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コロナショックに立ち向かうブランド卸の展示会戦略

はじめに

 ASSEMBLE Inc.代表の志村と申します。弊社では「THE LIST」という卸向けセールスツールの開発・運営をしています。主にファッションブランド・デザイナーのために全国セレクトショップのデータベースを収集リスト化し、新規卸営業のサポートをさせていただいています。

 これまでの経験と業界関係者の方々の繋がりを元に卸ビジネスの先行きが見えない企業やデザイナーさんに対して、少しでもお役に立てる情報を発信したいと考え、本記事を執筆した次第です。

3月・4月に開催したブランドの展示会状況

 新型コロナウイルス(以下コロナ)の影響で、3月、4月に2020年秋冬展示会を開催・予定されていたブランドの状況が今までと一変します。

 4月7日、東京での緊急事態宣言を受け、4月に予定していた展示会を中止もしくは延期の決断をせざるを得ない状況に。昨今、新規バイヤーの方も飛び込みでの来場が多いため、万が一を考慮し延期・中止のお知らせDMを出し直さないといけない、そんな状況でした。

 3月の展示会に来場されてコレクションをしっかり見られたバイヤーさんもコロナ悪化の状況を鑑みて(既存・新規ブランドのオーダー含め)一旦、様子見となるケースも多かったようです。

3月・4月小売店の状況

 こちらは連日のニュースで周知の通りですが、大手百貨店は特に打撃を受けてます。

 知り合いの現役ブランド営業担当者からの情報で、地方のセレクトショップは3月、店売り・EC共に堅調なところが多かったようです。理由は春物需要と「顧客の購買」によるものが大きいそうです。(もちろん、これから全国的に始まった緊急事態宣言により状況は変わる可能性があります。)顧客力のあるセレクトショップはコロナ禍の中でも売り上げを保っているという事実。こちらはブランドに置き換え、改めて別テーマで執筆いたします。

コロナ禍におけるブランド卸の展示会戦略について

 本題に入ります。

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                                                                   Credit : Ada Yokota

 ※以下記載されている内容はあくまで個人的な卸展示会の提案と対策です。「戦略」と謳っていますが「戦術」のほうが正しいかもしれません。今後状況が変わり誤った情報が含まれている可能性があること、後日加筆修正することがありますこと、ご理解いただければと思います。

 2021年春夏コレクション展示会開催時期

 世界的に通常であれば毎年6月からスタートする2021年春夏コレクションの展示会。コロナ禍において、各社どのように新作コレクションをバイヤーに提案すべきか試行錯誤していることと思います。伊メンズ見本市「piiti uomo(ピッティ・ウオモ)」が9月上旬に縮小開催することを発表しました。(注* 2020年6月開催中止を発表しました)

 世界的なコロナの状況次第で動き方も変わってくるため、海外展示会に参加されるブランドは海外展の動向さえも加味しなければなりません。展示会開催時期をいつに設定するべきなのか、非常に難しい問題です。

 これまで行っていたような展示会形式は向こう1年〜はできない可能性があり、バイヤーの来場率も以前より少なくなることが予想されます。また、展示会をデジタルやオンラインで接客するということは、遠隔による対応で今までよりも時間がかかるようになります。

 工場への発注は、量産納期に影響がないよう例年と変わらないタイミングを目指すため通常よりも早めに展示会を開催し「より受注期間を長く設定するようになる」ことも考えられます。1ヶ月くらいのオーダーリミットを設けるブランドが増えてもおかしくありません。

  雑貨系の展示会は東京オリンピック開催(来年に延期が発表されました)の影響を受け、毎年9月初旬の開催だったギフトショーなどは1ヶ月遅れの10月初旬の開催となっています。他の雑貨系合同展もギフトショーに合わせオリンピックが延期となっても今のところ会期に変更はないようです。  

(2021 SS展示会開催期予測)*コロナ状況次第で変更の可能性あり
・メンズデザイナーズブランド:7月〜8月
・ウィメンズデザイナーズブランド:8月〜9月
・国内アパレルブランド:9月〜10月前後
・国内雑貨ブランド:10月合同展示会、前後に自社展示会

