頼もしい味方、もう一つ
ー日本の生食文化を下支え
刺身・寿司好きにとって、どうしても気になる寄生虫「アニサキス」。サンマやサバに寄生したアニサキスを誤って食べると、激しい痛みや吐き気を伴うアニサキス症(アニサキスによる食中毒)を発症する。残念なことに、患者数は増加傾向だ。ただ、ここに来て、特効薬としてラッパのマークでお馴染みの「正露丸」がひときわ注目されているほか、産学が連携して開発したアニサキスを感電させて死なせるシステムが話題になっている。日本の安全・安心な生食文化を支えてくれそうな二本柱。実に頼もしい。
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品質そのまま
水産専門紙「みなと新聞」によると、このシステムを開発したのは、水産加工のジャパンシーフーズ(福岡市南区)と熊本大学産業ナノマテリアル研究所(熊本市中央区)だ。2021年6月に発表。この9月までに大手メディアも相次いで伝えている。
このシステムは、200V、もしくは100Vの電源から得た電気エネルギーをコンデンサーに蓄積。これをナノ(1億分の1)からマイクロ(100万分の1)、ミリ(1000分の1)秒単位で取り出し、そこで得られる瞬間的超巨大電力(パルスパワー)を魚の身に流し、アニサキスを死なせる仕組み。
これまでアニサキスを死なせる方法として加熱、冷凍があったが、解凍品に比べて品質の劣化も少ないという。また実証試験では、すべてのアニサキスを死亡させることができたらしい。実用化に向け、低コスト化・省エネルギー化を進めているそうだ。
みなと新聞によると、今秋から同装置で処理した生食用刺身の出荷を計画しており、まず開発の外部メンバーとして参画した大手量販店向けに出荷を始めるとのことだ。アニサキスによる食中毒を気にせず刺身・寿司を楽しめる日が待ち遠しい。
切なる願い
システム開発をめぐっては、経済産業省の支援を受けながら、18年から3カ年で取り組んだそうだ。関係者の目の付けどころがありがたい。ただ、この仕組みを使うことで、店頭に並ぶ刺身や寿司の値段が跳ね上がるという残念な事態は、どうにか避けてもらいたい。
安心・安全になっても手の届かない値段になっては、あまりに切ない。
(写真〈上から順に〉:『りすの独り言』トップ画像=フリー素材を基にりす作成、わが家は揃って刺身・寿司が好き=奥さん)