行幸通り地下通路
JR東京駅と行幸通りとを結ぶ通路の一つに、行幸通り地下通路がある。
白とグレーの寒々しい通路ではあるが、ギャラリーとして写真を飾っているほか、イベントや市場が開催されていたりもする。
丸の内の素晴らしく都会的な街並みを眺めながら歩くのは気持ちがいいが、表を歩くには不向きな天候の日もある。
丸の内仲通りのイルミネーションを見たい気持ちよりも、吹きすさぶビル風の寒さから逃げたい気持ちが勝つ。
そんな時、しばしば行幸通り地下通路を利用する。一本の静かな通路。
市場がやっている時を除いて、ここは人通りがまばらで静謐に包まれている。
しかしよく音が響く空間で、靴音だけは大きく反響するのだ。
通路の真ん中を通ることを選び、うまくヒールの踵をおろす。コンと深く身体に響くときがあり、周囲に共鳴の波が響きわたって面白い。
涼しい顔でカツカツと歩いているよう装いながらも、音の響きをたのしむ。
ヒールの靴を履いていて一番気持ちのいい瞬間だ。
両脇に常設されている世界の街や駅の写真を眺めながらゆっくりと歩くのも味わい深いが、あえて通路の真ん中を歩くことをすすめたい。
忙しない大都会の中心で、靴音に耳を傾けられる静謐な通路。
今日もたまたまヒールの靴を履いている。通路の真ん中を音遊びに興じながら歩き、東京駅へと抜けた。