職業柄および時節柄
昨日、17歳(高2)2人と私を含む3人でいつもの教室で50分を過ごした。
その事前準備としては1週間くらい。彼ら二人のことを別々に考えたり、同じように考えたり。
だって、彼ら2人のキャラが違いすぎる。100点満点の期末テストで19点を取ったという共通点を除いて。
そして考えた先に、一人ずつレターを書いて、それを本人の前で読み上げよう。そして、もう一人も教室の端で聞いている状態にしようという思いに至りました。
まず
Aさんへ
この一年間英語の授業を担当したものとして、Aさんの授業態度、提出物などの取り組み状況を振り返りたいと思います。時々、授業中に居眠りしたり、多少のおしゃべりはありましたが、その都度の注意に対してすぐに素直に行動を改めるなどの姿勢が見られ、授業態度、提出物の提出状況は問題なしと評価できます。したがって、評価の平常点の部分では満点の加点をしています。よく頑張りました。
英語だけでなく、すべての科目に言えるように、考査(テスト)での得点が評価の大部分を占めてきます。その点でこの科目として第3学年への進級に足りていないため、今こうしてこの時間を設けています。この時間を今後のAさんにとってためになる時間にするために、私はいろいろ考えました。
そして、今、私の気持ちを伝えるためにこの手紙を書いています。
Aさんが高校を卒業するまでに、少なくともあと5回、卒業に関わる重要な考査(テスト)が実施されます。Aさんは、これまでと同様の授業態度と提出物はしっかりと期限を守って、取り組まなければならないのは当然のことです。できると思っています。
テストもこれまでと同様に、欠席することなく、必ず、必ず、受けてください。それが、Aさんの「できること」「やること」のすべてです。そして、その後の結果、「できた」「できなかった」は素直に受け入れて、もし課題を出してもらえれば、その提出期限を必ず守り、提出してください。それでいいです。それができない人もいますが、Aさんは「やる人」で「できる人」です。私は知っています。
私は、Aさんのキャラクター(人柄や性格)にとても好感を持っています。Aさんは人を嫌な気持ちにする言葉を選ばず、楽しませるためなら、自分が悪者になってもいいと思うほど、心の優しい人です。時々ふざけすぎが度を越えてしまいますが、部活も楽しく続けて頑張りたいと思っているのではないかと推察します。卒業までの残された日々、すこし自分に厳しく、ちょっときつめの負荷をかけてトレーニングすると、自分をより強くすることを心がけると、「真に優しい、強いヤツ」に近づけると思います。
これから卒業までの日々、「できる」とか「できない」にこだわらず、「やるべきことをやる」を一歩ずつ、着実にこなしてください。「オレ、やればできるから、と言ってやらない口だけのヤツ」や「やらずに文句ばかり言うヤツ」を横目に見ながら、Aさんは、結果(「できた」「できなかった」)にこだわらず、ただ、「やるべきことをやるヤツ」でいてください。それを繰り返していると、だんだん楽しみながらできるようになり、そうするとAさんにとって大切な仲間(本当の友達)もついてきます。今日、Aさんはこの時間に間に合うように起きて、ちゃんと席に座って、これから取り組むことの指示を待っています。その姿勢を必ず続けてください。Aさんが高校を卒業するとき、その姿勢を身に着けたAさんは誰よりも胸を張って、人生のスタート地点に立てると確信しています。4月から私が英語を受け持つか、まだ分かりませんが、この学校にいて、Aさんがその姿勢を持ち続けているか、必ず見守ります。つらいとき、くじけそうになった時、相談に乗りますし、できうる限りの手を貸したいと思っています。
そのことを決して、忘れないでいてください。
彼は根はいいし、しっかりした顔つきでこちらの話をきいてくれるけれど、すべての教科において、20点以上が取れない。勉強が本当に苦手なんだろうと思う、でも、「高卒」だけは頑張って成し遂げてほしい。
そして、もうひとり
Bさんへ
この一年間英語を担当したものとして、Bさんの評価をします。