 弊社HPに年内の合同展示会スケジュールをまとめましたので併せてご参考ください。

 https://the-list.jp/exhibitions/

 バイヤーの来場が難しいことを前提として考えますと、商品ラインシートや静止画だけでなく動画を活用した展示会は避けられません。実際どのように展示会を運用していくのか考えていきます。

新たな展示会の運用方法

 
 バイヤーが来場できない展示会を想定した対策を4つのカテゴリーに分け、「メリット:デメリット」を考察してみました。

1)動画による展示会対策

①ZOOM またはLINE ビデオ通話で商品を写しながらの接客

 WWD JAPAN でも先日掲載されていましたが、LDHアパレルの「FULL BK」ではZOOMを利用しての接客を早速始められていました。今号は業界内外の一助となることを目的とし、電子版をウェブで無料公開してくださってますので、まだ読まれていない方は是非ご一読ください。

 動画による接客は自社ショールームがある方はいつでも対応可能で良い手です。ただ、自社またはPR会社のショールームが利用できないブランドは、短期間、展示会スペースを借り撮影することになりますので少しハードルが高くなるかもしれません。

【メリット】
・その場でデザイナーや営業に質問ができる
・動画で商品の雰囲気や詳細を見ることができる
・ラインシート見ながら同時チェックが可能
・商品説明の配信時間を決めてバイヤーに一斉に紹介することができる

【デメリット】
・店頭に立つバイヤーの場合、急な来店があり集中できない
・お店の接客中は対応できない
・配信終了後も個別での質問が多めになると予想される
・デザイナー本人がその場ですぐに対応できるならスムーズだが、後日営業担当者が対応する場合、バイヤー→営業→デザイナー→営業→バイヤーという流れになり手間が増える可能性がある

②You Tube など動画ツールに鍵をかけて活用する

 これまでYou Tubeなどの動画ツールを使って、バイヤー向けに商品紹介をしているブランドは非常に少なかったと思います。今後ひとつのツールとなることは間違いなさそうです。

 最大のメリットは限定公開にして登録不要でログインも必要なくリンク先に飛べることでしょう。設定や編集などのスキルがある程度必要になりますが、使いこなせれば今後有益なツールとなりそうです。

【メリット】
・いつでも時間があるときに閲覧できる
・鍵をかけてURL、パスワードを知っているバイヤーだけが閲覧できる
・商品ラインシート・スワッチにURLが貼れる
・静止画を見て、動画を見るという一連の流れが作れる

【デメリット】
・設定に時間がかかる
・設定や動画編集のスキルがある程度必要
・ブランド⇄バイヤー双方の運用の仕組み作りも必要
・一部課金がある

③instagramでバイヤー用アカウントを作成する

 現時点ではこちらのInstagramを活用しての動画配信が全ブランドにとって手軽で馴染み深いのではないでしょうか。実店舗を持っているブランドもECだけの展開されているブランドも「IGTV」アプリで配信して、自社商品を売られています。

 メインのブランドアカウントとは別にバイヤー用アカウントを作成し、非公開設定にする。そのアカウントで商品説明の動画を配信することでフォロー承認されているバイヤー・関係者だけが閲覧することが可能になります。

 シーズン毎のバイヤー用アカウントを作成し、いつでも商品画像・動画を閲覧できるアーカイブとして利用するのもバイヤーにとって便利かもしれません。PR会社でもスタイリスト関係者専用にアカウント作成し運用をスタートするなど、工夫をされています。

【メリット】
・手軽、お金がかからない
・ブランド側で見てもらいたい関係者だけが閲覧できる
・縦長の動画を投稿できる
・最長60分の動画を投稿できる

【デメリット】

・バイヤーにフォローしてもらう必要がある
・既存バイヤー向けであり、新規バイヤーは心理的ハードルがある可能性
・柔軟に動画編集はできない
・補足情報としての活用となる

2)オンラインオーダーシステムを導入・活用する

 ファッション向けB to Bオンラインオーダーシステムは国内では5年ほど前から市場に登場しました。現在国内で最も先行しているのが「TERMINAL ORDER」です。

