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#6 髪を切ったら世界が優しくなった



今月もまだ会社の休業が続いている。

リモートワークのできる業種ではないためお給料は貰ってただただ家に引きこもっている。

こんな時代に珍しいのかもしれないが、わたしは仕事が好きで早く働きたい。
しかしこんなに有難いこともない。

何年分お休みしてるんだろうか…



そんなこんなで伸ばしっぱなしの髪を4ヶ月程切れずにいた。

今年、転職してちょうど1年が経ったのだが、前職を辞めた際に長い髪を切…!る勇気はなくフルにブリーチして金髪にした(その勇気はあんのかよ)

その名残で耳から下は色が抜け切った髪が胸下まで伸び、1年伸びたブリーチせずに茶色に染まった髪とメンテナンスができない間に伸びた4ヶ月分の真っ黒ではない地毛で田舎の芋ヤンキーのようなグラデーションが完成していた。

お風呂の排水溝には毎日小さな貞子が生まれ、毛先は手ぐしすら通らずブチブチと音を立てて切れる。

誰にも会わないから そんな気持ちで放置していたが、会社の人と会う予定ができたため、4ヶ月ぶりに美容室を予約した。



ブチブチ切れていうことを聞かず乾かないのトリプルコンボを削ぎ落としたいです(ニュアンス)

という想いで髪を10センチカットしに行った。

末広なおめでたくてかわいらしいシルエットは似合わない気がしてきて、なんとなく気分を変えたくて、多めにレイヤーを入れてもらった。

カラーも肌の色に合いそうな暖色に染めてもらった。

4ヶ月ぶりに前髪も作った。



ほわぁ


カットしていく過程でだんだんクシが通るようになっていくのを感じて、45ℓの袋いっぱいにゴミ捨てをした日のような気持ちになった。

切ってもらってる段階でも体感があったくらい頭は軽い。自分の脳みその軽さを思い知った。

分厚く重くて動きがないくせに毛先だけ解散〜!イェーイ!と言わんばかりに暴れ回っていたのに、毛先はおしとやかになって顔まわりの髪だけが風が吹いたようにふわふわ踊っている。風は吹いていない。換気で窓は開けてるけどな。


暗いトーンのほうがしっくりくるけど夏になるからイメージは明るいのがいいなあ暑苦しいのは嫌だけど暖色系がいいんですよねなんて矛盾ばかりを口にしたわたしに「んなもんないわボケぇ!」なんて言わずにワガママを叶えてめちゃくちゃ可愛い色に染めてくださった……。

美容師さんしゅごい。


今まではコロナ禍で休業期間があったり、予約のキャンセルが続く時期があったりで歩合給だと厳しかったという話も伺った。
営業を再開してからも換気や消毒を徹底しているのは目に見えてわかる。

マスクをした状態でもカットやカラーをしてもらえることを知っていたためマスクをしたまま入店したが、マスクをした状態で切るということは輪郭に合わせたカットがしづらく、客側も仕上がりに不安を持つという互いのデメリットが生じてしまうのだと思う。

「マスクしたままで大丈夫ですか?」
「ゴムが濡れたり色が付くかもしれないけど大丈夫ですか?」
と丁寧に聞いてくださったが、うつされてしまうかもしれない・うつしてしまうかもしれないという不安な気持ちがあるならマスクはしていたほうがわたしにとっては良いと思って着用したままお願いした。
(カラーでゴムに色が付いてしまうので、耳を出して帰るなら替えのマスクを持ってるとよきですね◎)



心も軽くなってホクホクした気持ちで外に出ると風が心地よかった。

髪が軽いとこんなに風が首筋を撫でていくんだ…


高架下のコーヒーショップの窓に映ったわたしはプチプラのブラウスも久しぶりのフレアスカートも申し訳程度に施したメイクもちゃんと映えていた。


あれ…なんかかわいい。ちゃんとおんなのこだ。


誰もが振り向くような美人じゃないし
お世辞にもスタイルが良いとはいえない
言葉を選ばなければチビ・デブ・ブス

それがコンプレックスすぎて日常で絶対に口には出せない。あまりにコンプレックスだと逆に言えないものだなんて美人は知らないでしょ?

だけどかわいい。(当社比)

これも絶対に口には出さないけれど。




髪が綺麗になったら帰路でヘンテコなスカウトに捕まった。
そういうのは好きじゃないから目を合わせずに「すいません…」と吐いて逃げてしまうが髪が綺麗になっただけで人の目に留まるくらいまで人間レベルが上がったのかと思ったらちょっと嬉しい気もした。

スーパーの店員さんもいつも優しいが、いつもよりも優しく感じた。

マンションの出入り口で鉢合わせた男の子がドアを開けてわたしを先に入れてくれた。


そんなの別に髪のパワーじゃない。あほか。
たまたまやん?

知ってる。



知ってるよ。周りが優しくなったわけじゃない。

周りの人たちが優しい。そう感じる心の余裕を与えてくれただけの話。


神は女の命とか聞いたことあるけど、髪が綺麗な女性が美しいのは自分の髪が美しいという心の余裕があるからなのかなあ。

いやでも顔面()




今日のわたしは最上級に可愛いです(当社比)


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