葉は車輪状、花は梅に似るからシャリンバイ
鮮やかな花が多い沖縄でも、春の野山で目につく花は、清楚な白色が主流です。シャリンバイ、トベラ、エゴノキ、シマイズセンリョウなどがそうです。中でもシャリンバイ(車輪梅)は、海岸(石灰岩地)から山地(非石灰岩地)まで生え、公園や街路、防風林にも植えられるので、町中でも比較的よく出会える低木です。
名前は、葉が車輪状に集まってつき、枝先にウメに似た花が咲くため。沖縄ではウメの木がほとんど植えられていないので、シャリンバイを見てウメを連想してください。
沖縄方言では、ティカチ、テーチ、テカチャーなどと呼ばれ、サルトリイバラ(グール)やフクギと並ぶ代表的な染料植物です。赤茶色に染まる樹皮や木材は、昔から芭蕉布や久米島紬、読谷山花織などの染料に使われてきました。
秋〜冬には、ブルーベリーに似た黒紫色の実がなります。ご年配の方からは、子どもの頃にこの実を食べた、という話をよく聞きます。でも、タネが大きくて食べられる部分は薄く、甘味も薄いので、少々意外です。本土では海沿いに宮城県まで分布しますが、食べるという話はほとんど聞きません。
また、沖縄産のシャリンバイは葉が細い個体が多く、ホソバシャリンバイ、オキナワシャリンバイとも呼ばれます(これらの分類は諸説あり、本土のシャリンバイと厳密に分けるのは難しい)。樹高7m、幹の直径10㎝に達することもあり、本土で高さ1〜2mの木に見慣れているナイチャーには驚きです。沖縄では、ひときわ大きく元気に育ち、甘味も増すのかもしれません。
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沖縄の木の見分け方や特徴を詳しく知りたい方は、奄美〜八重山の自生樹木全種を収録した著書『琉球の樹木』(文一総合出版)や、草花も含め1000種掲載した著書『沖縄の身近な植物図鑑』(ボーダーインク)もぜひご覧ください。