マガジン

最近の記事

ご無沙汰しております

今まで投稿をやめておりましたが、今後少し運営していこうと思っています。今まで通り映画の話もしますが、少し幅を広げて話ができれば幸いです。

    • 『花様年華』の画面の美しさ

      今回は、2000年香港で公開された『花様年華』について考察する。本作は、ウォン・カーウェイ監督によって制作された作品であり、同じ日に同じ共同住宅へ引っ越し、隣人となった二組の夫婦の間で展開される、隣人以上不倫未満の曖昧な関係を見事に描き出している。 作品の中で展開されるストーチーもさることながら、本作の一番の特徴は、ウォン氏が各ショットの画面内で作り出している色味のコンポジションにあるだろう。ここでは、彼の作り出す画面の美しさの構造と、それらがストーリー演出に与えた影響につ

      • 『オクトパスの神秘 海の賢者は語る』が見せた愛の仕組みと生態系

        今回は、『オクトパスの神秘 海の賢者は語る』という映画を見た上で、生態系の中で機能する愛というシステムについて考察してみたいと思う。 この作品は、一匹のタコを追い続けることで、一般的に警戒心が強いと言われるタコと特別な関係を気づいていった男のドキュメンタリー映画である。 男は、毎日タコと接触することにより、彼女の警戒心が解けていき、互いに触れ合う関係となっていく。しかし、自然の中で生きる彼女は、捕食者であり被捕食者であり、生態系の中で翻弄されながら自身の生涯を全うする。そ

        • アメリカンサイコ〜記号化による過剰への傾倒〜

          2021/04/03 今回は、2001年に製作された『アメリカンサイコ』について考察していく。 『アメリカンサイコ』は、ウォール街でエリートとして働く主人公パトリック・ベイトマンが、いい女を抱き、高級レストランで食事をすることで、自身の優位性を誇示しながらも、裏では、殺人を行うことで、自身の猟奇的欲求を満たしていく、サイコ映画である。 はじめに、主人公のパトリック・ベイトマンは、 ・美女と周囲が認識している女を抱く ・有名レストランを予約 ・名刺バトル ・音楽の

        マガジン

        • 映画評論
          2本
        • 沖縄の建築における特徴
          1本

        記事

          『天気の子』から見るアニメの虚構性

          皆さん、年末年始は、ゆっくりと過ごせましたでしょうか。 私は、久々に実家でダラダラと放送されるテレビを見ながら、何もしないお正月を過ごしていました。日本中がコロナの影響によって、季節のイベントも大人数で集まることもできない時期が続いていますが、それはそれで楽しんでいます。 この記事では、そんな家で引きこもっていたお正月に、たまたまつけたテレビで放送されていた新海誠監督作品の『天気の子』について考察していきたいと思います。 私は、恥ずかしながら、今まで一度も『天気の子』を

          『天気の子』から見るアニメの虚構性

          「貯水タンク」#1沖縄の建築における特徴

          この「沖縄の建築における特徴」では、沖縄の現代建築における特徴から、沖縄の建築設計と沖縄の社会的、文化的、地理的特性について見ていきたい。 今回は、記念すべき第1回目であり、今後の記事の方向性を明確にする為に、沖縄の現代建築の中でもすぐに見て分かりやすい、「貯水タンク」を軸に話をしていこうと思う。また、ここで書かれる記事は、沖縄県外の人にも伝わりやすいように、なるべく具体的な説明をする予定なので、沖縄県内の人にとって読み応えのない文章となるかもしれない。しかし、沖縄の建築に

          「貯水タンク」#1沖縄の建築における特徴

          映像研には手を出すな!/1話/私の考察

          今期からNHKで放送が開始された、アニメ『映像研には手を出すな!』 本作品は、大童澄瞳氏のマンガ『映像研には手を出すな!』を元にして、『マインド・ゲーム』や『四畳半神話大全』などの作品を手がけた 湯浅政明監督 によって監修されたアニメである。 アニメの方は、NHK総合テレビで深夜24:10 〜 放送されているのでそちらの方を見て頂きたい。 今回私が、『映像研には手を出すな!』(以後 映像研)の1話を見て、このアニメの新しさや感想について、一人の視聴者として考察していく。

          映像研には手を出すな!/1話/私の考察

          ペンギン・ハイウェイと仮想

          最近、ペンギン・ハイウェイという映画を見た。 映画では、「海」と呼ばれる空間の切れ目が非現実を作り出し、「ペンギン」を引き連れたお姉さんが、「海」に立ち向かう。 「海」「ペンギン」は、脈絡もなく突然日常へ現れてきて、徐々に日常を壊し、そして、気づけばいなくなっていた。「ペンギン」は、空き地にひょっこりと出てくる。この「ペンギン」によって、町の人々は、いつもとは違う非日常が始まったことを知る。 この「ペンギン」こそが、私の考える仮想に最も近い存在といえる。 それは、仮想