 約370以上のブランドが登録。約1万4千人のバイヤーが登録・利用しています。卸業務の効率化や基幹システムへの連携、海外展示会でのオーダー管理、展示会場に来場できないバイヤーもオンラインでの対応が可能。サポートが充実しているので展示会前でも対応できるそうです。

  また新しいオンラインオーダーサービスも国内に進出、参入してきました。伊藤忠商事が手掛けるアメリカ発プラットフォームの「JOOR」。新興サービスの「EXIV」などです。こちらもWWD JAPAN で紹介されています。

デジタル化を進める新興サービス(WWD JAPAN より引用)

その他、国内オンラインオーダーサービスも記載しておきます。


 上記オンラインオーダーサービスは、他社の活用方法や、これまでの知見を共有してもらえるなど新しい情報が入ってくることが大きなメリットです。既に各社準備されているだろう「動画機能」のアップデートも早々に期待されるところです。それぞれ提供サービスと諸条件が違いますので、自社ブランドに適合するのか、まずは問い合わせを検討されてもいいでしょう。

【メリット】
・オンラインオーダーの知見の共有とサポートがある
・日々の卸業務効率化も可能、基幹システムとの連動
・バイヤーに対し期中で在庫販売、提案も可能
・動画機能のアップデートで一元管理できる提案プラットフォームになる

【デメリット】
・コストがかかるため、ある程度の投資が必要
・扱う商材によりサービスと適合しないケースがある(OEM等)
・FAXオーダーが主流のブランドは、バイヤーに利用してもらうまでのハードルがある

3)サンプルリレーをする

 完全に造語であくまで個人的な提案です。新作サンプルを展示会後または展示会ができない場合に、来場できなかった取引先のショップへブランド側に戻さず順番に送っていく方法です。

 例えば、来場できない既存先が10件あるとします。1件ずつおよそ1日で移動させ(約10日間、2日の場合は20日間)、スケジュール通りに他店既存ショップへ発送も協力してもらいます。営業またはデザイナーはサンプルが届いているか、毎日連絡を入れます。その際に商品説明をしても良いでしょう。

 元払い伝票を予め同封し、生地スワッチもバイヤー用に準備しておきます。サンプルの数により段ボール数も変動し、送料の負担は大きくなるケースもありますが、展示会にかかる諸経費や会場費用などを転換すると思えば、許容できる範囲ではないでしょうか。

 サンプル伝票は荷受け時・発送時どちらもすべてチェックしてから発送を徹底してもらいます。関係値があるならLINEで「届きました、発送しました、送り状NO.です」の簡易なやり取りで対応できます。

 ブランド側では「必ずオーダーしてほしいお薦め商品」「オーダーが入らないとドロップしてしまう商品」の共有。展示会後であれば「好評だったアイテム」をわかりやすく記載、サンプルに何か目立つものを取り付けるなどの工夫をします。

 バイヤー側には「気になった売れそうなアイテム」をブランドが予め用意した商品チェックシートにチェックを入れてもらい回覧する。バイヤー間による反応やコメントの共有です。賛否両論ありそうですが、他店のショップバイヤーの参考になるかもしれません。google formを利用し商品アンケートを取るのもひとつの方法です。

 サンプルリレーは取引先バイヤーの協力なしには実現できませんが、このような状況下、協力していただける可能性は高いのではと思っています。

CASE:1> 
・展示会1〜2週間(自社ショールーム・展示会)
・サンプルリレー1〜2週間(ショップ)

<CASE:2> 
・展示会なし

・サンプルリレー1ヶ月(ショップ)

【メリット】
・バイヤーは来場することなくショップでゆっくりサンプルを吟味できる
・普段出張に出れないスタッフと一緒に商品を検討できる
・試着しやすい、不明点はすぐに電話で確認できる
・ブランド担当者とショップでビデオ通話をすることも可能

【デメリット】
・貸し出しのスタートから終わりまで時間がかかる
・実際に展示会で接客するよりも、オーダーの減少は想定しないといけない
・新規営業には向かない(関係値がない先にサンプルを送るのは憚れる)
・サンプルを紛失するリスク
・サンプル移動がスケジュール通りいかない場合がある

