おすすめビブリオ・ミステリ5選のご紹介
多分にもれず大のミステリ好きです。ページを開き、そのナゾトキが"本”にまつわるものであれば、本好きとしては、なおさら嬉しい。そんな「ビブリオミステリ」おすすめ5選のご紹介です。
①『ビブリア古書堂の事件手帖』/三上延(メディアワークス文庫)
まずは王道!「ビブリア古書堂」シリーズ。丁寧に組み立てられたキャラ造形と時間軸、鎌倉という舞台装置。長丁場のシリーズですが、ゆっくりと確実に進んでいく登場人物たちの成長や関係性が心地よく、巻が進むほどに深まる味わいがあります。古今東西の魅力的かつ初めて出会う古書たち、往年の作家たちのエピソードなども、読み進めるほどに魅力となってもっともっと知りたくなる。ライト文芸、というだけで敬遠しがちな向き(私自身もそうでした)にもぜひおすすめ。この作品をきっかけに、本ジャンルの良書にたくさん出会うきっかけになってくれる作品です。
②『ペナンブラ氏の24時間書店』/ロビン・スローン 島村浩子訳(創元推理文庫)
2つ目は翻訳物から!かなり話題にもなった作品で、刊行当時手に取られた方も多いと思いますが、YA寄りアメリカン・ユースの洒落た一人称ものが好きな人には特にオススメです。謎の書店からの求人広告、秘密を感じさせる店主、突如主人公の元に舞い降りる美女、舞台装置もバッチリで、謎解き要素もかなりハラハラ。傾向的にはダ・ヴィンチ・コード寄りのミステリになりますが、Google本社が主要な舞台のひとつになっていたりと、時代の空気の折り込み方が絶妙。プロットの完成度にお洒落さが相まって、とても好きな作品世界です。
③葉村晶シリーズ『静かな炎天』/若竹七海(文春文庫)
3弾めは大好きな若竹七海先生の"葉村晶シリーズ”から、短編集「静かな炎天」。吉祥寺のミステリ専門古書店が作品の舞台となってから、ますます、本好きにはたまらないギミックがぎっしり。2016年にはアメトーーク読書芸人大賞として、カズレーザーに推されたのをご記憶の方も多いのでは。無愛想でシニカルだけれど心の奥底は誰よりも傷つきやすく優しさを秘めた葉村のキャラクターは、「女性版ハードボイルド」と一言で表すのはもったいない魅力にあふれています。本作には、舞台である古書店にからめてとある古書にまつわるミステリも巻末に登場します。
若竹先生×葉村ものの短編は特に秀逸で、長編作品よりも楽しみにしているほど。シリーズの初出には諸説(?)あるのですが、がっつりハマるなら、初期短編集「依頼人は死んだ」(文春文庫)からスタートされるのをお薦めします。
④『この本を盗む者は』/深緑野分(KADOKAWA)
刊行されたばかりの新作です。貪るように読みました!深緑先生の作品は最近になって読み始めましたが、例えるなら老舗洋菓子店のタルトのように、土台がしっかりと練られ重厚なのに味わいは軽やかで可愛らしい、そんなイメージが大好きです。ファンタジー要素の強さと、地に足のついた魅力的な人物描写。「ポニョ」や、懐かしのエンデ作「はてしない物語」等々他にも色々、本と物語にまつわる記憶が、読み進めるごとに込み上げてきます。舞台となる"読長町"本の町へと、ぜひ、主人公とともに旅してください。
⑤『円紫さんと私』シリーズ/北村薫(創元推理文庫)
トリを飾るのは、このシリーズ。ずっと大好きであまりにも大切だけれど、特に10代から20代の時期、折れそうな壊れそうな心をどれほど支えてくれたか分からない。呼吸するように本を読む、ひとりの少女の日常と成長を、繊細に鮮やかに描き出し、心地よい文体に浸る読書の楽しみを感じさせてくれる。しかし描かれるのは、決して所謂”ふんわり日常もの”ではない。人間の心の闇。憎悪。普段は表に出ることのない、知った後ではおう戻れない苦しさは、恋愛もそうであるように、幸福と表裏一体なのでしょう。わかりやすい答えを提示しないからこそ、誰の心にもそっと寄り添うことのできる、温かく残酷で、希望に満ちた世界。
未読の方、今からだと時代設定などが少しクラシックに感じるかもしれませんが、ぜひ、ぜひ。
いかがでしたでしょうか。ひとくちにビブリオミステリと言っても、その中の“本”との関わりかたは作品それぞれ、無数の楽しみ方と可能性があるように感じます。
空気が凍てつき、肌寒くなるほど、本をひらくことで感じられる暖かさは特別なものです。
気になった作品に出会えたら、ぜひ手に取ってみてくださいね!