(連載小説)気がつけば女子高生~わたしの学園日記⑮ はじめての美容室~
優和学園高校に”新女子”として入学して1カ月が経った。授業も本格的にはじまり、普通に現代国語や数学、英語と云った科目もあるし、この学校ならではの専門科目もあってわたしはいろいろと勉強させてもらっている。
専門科目もいろいろで、まず「日本文化」と云う科目があって今は基礎編として着物全般についてを習っているけどそのうちに日本舞踊や雅楽、お琴などの和楽器についてや茶道・華道についても実践を含めて教わるようだ。だけど最初に着物の部位や種類や小物の名前と言った「着物用語」を覚えましょうと云う事でいろんな言葉がいっぺんに出てきた時に少し戸惑った。
確かにこれが分かってないと着物を扱う時に何がなんだが分からなくなるのでまずはこれを覚えないといけないけど「えっと・・・・・丈(たけ)がこれで、裄(ゆき)がこっちかな・・・・・。」「背中心ってどこ?衣紋(えもん)を抜くって何??。」「着物の小紋(こもん)はおしゃれ着で、付け下げは改まった席に着て行く??。どう違うの??」みたいに聞いたことのない用語の連続に結構大変。それでも普段から着物大好き女子のあゆみちゃんにすみれちゃんは当然とばかりにもう習ったばかりの着物用語で会話していてさすがだよねと聞いてて関心する。
それから「所作・作法」と云う科目もあって、これが主に「着付け」と「着物を着た時のみならず女子としてのマナー全般」を教わる科目なのと、もちろん「美しい言葉遣いについて」も随時カリキュラムに組み込んである。
この学校は着付けができないと進級できないのでこの授業の時間中はとにかくみんな熱心に取り組んでいる。ただはじめて着付けを習う生徒ばっかりなのでどの子も「あれ?これでよかったかな?」とか言いながらやっていて結構にぎやか。ただわたしたち”新女子”は女子とはやっぱり違うし、女子と新女子が一緒の部屋で着替えを伴う着付けをすると云う事に関しては無用な誤解や心配を招かないように新女子は女子とは別のお部屋で着付けのレッスンに励むようになっている。
ともかく女子も新女子もまずは浴衣の着付けからスタートしてこれがマスターできたら続いて小紋とかの袖の短い着物が着られてお太鼓結びに帯が結べるようになるのが当面の目標でこの2つができるようになったら2年生に進級できるので留年しないようにみんな頑張って取り組んでいる。
それと他に「女性と社会」と云う科目があり、これがこの学校で力を入れている「ジェンダー教育」を主に教わる時間で、ジェンダー教育だけでなくて出産一時金とかの「女性として使える公的補助の仕組みと制度」を教わり、またその制度が実務上問題がある・なしなど運用面や女性にとっての制度設計がどうか等の課題についても考える時間でもある。
確かにせっかくの制度でも「知っていれば大違い」と云う制度もあるだろうし、それがいわゆる「女性目線」から見ての「使い勝手」はどうなのかと云う社会問題的な事を考えるのは女子であっても新女子であってもとっても大切な事だと思うし、この他にも「女性の経済的な自立」と云う観点から「投資」についても教わる。ただ「投資」って云うとどうしても身構えちゃう感じもするけど、そうでなくて「つみたてNISA」みたいな基本的なもので貯金感覚で取り組めるものもあるし、先物取引やFXみたいな一足飛びに利益を確保しようみたいな金融商品の良し悪しも併せて教えてくれるのでそれも勉強になる。
そんな様々なお勉強をしながら部活動も頑張っているとあっと云う間に1カ月が経ってゴールデンウィークも終わり、連休明けの教室でいつもの「すみれ班」の5人でわいわいがやがやとお昼ご飯をいただいていた時の事、「そう言えばあゆみちゃんも最初におかっぱにしてから結構髪伸びたねー。」と云う話からそれは始まった。
