掘り出し物

ー近場も決して悪くない（2）

ゴールデンウィーク（GW）期間中の近場巡り。掘り出し物は、何と言っても、西武池袋線桜台駅近くのそば屋「松月庵」（東京都練馬区）だ。地元の風景に溶け込んで目立たない佇まいだが、価格は合理的だし、味も好みだ。店員の愛想も良く、居心地が良い。おまけに緊急事態宣言がなければ、酒も飲める。地元を中心に根強いファンがいると言われてもうなづける。

連載『近場も決して悪くない』シリーズ：「（1）ー『安・近・単』のGW」

揺れる心

通いたいそば屋が近くにない悩みが一気に解決した。この店は値段、味、雰囲気いずれも申し分なく、『おとなの週末』『散歩の達人』といった雑誌に掲載された理由が分かる。気のおけない仲間や家族と和気藹々と飲むのに向いている。これまで知らなかったのが悔やまれる。

メニューを眺めると、世辞抜きにどれも美味しそうだ。グルメサイト『食べログ』によると、「上カツ丼」（890円）を推す口コミが多い。そばが売りの店で丼モノを選ぶのにはためらいもある。とはいえ、続々と店を訪れる客の多くが上カツ丼を頼んでいるのを聞き、迷いを断ち切った。

この店の上カツ丼の特徴は、出汁によく浸かった卵とじのカツの上に、さらに生卵が載せてある。黄身を割ると、また別の味わいがあり、一度で二度、カツ丼を楽しめるところが面白い。当初、次回は別のメニューを頼むつもりだったが、すでに心が揺れている。美味いものを前に絶対はない。

男前に一言

後に知ったが、『おとなの週末』に紹介されたメニューは上カツ丼だったようだ。このメニューがそもそも人気なのか、それとも雑誌掲載後に人気メニューになったのか、それは分からない。ただ、そこに我関せずの奥さん。穴子好き全開に「穴子天丼」（1000円）を迷いなく注文。男前に一言：

「だって、そこに穴子があったから」。（続く）

（写真：西武池袋線桜台駅近くのそば屋「松月庵」の上カツ丼。出汁によく浸かった卵とじのカツ丼の上に、さらに生卵が載せてある＝りす撮影）

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