  今では一般的となった取引先ショップでのサンプル試着・受注会という形式も、自粛時においては推奨できないため別の形を取る必要がありそうです。

 ショップ独自の顧客参加型のWEBページ作成であったり、SNSを活用した紹介、メルマガでのお知らせ等。ブランド側の承認は必要となりますが、ショップ顧客参加型の新しい提案も今後求められるような気がします。

4)インスタグラムで個人オーダーを取る

 弊社の取引先でお世話になっている「PASCAL MARIE DESMARAIS」さんの事例をご紹介します。

 デザイナーのマリエさんはご自身のインスタグラムで展示会中に動画やストーリーズを用いて個人オーダーの受注をされています。その受注方法は先述しました「TERMINAL ORDER」の個人オーダーシステムです。

 インスタグラムのプロフィール部分に個人オーダーに入れるリンクを記載し一定期間公開されていました(現在は非公開)。こちらです→ Instagram

 展示会開催と同時に期間を設けて、Instagramのストーリーで宣伝し、関係者や一般の方の個人オーダーを取る方法です。もちろんフォロワー数が多いからこそ為せる技でもあるのですが、一定数のフォロワーとファンがいるのであれば有効な方法です。QRコードをHPやInstagramに載せて、受注サイトにアクセスしてもらうことが可能です。展示会に来場できない方、地方都市に住んでる方などにオーダーを検討してもらいときはフォロワー数に関係なく非常に便利なツールとなりえます。

 もし上記のようなシステムが導入できない場合は、BASESTORESなどのプラットフォームを応用する、自社ECにその仕組みや個人オーダーのカートを専用に設ける、など工夫することで対応可能かと思います。

 まとめますと・・・

・ZOOM(LINE)+オンラインオーダーシステムを活用する
・Instagramの機能をフル活用+個人オーダーをWEBで告知・受注する
・動画ツール+ZOOM(LINE)+サンプルサーキットを試みる 等。

 様々な対策を組み合わせることで自社ブランドの提案の幅が拡がっていくことでしょう。

行動することから


 自社ブランドにとって最前の方法とは何か?まずはひとつでもできることから準備する、試してみる、取引先バイヤーに相談してみる。次回展示会まで、まだ時間はあります。ファッション業界もこれまでに経験したことがない状況下ではありますが、行動することで将来に繋がるはずです。

 WWD JAPANの取材でエストネーションウィメンズ・ディレクターの方も次のように話されています。

 今後の買い付けについては、「サンプルを見て、触れるのがベストだが、実物を見なくても可能なことと、見なければ不可能なことがより選別されていくはず。もっとシンプルにすてきな提案ができるよう、ファッション業界特有のサイクルを見直す機会にしたい」と見据えている。

 これから小売側の状況が悪くなれば、上記の対策も成果が出ない可能性がありますしブランドの方向性やポリシーによってはできないことがあるのもわかります。けれども、ブランド・小売店双方でアイディアを募り、これまでの概念を覆すような新しい試みで共存できるよう、今まで以上に力を合わせ乗り越えていくことが今強く求められている時だとも感じます。 

おわりに

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。この困難を乗り越えられるよう弊社も更なる提案とサポートに邁進していきます。微力ながら本noteが関係者の皆さんと、ブランド卸をされている方々にとって少しでもお役に立てる情報があり、何かの行動のきっかけとなれば幸いです。

※感想やご意見、みなさまからの展示会アイデアなどありましたら、是非ご連絡ください。共有できる内容はこちらで加筆させていただきます。

ご質問や弊社サービスにご興味ある方は

こちら

までお問い合わせくださいませ。
さらに有益な情報をお知らせできるかと思います。

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 国や自治体による新型コロナウィルス支援策を一部掲載しました。

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 世界中でコロナが猛威を振るっているこの様な状況の中、医療機関の最前線や物流網を維持している方々、その他私たちの生活を支えて、今この時も働いていられる皆様に心より感謝いたします。どうかご自身の健康にもご留意され、無事をお祈りいたします。また現在、闘病されている方々の一日も早い回復を心からお祈り申し上げます。


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