「そうなの。もう1ヶ月ちょっと経っちゃって校則と部の決まりでもある”スクールボブ”の長さから少しはみ出してるかな。」とあゆみちゃんはとっても似合っている黒髪おかっぱボブを自分で撫でながらそう言うと「そう言えば由衣ちゃんと弥生ちゃんは髪の毛まだウィッグなの?。」と梨子ちゃんが聞いてくる。
「うん・・・・・まだわたしたちウィッグなんだ・・・・・。」
わたしは去年の秋に優和学園を受験すると決めてから、いずれは合格したら地毛で女の子の髪型にする事になるだろうからと思って引きこもりで保健室登校をずっとしていた頃から少しずつ髪を伸ばしてはいる。弥生ちゃんもわたしと同じで去年の秋からほとんど中学校には登校していなかった事もあって地毛は普通の男子よりは長いみたいだけどまだウィッグを被って登校している。
「ねえ、確か新女子の子もいずれは長さが整ったら地毛でおかっぱとか決められた髪型にしないといけないんだよね?。」「そうなの。大分髪も伸びてきてるし、そろそろ切らなくちゃなって休み中も思ってたところ。」と言っていると「だったら今度のお休みに3人で髪切りに行かない?。」とあゆみちゃんが言う。「わたしも部の規則で決められてるこのおかっぱの髪型と長さにちゃんと切りそろえてないといけない時期になってきてるし、それに暑くなってきててウィッグかぶってると大変じゃない?。」「うん、まあそれはあゆみちゃんの言う通り暑いし、蒸れちゃってなんか変。」「だったら一緒に髪切ろう。いいでしょ?ねっ。」と言われわたしと弥生ちゃんはあゆみちゃんに付いていってもらってはじめて美容室で地毛を女の子の髪型にする事になった。
次の日曜日、いつも学校に通う電車に弥生ちゃんが途中から乗り換えてくる瑠璃ケ丘の手前の二つの路線が交差するジャンクションの駅の改札口にわたしは居た。
なにやらここの駅の近くにあゆみちゃんがおかっぱに切ってもらった「ポプリ」と云うかわいい名前の美容室があって、そこは学校指定の美容室でもあるらしく確かに電子生徒手帳にも「学校推薦」として載っているいくつかの美容室にもなっていた。
わたしは今日は紺色のワンピースを着て、白のニーハイソックスを履き、黒のパンプスと云う格好で地毛を女の子の髪型にすると云う事もあってそれに合うように出来るだけフェミニンな装いを心がけて出かけてきた。あゆみちゃんが今日はみんなワンピースで集合しようと言ってきたのもあり、正直連休中に梨子ちゃんに付きあってもらって女の子が着るお洋服を買いに行ってはみたけどまだまだワードロープは少ないし、それにまだ女の子のコーディネートと云うものがそこまでよく分からないのでこんな感じで1枚で決まるワンピースを「ドレスコード」にしてもらうと助かる。
改札口で待っていると弥生ちゃんがベージュの小花柄の萌え袖ワンピースで登場。春らしく、また初夏でもある今日の陽気にもぴったりのかわいらしくてふんわりと、そして軽やかな感じのお洋服でとってもすてきだし、どっちかと言えばクールな印象だった弥生ちゃんがこんな感じのかわいらしいお洋服でお出かけするのは意外だけどまたそれも似合ってていい。
そして少しするとあゆみちゃんがストライプのシャツワンピースで登場する。背の高いあゆみちゃんにシュッとした感じのストライプのワンピはこれも違和感ないしとっても似合っててすてき。
合流した3人はあゆみちゃんに連れられて商店街を抜け、目指す「ポプリ」と云う名前の美容室へと向かう。10分足らず歩くとその「ポプリ」に到着して3人連れだって中に入る。
入ると美容室独特のパーマ液や他にもいろんな液体や化粧品の匂いがいっぱいで嗅覚が「今から”女の園”に入ります」と感じさせてくれる。