授業中の居眠り、私語、飲食、暴言、立ち回り、携帯の操作、授業中にはふさわしくない言動が多々見られ、そのたびに注意を促しましたが、全く改善が見られませんでした。提出物も数えるほどしかなく、その取り組み内容はとても評価できるものではありませんでした。よって、評価基準の平常点も加点できるのは、授業中の音読テストのみになります。ただし、Bさんの授業中に英語に関係する質問や発言は面白く、ほかの生徒の刺激になったことが2回ありました。そのままの姿勢が続けばよいなぁと心の中で強く思ったのを私は覚えています、が、残念ですが、授業態度の改善は見られませんでした。もちろん、自分だけではない、と「言い訳」をするかもしれませんが、この時間はBさんのためだけの時間です。しっかりと自分のことだけに集中して考えてほしい。それができないのであれば、その旨を担任に伝えて、単位認定不可の結論を出すことになることを、まずしっかりと理解してください。
それでは、上記のことをしっかりと理解したうえで、今年度の単位認定に必要な追試を含めた指導をしていきます。Bさんは、先日、答案を返して、「追試」になる旨を伝えた際に、「追試をして頭がよくなるんだったらいいけど、ならないんだったら意味がない」と発言しました。とても印象に残ったのでよく覚えています。「追試」はBさんの頭をよくする目的はありません。Bさんの頭は、すでにとてもいいです。Bさんが1年後に社会に出たときに必ず知っておかなければならないルールを特別にシュミレーションして体験してもらうためにするのです。社会で生きていくには、必ず学習しておかなければならないことがあるのです。それを学習してほしいのです。
Bさんの頭と体を動かして、今、実感してほしいのです。「追試」は練習にすぎません。サッカーで言えば、ただの練習試合です。公式な試合でも実戦でもありません。学校でできるのは練習です。Bさんなら、準備運動や、練習試合を本気でやらず、へらへらと笑いながら、相手を馬鹿にしたりして、適当に流す選手に本番や実践で活躍するチャンスがないこと知っているはずです。今は、文句だけ吐き散らして、適当にやっても何とかなると思っているかもしれませんが、社会に出て、ルールや、人としての道理を無視したら、その結果は「追試」では済まされません。Bさんにとって一番楽しくて、大切なものを失うという取り返しのつかない事態かもしれません。
そんなBさんでもこの高校を必ず卒業します。賭けてもいいです。ただ、いろんな人に文句や暴言を吐き散らして、好き勝手をして、自分を甘やかして、ごまかして、心身の発達が今のまま、卒業するのなら、卒業と同時に始まるBさんの人生のスタート地点はとても厳しいものになるかもしれません。でも、それも今はまだ分かりません。一年後の今日はまだ白紙です。
これからの一年、私はBさんをしっかりと見ています。そして、「あなたの卒業」をしっかりと見届けたいと思っています。できなくてもいいのです。課題や追試をこうして受ける「やるべきをやる」Bさんで十分です。「やらない」選択だけはせずに、必ず「やるべきことをやる」Bさんでいてください。今日こうして、この時間に間に合うように登校したBさんなら、きっと「やりきる」ことのできる人です。 私は見ています。 Bさんを見続けます。
彼は、中学時代、両親とともに、海外旅行をしたときに、海外の雰囲気がとても気に入り、高校卒業後はオーストラリアにワーホリに行きたい、英語は必要と分かっているけれども「勉強」は無理。ずっと座っているのも、苦痛。でも、先生の言っていることはなんとなく分かる。みたいな態度の生徒。
以上のお手紙を2人それぞれの前で読み、それから期末テストの解説を交えて解きなおしをし、100点の答案を作ってもらいました。
二人とも「教えてもらえればできる」と喜んでいました。
えーっと、私はずっと教えているんだけれどね。やり方の問題かな?
授業は1クラス40人
ほかにも個性豊かなキャラがたくさんいるのが学校というところ。
全く性質の異なる二人を前に、1年後の彼らが卒業の時、彼らを取り巻く世界が穏やかに、そして刺激的に動いていることを願わずにはいられません。
そして、なにより、今、この時、こんなにも時間と労力と気持を込めてできる仕事につけていることにとても幸せを感じています。
いろいろありました。悔しくて泣きそうになった授業もありました。
でもこの仕事はやはり、私にとって天職と言えるのだと実感する年度末です。職業柄、一つの区切りです。
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