なぜかやみつきになってしまう街で:黄金町バザール
もうとっくに過ぎてしまったことなのに、まだちゃんと楽しかった感覚が残っている。
去年の秋に行われた、黄金町バザールのことである。
黄金町バザール2020
会期:2020年9月11日~10月11日(第一部)
2020年11月6日~11月29日(第二部)
会場:日ノ出町駅~黄金町駅周辺のスタジオや空き地など
写真撮影:ほぼOKだが一部撮影不可のものあり
2008年から行われているこのアートイベントに、昨年秋はじめて行ってみた。
このイベントの存在を知ったのは大学1年生の時。大学の講義で使っていた文献に載っていたからだ。
だが、当時の私は講義に部活、オフ日はバイトと休みなく動いており、あまり余裕はなかった(という名の言い訳)。年が経つにつれイベントのことも忘れていった。
しかし、都市の景観やまちづくりに興味があった私は、卒論執筆を機にこのイベントを思い出した。
ただ、残念ながら思い出した時にはイベントは終了していた。だから次の年はなんとしてでも行く、と心に決めていた。
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インスタのストーリーで横浜トリエンナーレの広告が流れてきてすぐ、トリエンナーレとの合体チケットを購入したくらい、楽しみは十分前のめりだった。
第一部は1日じゃ絶対に回り切れないくらいの作品数で驚いた(なので2回に分けて回った)。ただほとんどの作品はコンパクトなもので、テンポよく回ることができた。
特に印象に残った作品が2つ(ほんとはもっとあるが厳選)。
SUZUKIMI 《ひとつぶのすなのせんぶんのいち…ときのしずく》
見るからに神秘的な作品。
吊るされたペットボトルから一滴ずつ、不規則にしずくが落ちるというもの。鏡に水をはった受け皿にしずくが落ちると、展示室内に波紋を映し出される光景は美しかった。これ見たさに早く水落ちろ…!とか思ってた。
竹本真紀 《私が子どもの時にみた風景》
同じ人間なのに、生まれた国が違うだけでいじめられるのは「なぜ?」
黄金町周辺で育った人から聞いた話を、絵と作文で展開したインスタレーション。なぜそうなるのか「わからない」ことについて、たくさんの「なぜ?」を投げかけるインスタレーション。考えさせられた。
※カメラの電池がなくなって全然写真残ってない。悲しい。
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一方の第二部は、第一部に比べると作品数は少ないが、1つひとつの作品にボリュームがあり、負けないくらい濃かった。以下、見入った作品を。
山田悠 《Nocturne》
夜空の満月を、建物や電線などのシルエットに沿わせてコマ撮り。それをパノラマとフィルム映像の2構成で展示。
至ってシンプルだが、ずっと見ていたくなる作品だった。
アルフィア・ラッディニ 《Sailormoonah》
インドネシアの街中に、ムスリムの「セーラームーン」の像を置き、市民の反応を記録した映像作品。
像の足元に意見をチョークで書く様子や、インタビュー映像など見ごたえ十分。老若男女問わず様々な人の意見があって面白い。
カオ・ツネヨシ 《黄金町での振る舞い》
マレーシア出身の作者。
自身がアートを始めてからこの作品を提出するまでに体験した、様々な出来事や会話から考察を深め、言葉と写真などで構成された映像作品。27分という長さ以上のメッセージの強さに圧倒。
見入りすぎて写真撮らなかった。もう一度見たい。
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以上、個人的に印象に残った作品をつらつらと。
ただ、このイベントの作品自体も素敵なのだが、黄金町という街全体が「いい感じ」なのだ。
黄金町バザールが開催されたエリアはもともと、売春や風俗店が多いことで知られていた。しかし、地域住民が中心となって違法行為や店舗を取り締まり、環境の改善に成功。
その後空き地となった店舗やアパートにアーティストを呼び込み、黄金町周辺を拠点に活動してもらうことで、アートと街づくりのスタイルが形成された。
街並みを見るのが大好きな人間にとっては、当時の建物を壊さず活かしている点で、
細い路地にこまごまとした店舗やアパートが並ぶ、あの「ごちゃっと感」がたまらなくいい味を出していると思う。
黄金町バザールの作品を見るがために何度も足を運んだ結果、作品だけでなく街全体にハマってしまった。
しかしこの街からは色んなことを学ばせてもらった。
アートやアーティストの力、残された建物の使い方、
地域住民がまちづくりの主役であること、そしてこの見事な変貌は彼ら彼女らが中心となって進めたこと。
大学で出会った文献をきっかけに、ここまでハマると思っていなかった。いやー、侮れない。
ということで来年も黄金町バザール行きます。
しばらくは飽きること、なさそうです。
○参考
https://www.hamakei.com/column/135/
https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_00556/