塗炭の苦しみ
ー奥さん、救急外来に行く
いつも元気な姿を見ている身内が、必死に痛みに堪えているところを見ると、いたたまれない気持ちになる。7日午後、奥さんが急に原因不明の腹痛を訴え、なかなか収まらないので、急ぎ救急外来を訪れた。普段、多少の痛みは大丈夫と言って我慢してしまうだけに、今回は異例だ。診断の結果、腹痛の一因は極度の便秘らしい。そう言えば、このところ、お通じが悪いと言っていた記憶がある。身内が苦しんでいるのに、何もしてやれない歯がゆさ。それに耐えるのは塗炭の苦しみだ。
無力感
病院で対処してもらった結果、奥さんは痛みからだいぶ解放されたようだ。診療が終わった直後は飲み薬の効果が現れておらず、奥さんは痛みが収まらないことにナーバスになっていたが、やがて薬が効きだし、ピーク時に比べ、具合が幾分良くなってきたようだ。表情もだいぶ和らいでいる。
そんな様子に、奥さんが大病を患って手術を受けた2年前のことを思い出した。手術を終え、病室に運ばれるベッドの上で、「ありがとう」と言いながらも、苦しげな表情を浮かべていた奥さん。そのときも、代わってやることもできない無力さを感じ、いたたまれない気持ちだった。
父親も自分の無力感を味あわせてくれた一人だ。手術後、見舞いに行ったときの痛みに耐える姿は、これまで見たことがないほど弱々しかった。3、4年前のことだ。一方、先日手術した母親の場合は、新型コロナウイルス感染症対策で見舞うことができず、そこへの怒りが強かった。
教訓
奥さんの腹痛の一因になった便秘。この症状を甘く見ることなかれ。放っておくと、生命を危険にさらす事態になりかねないものらしい。予防策について説明してくれた看護師によると、水分の摂取と適度な運動が効果があるようだ。確かに、奥さんはあまり水分を摂りたがらない。
汗をかいて化粧が流れたり、トイレに行く頻度が増えたりするのが嫌だとか。その気持ちも決して分からなくもないが、それを蔑ろにすることで、こちらが塗炭の苦しみを味わうのは、どうか御免被りたい。厚生労働省によると、成人が必要とする水分量は1日当たり2.5リットルという。
奥さんはこれを実践するらしい。今回の腹痛が痛い教訓になったようだ。
(写真:腹痛に苦しむ奥さん=フリー素材などを基にりす作成)