          ペンギン・ハイウェイと仮想

          スティーブンホールの製作過程と建築形態

          今回は、スティーブンホールの建築を製作していく過程とそこから生まれる建築形態について接続させていく。 スティーブンホールが建築の製作する初期段階で水彩画を用いることは、よく知られている。これは、スティーブンホールが、建築物の原初的な雰囲気(光・風・空間の質)などを捉えて、それを水彩画を用いて表しているからだと言われている。 彼の用いる水彩画は、ハッキリとしない輪郭、多彩な色、絵の具の持つ繊細なグラデーション、そんな柔らかい表現に適している。ホールは、この特徴をうまく利用す

          スティーブンホールの製作過程と建築形態

          『サマーウォーズ』と公共性

          2019年9月24日 火曜日 この日、私は午後から自宅にいた。そのあとゲオへ行き、DVDを借りた。そして、途中でコンビニに寄り、彼女の家に行った。冷蔵庫からビールを取り、ソファへ移動し、テーブルの上に置いたビールを飲んだ。 映画を見たかった私は、床に置いてあるDVDの入った袋を開け、『サマーウォーズ』を取り出した。DVDデッキへ行き、DVDを挿入して、デッキの上にある再生ボタンを押した。 『サマーウォーズ』は、細田守さんが監督を務めたアニメ映画である。世界中の人々が「OZ

          『サマーウォーズ』と公共性

          『アキラ』が見せた未来

          2019年9月20日 私は、建築コンペで30年後の未来について語ることになった。このコンペでは、5年後でもなく100年後でもない、少し遠い30年後の未来の提示が求められていた。そして、そのコンペ要項の一文に『アキラ』が30年後の未来を描いた作品として挙げられていた。 この作品は、アニメ映画界の名作として有名で、いつか見ようと思っていた。ネット上では、多様な評価がなされているが、どれもハッキリとしない。 今回は、いいタイミングだと捉え、レンタルショップへ行ってすぐに借り

          『アキラ』が見せた未来

          4DXという『マトリックス』

          2019年9月20日金曜日 私は、午前中から友達とショッピングモールを歩いていた。広告で何度も見た最新の大型ショッピングモールだった。ショッピングモール内は、各所にサインが配置され、案内されるように全体を見て回っていた。歩き回っていると、ショッピングモールの一番端に映画館が見えてきた。この映画館には、4DXなど最新の映画設備が入っていた。これも以前から出ていた広告で知っていた。私は、4DXの映画館で『マトリックス』がやっていることを知った。これは映画館内に提示された時刻表を

          4DXという『マトリックス』

          『ショーシャンクの空に』 時間の牢獄

          2019年8月26日 『ショーシャンクの空に』を観た。 映画のあらすじについては、ぜひ本作を見て頂きたい。この作品は、ストーリーが淡々と話が進むため、あらすじを聞いただけではこの映画の面白さや、ストーリーの設計について、イメージしずらい部分が多い。しかし、一度この映画を見てもらえれば、この映画のもつ詩的な体験して、本作が名作と呼ばれる理由がわかるはずだ。 今回は、映画のあらすじよりも、この映画の中で一貫して描かれているテーマとその表現方法について話してみたい。 『ショー

          『ショーシャンクの空に』 時間の牢獄

          ノリと勢いの哲学

          2019年8月17日 今日は、ノリと勢いの哲学について、語っていきます。 私は、話すことが好きですが、感情がないため周りから明るい人間だと思われていません。 逆に私の友達は話すことが好きで、感情表現も豊かで周りから明るい人間だと思われています。 この違いが知りたくて、私はその友達に明るくいられるコツを聞いてみました。 そこでその子の言っていたキーワードが、ノリと勢いという2つです。 このキーワードについて、私なりに考察してみました。今日はその考察をもとに語っていきます。

          ノリと勢いの哲学

          『羅生門』という観客

          2019年8月16日、私は黒澤明監督の『羅生門』を見た。 『羅生門』は、1950年に公開され、大映が製作、配給を担当した作品で、芥川龍之介の短編小説である『藪の中』『羅生門』を脚色して作られた作品である。 話の内容は、羅生門で雨宿りをしていた3人の男が会話を始めるところから始まる。彼らは、一人の男が殺された事件について語り出す。男が殺された経緯を、当事者と目撃者、そして殺された男の目線から語られ、ストーリーが展開していく。各々の視点で事件の経緯を語っていくが、彼らの証言は

          『羅生門』という観客

          建築における仮想

          現在は、情報社会である。 その中で最も発展する概念が、"仮想"という捉え方だろう。 仮想とは、現実を構成する条件の一部をキャンセルした現実として位置づけられる。 そうやって、この世界に手を加えて、理想の世界を構築するのだ。 この仮想の概念には、人工であるという前提条件が発生している。人が世界に手を加えた後の世界を仮想としているからだ。 これを真だとすると、仮想とは、人の作った枠組みの中でしか存在し得ないことになる。 以上が仮想の概念である。 それでは、建築の中

          建築における仮想