sense , scent
東京の温度計は既に30℃に到達しようとしているとのこと。こちらは日差しの強さはあるが、温度は20℃前後で湿度も低いため、暑さが極度に苦手な私にとっては大変ありがたい。ただ一方で、空気の乾燥により喉の調子が悪いため、CVSで加湿器を購入した。夏に加湿器を用いるというのも妙な感覚だが、これで喉の調子も戻ることを祈っている。
東京を離れる前に、結構な量の本を購入し(kindleが大半だが一部はやはり紙の本として購入している)、こちらに着いてから少しづつ読み始めているが、その中の1冊に「センスの哲学」という本がある。六本木の文喫にて手に取り、思わず購入した一冊だが、曖昧模糊とした「センス」という感覚に対して言語化した一定の解釈を与えていて面白い。筆者の言葉を借りつつ、乱暴に私の解釈をまとめてしまうと、センスとはリズムの流れであり、さまざまな要素の羅列における統合的な感受であると読み取った。この筆者のセンスに対する解釈は、普段私がぼんやりと感じ取っていたセンスに対するイメージをうまく解釈していると納得のゆくものであった。
たとえば、以前ピエールエルメのエモーションサティーヌを、大学院の講義の一環として食べさせてもらったことがあるが、食感としてはクッキー(サブレ?)のサクサク感、クリームのなめらかさ、ジュレの瑞々しさ、パッションフルーツの種子の粒感といった異なる刺激が、一つのスイーツの中に層をなして構築されている。また、味わいはそれぞれ、パッションフルーツの甘酸っぱさ、マスカルポーネクリームのくどくない甘さ、クッキーのバターの風味など、異なった方向性の味わいがエモーションサティーヌの中に凝縮されている。これらさまざまな要素が強弱を織りなしながらリズムとして流れ、絶妙なバランスを保ちながら統合されているからこそ、「センス」の良いスイーツとして成立しているのであろうと、本を読みながら改めて思い返して感動している。。。
さて、本を読んでいて思い返したことがもう一つ。離日前に麻布台ヒルズの「FUEGUIA 1833」というお店に立ち寄った。ここは、アルゼンチンの香水のブランド店なのだが、面白いのは店内にバーカウンターが設置され、アルゼンチンのワイン(やノンアルコールドリンク)と香りとのマリアージュを楽しめるというあまり類を見ない店舗なのだ。通念的にはワインの香りを純粋に判別する事を考えると、それ以外の香りを合わせるということはNGとも考えられる。しかし、料理や飲料、香り、空間、人、さまざまな要素を合わせて「時間を楽しむ」といった視点に立つと、香りという要素をワインではなくて別のところから導入し、「センスの良い時間」を過ごすための全体としてのバランスの組み合わせを構築してみるというのも、とても面白い試みなのかもしれない。
最後に全く話が飛んでしまうが、香水繋がりで、昨日英語のBBCのドキュメンタリーで香水の原料となるジャスミンの花の収穫における児童労働問題のニュースを見てしまった。香水に限ったことではないが、奢侈品(あるいは時として、一般消費品においても)生産の裏側には複雑な問題が時として隠されているため、単に何の考えもなしに奢侈品を楽しむのもどうかと、そのドキュメンタリーを見て急に現実に引き戻された。。。
"Child labour behind global brands' best-selling perfumes - BBC World Service Documentaries"
https://www.youtube.com/watch?v=3295wEpmajo
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