#4 - Kate Meissner "Chromasome" (1969 Gallery)
1969ギャラリーは、NYのトライベッカにあるギャラリーで、ちょくちょく見に行くのだが、自分的に好きな作品が展示してあることが多い。
もちろんギャラリーのインスタグラムもフォローしているので、フィードに気になる作品が投稿されているのを見たら、見に行くようにしている。今回は、そのようにケイト・マイスナーというアーティストを知った。
ギャラリーのインスタグラムで、ミステリアスな雰囲気の人物画のような絵画が投稿されていた。目を引く作品で、ギャラリーに直接に見に行ってみたいと思った。
”女性の体にフォーカスした具象画”、”どこかミステリアスな雰囲気で独特な色づかい”というその作品の第一印象から、「このギャラリーは、流行りの画風を売り出しているだけで実際の作品はまあまあなんじゃないか?」という疑いがあった。実際は。なぜなら、ここ数年、女性をミステリアスに描く具象画というのが大手のギャラリーで多く取り扱われていて、そういった作品の多くを私は流行りものとして見ていたからだ。(実際私もそういう作品は好きなのだが、あまりにもたくさんのギャラリーがそういう画風のものを売り出しているので、少し嫌気が差していた。)
奇しくも、タイミングよくこの展示のオープニングに行くことができた。
作品は、素晴らしいと思った。構図、配色、それぞれの質感の描写、キャンバスの縁の綺麗さ、職人技的な技術。
(*写真は私が現地で撮ったものだが、オープニング中で人を避けながら撮ったので、真っ直ぐ撮れていないものが多い。作品の写真をもっとよく見られるリンクをこのエッセイの最後に貼っておく。)
胴体に、異質な手足のパーツが付く女性の体。頭はなく、体としてのみ描かれていて個の要素は全く排除している。
色使いは、ナイトクラブにいるような、薄暗くもネオンの光に照らされていような感じ。人工的な光が当たり、浮き彫りになるボディ・パーツの形。
義肢的な要素とエロティックな要素が混ざり合い、なんとも言えない不安感を呼び起こす。
下の紫の作品は他の作品にあるような”義肢的”な要素は見られないが、独特の構図と配色、怪しさは共通している。
日本人の私が見るとお風呂の場面のようにも見えてしまう、と考えたが、赤いカーテンはもしかしたらシャワーカーテンなのかもしれない。そうすると、これはシャワールームなのかも。紫と赤という配色のせいでそんな日常の場面のような感じがしなかった。
オープニング会場には、ケイト本人がいた。すらっとしていて美しい人だった。ナタリー・ポートマンに似ていた。衝撃だったのは、彼女の腕、肘から下が明らかに短く、変形していたこと。両手とも、指は5本も無いようだった。肘に小さい指が数本くっ付いているような感じ。この両手を駆使して画家として活動していることがまず信じられなかった。
そして彼女がなぜこのようなテーマで作品を描いているのか合点がいった。これはただのファンタジーではなく、彼女のリアリティーなのだ。彼女が彼女の身体と向き合ってきて生まれたリアルな作品なのだと感じた。美しい彼女と、その彼女が持つユニークな身体的特徴に向けられる視線も反映されているのだろうか、と想像してしまう。
展示には紙に描かれた習作もあった。ケイトの制作工程は、スケッチと習作を重ねた後、本番キャンバスに描くらしい。展示タイトルの"Chromasome"は造語で、chromosome(染色体)とchroma(色)をかけた言葉だと思う。人の身体を形づくる染色体、彼女の身体、また彼女の絵画の色づかい。
こちらはスケッチ。構図と陰影の付け方をまずスケッチでプランニングしていくのだろうか。
この展示はケイトにとって初めての1969ギャラリーでの個展だった。9月のアートフェアに合わせて行われ、通称”アーモリー”と呼ばれるNYでのアートフェア(The Armory Show)でも1969ギャラリーからは彼女の作品のみで構成されていた。ギャラリー一押しの作家という扱いだった。
彼女のバイオを読むと、1995年生まれ(私の一個上!若い!)でLAを拠点に活動しているそう。イェール大学でpainting & print makingでMFAをとっているエリート。ギャラリーが力を入れて売り出す理由もわかる気がする。
彼女がこれから作っていく作品を見るのが楽しみ。
今回の展示作品の一覧はこちらから見られます
ギャラリーのウェブサイトはこちら
ニューヨークで学びアーティストとして活動するための資金とさせて頂きます。