スティーブンホールの製作過程と建築形態

今回は、スティーブンホールの建築を製作していく過程とそこから生まれる建築形態について接続させていく。

スティーブンホールが建築の製作する初期段階で水彩画を用いることは、よく知られている。これは、スティーブンホールが、建築物の原初的な雰囲気(光・風・空間の質)などを捉えて、それを水彩画を用いて表しているからだと言われている。

彼の用いる水彩画は、ハッキリとしない輪郭、多彩な色、絵の具の持つ繊細なグラデーション、そんな柔らかい表現に適している。ホールは、この特徴をうまく利用することで建築物の雰囲気を一つの絵にしているのだ。彼のスケッチを見ると、一つの絵の中に壁の色彩や光の濃淡が現れているし、階段や壁のスケール感まで表現されている。その積み重ねが、ホールの建築物を基本となり、事務所の所員が具体的な形にしていく。

建築物は、空間という抽象的な概念から、形態や物質など、具体的な対象へと変換されることで、完成されていくため、ホールの用いている製作過程は、至極自然な成り立ちといえよう。

そして、この水彩画を用いた製作過程は、彼の建築形態へと翻訳される。

彼の建築物は、柔らかな輪郭をもち、その中に落ちる光によって、空間だけが浮かび上がる。そして、彼の視点によって描かれた水彩画により、場面ごとに散りばめられたシークエンスがダイナミズムと重層性を作り出している。こうして、ホールの建築物は、抽象的で非物質的な建築物となる。

彼は、水彩画を用いて建築物から物質性を剥ぎ取り、抽象さだけを残し、純粋な形態だけが彼の建築物を構成するように見える。

彼は、建築物の特性とそれを作り出すための方法をクレヴァーに導き出していながら、アーティスティックに建築物を組み立てる。

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