作文:私の仕事
「私は新卒でコールセンターに就職しました。」
と聞くと、どんな感想を持ちますか?
コールセンターの求人なんかはよく目にしますが、派遣やバイトの印象が強いですよね。
私が就職した会社は、とある大手企業の子会社で、親会社のコールセンター業務を委託されています。そのコールセンターで働く社員として、私は採用されました。
所属している会社は子会社なのですが、働いているのは親会社の内部で、親会社の社員さんたちと一緒にコールセンターを運営しています。常駐型派遣というやつです。
専門的な教育を時間をかけてしてもらい、商品知識を深める勉強会もたくさん実施してもらっています。
お客様の中には、「オペレーターは上の人に言われたことだけ喋っている」と思う方もいらっしゃるようなのですが、私たちは自分で資料を探して読み込み、必要な情報を選んで、時には専門的な言葉を分かりやすく言い換えて案内しています。
何故なら、お客様とお話ししているのは私たちだからです。上の人たちは、お客様の話を直接聞いていません。なのでお客様の気持ちを理解できません。
私たちは、お客様一人一人とお話しして、直接コミュニケーションをとることで、お客様の気持ちを汲み取り、一人一人に心を寄せて応対しているのです。
私がいるコールセンターには、商品の機械的な話についてもよく問い合わせが入ります。たまに「あなたには分からないと思うけど」と前置きして専門用語を並べ、「はいじゃあ答え聞いてきて」「男の人に替わってもいいよ」などと仰られるようなこともあり、やっぱり女性は侮られやすいのだなぁと実感します。
でも私たちは、自分で専門的な資料を読んで理解することができるので、自分の知識と言葉でお客様とお話ししていきます。そうすると、最後にはお客様が「ありがとう、よくわかったよ」などのお言葉をくださることが多いです。
そんな時、ああ、この仕事をやっていてよかったなぁと、満ち足りた気持ちになります。
もちろん、自分の力だけでは解決できないこともあります。そんな時は上司に相談して解決を図ります。それはそれ。
毎日懸命に応対していると、たまに会社を経営しているお客様から「うちの会社で働かない?」とお誘いを受けることがあります。「おたくの社長に、あなたの給料あげてやってってメールしておくわ」なんて言われたこともあります。
どちらも冗句でしょうが、私の仕事を評価してくださったんだということがはっきりわかって、ガッツポーズを取りたくなります。心の中では取っています。冷静な声で「うふふ、ありがとうございます」などと言いながら、顔はニヤニヤしています。次の電話に出る時の気持ちが、とっても軽やかになります。
そんなコールセンターの仕事が、私はとても大好きです。
もちろん、楽しい事ばかりではありません。
クレームで、ひたすら罵倒されることだってあります。
それならまだマシな方で、訳も分からず脅迫めいたことを延々と怒鳴られることもあります。
言葉は人を殺せます。
ひたすら悪意のある言葉を浴びせられると、どんなに慣れても辛いです。
でも、お客様にも事情があって、理由があります。(中にはそんなもの無い人もいらっしゃいますが)
初めて罵倒を浴びた時は、それはそれはショックでした。
私は元々、素直というか何というか、言われたことを額面通りに受け入れてしまう性質です。人生それで傷ついたことも多いです。オペレーターとして受けた罵倒は私個人に対する言葉ではない。そう頭では分かっていても、直接心にダメージを受けていました。
しかし何度も罵倒を経験する内に、「これはお客様の怒りの表現であって、私を傷つけることは本質ではない」と感じられるようになり、今ではその怒りに同調して寄りそうこともできるようになりました。
私は所謂HSPの気質があり、過去に離人症を発症するほど鬱傾向のある人間ですが、コールセンターの仕事によってかなり克服できたと感じています。
お客様のニーズに的確に添えない時も辛いです。
自分の知識不足で急いでいるお客様にすぐ答えを出せないこともあるし、答えがお客様の求めるポイントとずれてしまっていたなんてこともあります。
力不足を実感するけれど、扱っている商品が多すぎて多様すぎて、膨大な情報を網羅することは正直不可能に近く、一件一件の問い合わせを確実に堅実に熟すことで経験を積むしか、成長する方法はありません。
でもコールセンターの仕事は「以前はできなかったことができた」が分かりやすいので、日々の成長を実感しやすくて、そこがまた楽しいのです。
何より、自分の成長がお客様の満足に繋がった瞬間が最高。
新卒で入ったコールセンターを10年目に辞めて数年。
また同じ職場で、今はパートタイムで働いています。
一度離れたからこそ、改めて思います。
私はこの仕事が、大好きです。