抱腹絶倒の舌戦ふたたび 新作映画にライバル競演
12月に公開予定の映画『大仏廻国』が注目だ。ゴジラやウルトラマンで知られる円谷英二監督の師匠・枝正義郎氏が1934年に製作した映画のリメイク版というところが見逃せない。ただ個人的な見どころは別。2010年前後のUFO(未確認飛行物体)ブームをけん引した韮澤潤一郎たま出版社長と大槻義彦早稲田大学教授(現名誉教授)が競演するところにある。当時、茶の間を沸かせた"両雄"の舌戦が再現されることに期待したい。
相見える両雄
この映画は"怪獣モノ"に代表される日本の特撮映画のイメージを明確に打ち出した最初期の作品。愛知県にある大仏像が突如起き上がって動きだし、名古屋の観光地をめぐる日本初のミニチュア着ぐるみ映画とされている。戦災によってフィルムが失われた。リメイクは歴史遺産の再現ともいえる。
たくさんの人たちから少額を集めるクラウドファンディングを利用しているところも面白い。仲介したマクアケ(Makuake)によると、251人から支援を得て、目標額の100万円を約50万円上回る148万1000円を集めた。映画製作や販促資金の一部に充てられる。特撮ファンの支持が得られたようだ。
ただ個人的には、なんといっても、この作品の魅力はUFO飛来など"超常現象肯定派"の韮澤さんと"否定派"の大槻さんが相見えるところにある。映画のプロモーションなどで当時の抱腹絶倒のトークバトルが見たい。そういえば、二人のバトルは漫才やコントなどよりも面白いと言われていたっけ。
いつもは韮澤さんの情報や意見が完膚なきまで大槻さんに論破されるパターンだが、一度、本当にUFOが飛んできたことがあった。ビートたけしが司会する番組『超常現象マル秘Xファイル』でのこと。ユーチューブにその動画があったので再見し、動揺する大槻さんがもうおかしくておかしくて。
好々爺の競演
先日アップしたコンテンツ「そうだ!UFOの話をしよう」で、70年代のUFOや超能力のブームの火付け役になったテレビプロデューサーの矢追純一氏について紹介した。矢追さんはすでに80歳超だった。韮澤さんはあと数年で75歳を迎え、大槻さんもすでに80歳を超えていた。
映画製作側がプロモーション用に撮影したと見られる二人の対談動画は、かつての喧々諤々と打って変わり、互いを懐かしむようなほっこりする様子だった。「また宇宙人(の話)が出てくるんわけだ。なんでそうなるのよ」という大槻さんの表情がとても柔らかい。
一方、韮崎さん。大槻さんと比べると、年齢が5歳以上若いせいもあってか元気だ。とはいえ、韮澤さんのブログ「ニラサワ研究室」は16年9月30日以降、更新されていない。たま出版のサイトに掲載するコラムも11年1月でストップしたまま。昔と同じというわけにはいかないのだろう。
未知を面白がる
「最近、大丈夫?」ー。家内がいぶかしむ表情で声をかけてきた。このところ、UFOをはじめ、UMA(未確認動物)などに関する動画を頻繁に見ていることに気づき、どうも不安に駆られたようだ。「何のことだかは分からないけど、きっと大丈夫なんじゃないか」と答えると、ジト目を向けられた。
どうも誤解されている。あくまで超常現象系の話題は好きなものの一つであるだけだ。UFOなどの存在を盲目的に信じているわけではない。やはり、見たモノでなければ信じないし、体験したコトでなければ信じない。だから、どちらかと言えば、大槻さんら超常現象否定派の見方に近い。
極端な否定派と一線も画す。人類が知らないことがあってもおかしくないと考えているからだ。人類はこれからも新たな発見をする。だから現時点で解明できないこともたくさんあるはずとも思う。それは未知のものへのロマンということで、家内にはざっくり解釈してもらうとしよう。
西尾維新氏が書いた小説「物語」シリーズに羽川翼というスーパー女子高生が登場する。非常に頭脳明晰で周囲からなんでも知っていると評される。彼女がたびたび使うフレーズが、いま個人的に言いたいことに近い:
「私はなんでもは知らない。知っていることだけを知っている」
このフレーズにある「私は」を人類に置き換えると、ストンと腑に落ちる。家内は動物好きが高じてUMAを受け入れそうな雰囲気だ。その存在を信じようが信じまいが、一緒になって面白がれるようになればいい。
(写真〈上から順に〉:映画『大仏廻国』公式HP、韮澤潤一郎氏(写真左)と大槻義彦氏=同左、韮澤氏のユーチュブ動画から抜粋、小説『物語』シリーズに登場する羽川翼=NAVERまとめの各サイト)