『あなたの番です』のヒットの背景にあるマーケティング
秋元康。尊敬してやまない人の一人です。
AKBのような会いにいけるアイドル市場の開拓、Showroomというプラットフォームを活用したファン醸成、ドラマの脚本家など多岐にわたって活躍しています。
売れそうな子を見抜いたり、歌詞を書いたり、企画したりする「クリエイティブ/アーティスティックな才能」
それを新たなビジネスモデルで世の中に届ける「ビジネスの才能」
一見相反するような2つの才能を持ち合わせている稀有なビジネスマンです。
そんな彼が企画/脚本を手がけた「あなたの番です」(以下;あな番)をビジネスの観点から考察していきます!
あな番がすごい理由
前田裕二さん曰く、「現代人はただ完成品を受け取るのではなく完成品が出来上がるまでのプロセスを消費したい。」
この心理を秋元康は見事に突いてるんですね。
今回でいうと視聴者は「田中圭がズバズバと事件を解決していくのが見たい」のではなくて「田中圭と同じ視点で事件を共に解決してきたい」のですね。わかります。
見てる人たちは毎週「誰が犯人なんやろう」って家族や恋人、友人、はたまたSNS上の誰かと共有したくなります。ハマりまくった人はまとめサイトをつくったり、考察記事を書いたり、、、。こうして私たち自身が主体的に「体験」することで強く記憶にも残るし、他の人にも伝染します。なんせ口コミの威力は企業自身が発信する広告と比べると、今や絶大です。
こうしてお金をかけずとも日本中に知れ渡らせることができたのです。
当たり前のことではありますが、これはコンテンツそのものが人に共有したくなるほど良いものである必要があります。その点でもあな番のキャストは優れてましたね。絶好調の田中圭くん、これから売れそうな浅香航大くん(神谷刑事)、超怖い演技をする奈緒さんなどなど!
ちなみに僕は毎週ノースリーブを着てくるななせまるに癒されてました。
SNSとサブスクの用途別の使い方がめっちゃ上手い!!
毎週Huluで配信されているスピンオフは少しは本編に関わるがかなりコミカルな内容に仕立てあげられてます。ちょっとしょうもないくらい、(笑)
これはドラマだけでは描けなかった登場人物の裏側のストーリーを見せることで、(収益はもちろんですが)よりドラマに愛着を持ってもらうことが目的です。
ドラマの公式アカウントも同じような効果が考えられます。インスタではオフショットやキャストのコメント動画が上がってますが、思わずにやけてしまうような投稿がたくさん乗せられていてずっと見ていられます。
ちなみに拡散力が高いツイッターでは関連記事の紹介や放送日時の広報をするなど、上手に使い分けているのも流石ですね。
「続きはHuluで」を叩く人たち
「あなたの番です」は私が見た限りテレビドラマだけでも十分に楽しめる内容でした。というか、本当に素晴らしかった。
最後の終わり方は、個人的には好きだったんですが、第2弾や映画化を匂わせるような終わり方でモヤモヤした方もいるのではなしょうか。
真犯人の過去のエピソードをHuluで配信しますと最後の告知があると、一部のツイッター民は「結局Huluかよ」と批判してました。トレンドにも「Hulu」が入ってたくらいです、、
ずばり民度が低い!!
一応完結しているドラマのスピンオフが有料なのがそんなに理解できないですかね、、
だって見たいなら金を払えばいいんですよ。
今の日本人ってほんまにフリーライダー(コンテンツをタダで楽しもうとする人たち)が多いと思います。
「Music FM」「漫画村」がその象徴ですが、ことテレビに関しても同じでしょう。
今回Huluに加入した人は
誘引(あな番のスピンオフが見たい)が 費用(Huluの入会金)を上回っただけです。
テレビドラマは慈善事業でもなんでもありません。ビジネスです。
私たち視聴者はテレビという機械の初期投資だけでドラマを見てるわけです。
ではなぜ私たちが無料でドラマを見れるのか。それはスポンサーがcmのために広告費を支払っているからです。
あな番はドラマとして異例の2クール連続でやるというだけでかなりの費用がかかっているはずです。その費用をサブスクで回収しようとすることは特段おかしなことではないと思います。また、描きたくても時間の都合上描けないストーリーを正規のコンテンツとして届けるためのプラットフォームとして、いつでも契約(解約)できるサブスクは相性が良いです。
今の時代に沿ったコンテンツ課金の仕方は、「消費者に選択権を与え、前向きに課金してもらう」です。
誰も課金を強要していないし、本当にドラマが好きなら、応援の意味も込めてそれくらい払えばいいのです。
「好きだったのにいきなりビジネス感出してきて残念です」とか言うてる人はちょっと恥ずかしいですね〜!あなたは秋元康のターゲットではなかったということです。
秋元康がサブスクにこだわる理由
秋元康は過去にも同じようなことで批判されました。
「愛してたって、秘密はある。」福士蒼汰くんと川口春奈ちゃんのドラマです。
ここでも最終回後の話ををHuluで配信としていました。
テレビはスマホの登場以降力を弱めてきました。以前強い力がある一方で、何か新しい顧客体験がないテレビは淘汰されていきます。
反対にスマホやタブレットでNetflixのようなサブスクを楽しむ人が爆発的に増加しています。
この2つは一見すると競合に見えますが、そうとも言い切れないと考えています。
Netflixほどの規模になると自社製作のドラマやアニメを主力商品にできますが、その他のサブスクではなかなかそれは難しいのが現状です。一方でテレビ局には人材などの資源が豊富にあり、コンテンツ力は強力です。
リアルタイムで見るテレビの価値は下がれど、サブスクでいつでも見れるテレビのコンテンツの価値は最強なのです。
秋元康はこの流れをいち早くから掴んでいるからこそ、多少の批判があってもこの挑戦を繰り返すのでしょう。
以上!あな番の少し違う観点からの考察でした。
映画化したら見に行こうと思います!!