私が無職の人に株式投資を勧めない理由
無職の身である自分は、曲がりなりにも株式投資でなんとか生活を維持している。
とは言え、同様の立場の人(無職の人)に株式投資を勧めるかといえばそうではない。むしろ一般的な労働に耐えられる身体があるのならば、まずは株式投資以外の方法で働いてお金を稼ぐことを勧めたい。
何故そのように思うのか。
まず第一に、株式投資には必要最低限のお金が必要である。そして相場の世界は何かと資金が多い人ほど有利に事が進みやすい。無職ならば資金の面で不利を被る可能性がある。
例えば手持ちの資金が10万円の人と1億円の人がいるとする。
銘柄にもよるが、1日で10%上がる株、下がる株というのは数が限られるものの、1%程度の値動きならかなりの数が存在するので、1%という数字を基準にして考えるが、手持ちの資金を全投資した場合、10万円の1%は1千円、1億円なら100万円の利益の可能性があると言える。
もし仮に手持ち資金が10万円で1日の利益として100万円を目指す場合、考えうる選択肢としてはギャンブル的な値動きの激しい銘柄を選び、繰り返し売買しながら手持ちの資金を増やし、その行動を積み重ねていく方法しかないが、残念ながら、確率的に言っても常識的に考えてもほとんど不可能に近い方法と言わざるを得ない。十中八九、過程の中で大損を被り目標に達することなく、気づいたら当初の手持ち資金が減っていることだろう。
つまり、手持ちの資金が多ければ多いほど、比較的安全に着実に資金を増やすことができるし、資金が多いからこそ選択肢も増える。
率直に言って、手持ち資金が数十万円程度なら株式投資をするよりも日雇い労働で稼いだほうが効率的だし、お金が減らない点で心理的にも良い。
第二に、株式投資で毎日稼げるとは限らず、逆に損を出す可能性もあるため、心身に大きく影響を及ぼすという懸念がある。
ビギナーズ・ラックという言葉があるように、特に今年の上半期は相場の地合いが良く、投資した銘柄が予想以上に値上がりし、大きな利益を得た投資初心者も少なくないと思うが、下半期に入り、上半期の強気な相場とはうって変わり、日経平均株価の大きな下落がニュースに取り上げられるような軟調な相場が続いている中、上半期に良い思いを経験した投資初心者の人たちは今どのような気持ちで相場を見ているのだろうか。
タラレバであの時売っておけば良かった、買わなければ良かったと後悔している人もいれば、日々減り続ける資産を目の前に我慢の限界を迎え持ち株を処分している人もいるかもしれない。
よほど熟練した投資家以外は、軟調な相場の時、保有株が下落している時ほど、動揺と不安が押し寄せてくるものである。それは自分も例外ではない。
こうした時、定期的に入ってくる給料があることで動揺や不安を軽減できる場合もあるが、無職の身ならそういったものが無い為、余計に心を不安定にさせてしまう恐れがある。
株式投資は生活費とは別の資金で、万が一失ってもいい資金で行うことをしばしばアドバイスとして言われるが、相場が下落している時こそ、より意識させられる言葉に感じる。
無職は会社員と違って時間に縛られないから株式投資と相性が良いと言われることもあるが、それは"無職"という属性がそうであって、無職の立場にいるその人自身と相性が良いとは限らない。
少なくとも、無職に至った理由が精神疾患なら、株式投資は症状を悪化させる要因になる恐れがあるので、避けるべき対象になるだろう。
無職という大きすぎる主語ゆえ、もちろん例外に該当する無職の人たちもいることは理解している。
前職が経営者で会社を売却し資産が数十億ある人や、定年退職を迎え老後の生活費が十分確保できている人、言い換えればお金を稼ぐ必要性が低く、生活基盤が安定している無職の人たちは紛れもなく例外である。
しかし、そうではない若年無業者(ニート)や自分のような無職は立場が異なる。冒頭にも言ったが、株式投資以外の方法で働いてお金を稼ぐことを勧めるし、健康的な身体を持っているなら尚更だ。
それでもどうしても株式投資がしたいというならば、一発逆転を狙う姿勢は捨てて、長期的な時間軸を持って、あくまでも生活費以外の資金で貯金のようにコツコツ積み立てを意識すると、将来、気付いた時には株式投資が味方になってくれるかもしれない。