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不都合な事実

ー都電ぶらり散歩(4)

泳げば優雅、羽ばたけば雄大ー。荒川自然公園(東京都荒川区)のハクチョウ(白鳥)は、もはや無敵(※)だ。それにしても、奧さんは、いつでもハクチョウに出会える公園をよくぞ見つけたものだ。そもそもハクチョウは渡り鳥。今すぐ見たいと張り切って出かけても、動物園でもない限り、必ず見られるわけではない。「白鳥帰る」という春の季語に使って俳句を詠みたかったという奧さん。さぞかし熱を込めて調べたのだろう。おかげで、夫婦揃ってハクチョウを知る良い機会になった。

連載「都電ぶらり散歩」シリーズ:「(1)寄り道ランチ」「(2)味変ルート」「(3)ハクチョウ無敵

調べまくり

インターネットを通じ、東京都内でハクチョウが見られる場所を検索しても、こちらの要望を十分に満たす回答は得られない。ヒットするサイトは、ハクチョウの飛来地まとめのたぐい。そもそも動物園以外の場所で、ハクチョウをいつでも見られ、しかも東京都内で見るという条件が難しいのだろう。

ハクチョウは10月上旬に日本までやって来て、長ければ翌年の4月下旬までいるそうだ。その後、元いた場所に戻るらしい。奧さんにどうやって見つけたかを尋ねたところ、都電荒川線のサイトで荒川自然公園にいるハクチョウの写真を偶然見つけ、それがきっかけになったらしい。

奧さんに教えてもらった情報のうち、「荒川自然公園のハクチョウは飛んでいかない」という事実は衝撃を受けた一つ。遠くに飛び去ってしまわないよう風切羽かぜきりばねを切り取っているとのこと。この羽は、翼を広げたときに一番外側にあり、鳥が飛ぶときに欠かせない役割を果たすそうだ。

皇居外苑で放鳥飼育されているハクチョウも、同様の外科手術を受けていて短い距離しか飛べないとか。管理上やむをえない処置とはいえ、どこか複雑な気分になる。ただ動物を飼うことは、綺麗事だけでは済まされない現実がつきまとう。それをあらためて思い知る。

知り過ぎた夫婦

多くのサイトによると、日本にやって来るハクチョウは、主にオオハクチョウとコハクチョウ。ともに在来種。荒川自然公園や皇居外苑のハクチョウは、コブハクチョウで外来種。1950年代に観賞・飼育用として輸入され、飼育していた個体が逃げ出すなどし、それが繁殖して増えたという。今ではすっかり住み着いたところもあるとか。コブハクチョウについては近年、一部に食害や在来種への悪影響が報告されている。「白鳥」を季語に素敵な俳句を詠みたい奧さんにとって"不都合な事実"が続々と明るみに。

完成を待つこちらも気が気でない。知り過ぎた夫婦。(続く)

(トップ写真:連載『都電ぶらり散歩(4)』カット=りす作成)

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りす=ハードボイルド
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