるのは、ある意味排外主義者だったトランプしかいなかったのも事実。こういった人々のためにもトランプは必要であったし彼らの民意反映も民主主義にとって大切である。
ここに民主主義とポピュリズムの問題がある。これに著者は次のように語る。
感想
世界史等で民主主義に触れることはあったが、民主主義を中心に歴史を振り返ることはなかったため、いい機会ではあった。「自由の国アメリカ」と言われているが民主主義の初期を見ると自由の国なのかもしれないが、民主的であるか、と問われると首を縦に振りにくい。またフランス革命についても近頃、自分の中でとらえ方が変わりつつある。義務教育ではいい事のように感じていたが、別の著書で学んだことも含めて考えると、課題や懸念点が多かったことを痛感する。またルソーがフランス革命に影響を与えたのではなく実際は革命中にルソーが評価されてきたという話も驚きだった。
今の日本は自民・公明が政権を握り続け、政策の停滞感、統一教会との癒着など民主主義という観点で問題が多い。どのように日本の民主主義が進化し理想の国に近づくのか、はたまた退化し絶望が深まるだけなのか楽しみにしたい。