「こんにちわー。予約しておりました岸辺でございます。お友達も一緒に参りました。」とあゆみちゃんはさっそく「所作・作法」の時間でも習った丁寧な言葉遣いにてお店のスタッフさんにお声がけすると「あら、岸辺さんいらっしゃい。じゃあ少しだけそこに座って待ってもらっててもいい?。」と言われ、わたしたち3人は待合スペースにあるソファに腰掛ける。
腰掛けてお店の中を何気に眺めてみると、シンプルだけどかわいらしさも意識した配色のインテリアに内装や無造作に置かれた女性ファッション誌や女性週刊誌、ショーケースには売り物だろうか高そうなシャンプーやトリートメントなどが並んでいて、かわいらしいお花もお店のあちこちにさりげなく飾ってある。そして向こうではカット椅子に座った女性が大きな鏡を見ながら美容師さんとあれこれ楽しそうに会話をしながらカットやカラーをしてもらっている。わたしはなんでもそうなのだけど「初めてのところ」と云うものにはとても緊張するし、女性らしいファクター満載のこの「はじめての美容室」でもこれから女の子の髪型にする事も手伝ってやっぱり緊張していた。
待っていると奥から着物を着た女性が出てくる。見れば振袖を着ていて、きれいにメイクして髪も華やかなアップスタイルでとってもあでやかでお似合いなその女性を新女子3人はうらやましく思いながら興味津々で見つめていた。。「あらーかわいくなっちゃったわねー。振袖ってもお似合いねー。」とお店のスタッフさんに言われている定番の赤の古典柄の振袖を着たその女性はとってもうれしそうで、「じゃあ振袖デビュー楽しんで来てね。」「はい、初めて人前に振袖着て出るけどがんばります。」と云う聞こえてくる会話からどうやら結婚式か何かにお呼ばれしているよう。だけどその振袖女子の声がどことなく低いし、それに「初めて人前に振袖着て出る」っていったい・・・・・。
視線をお店の奥に移すと長い髪を何本か小分けの束にして切ってショートカットにしている最中の女性や、男性なんだけど丸みを帯びた髪形に切りそろえて軽くカラーをしてもらっているお客さんもいる。その人はよく見ると男性だけどカラーしてもらっている時に手元で読んでいる雑誌は女性向けのファッション雑誌だし、なんかこのお店にはわたしの知らない事がたくさんありそう。
そしてしばらく待って椅子が3人分空き、休憩のスタッフさんが戻ってこられたタイミングで新女子3人が呼ばれカット椅子に腰かける。
わたしのカットを今日担当して下さるのは三橋佐和子(みつはし さわこ)さんとおっしゃって若々しい雰囲気の女性だけど喋り方や声が落ち着いている方だなと思っていたらこのお店の店長をされていらっしゃるとのこと。「岸辺さんから聞いてるけどみんな優和学園で同じクラスのお友達なんですってね。今日はよろしくね。」「神原由衣と言います。こちらこそよろしくお願いします・・・・・。」そしてケープが掛けられ、ウィッグが外されて伸び放題のわたしの「ざんばら頭」が鏡に映し出される。
そして「岸辺さんはこの前来店された時に学校指定のスクールボブにって言われたけど、神原さんも同じ髪型にされるの?。」と聞かれ、「はい・・・・・今までわたし訳あってウィッグで登校してたんですけど、学校の規則で伸びてきたら地毛を学校指定の髪型に切りそろえないといけないルールなんで今日はその・・・・・し、指定の・・・・・お、おかっぱボブの髪型にしてください・・・・・。」と恥ずかしそうに小さな声で答えた。
横で同じように弥生ちゃんも「わたしも、他のみんなみたいにお、おかっぱボブでお願いします・・・・・。」といつもなんでもあっさりとして動じることが少ない弥生ちゃんもやっぱりさすがに地毛を女の子の髪型にするのはとっても勇気がいるし、恥ずかしいみたいでうつむき加減にそう答えている。
「分かりました。じゃあカットをはじめるね。」そう三橋店長さんが言われていよいよわたしの地毛がおかっぱボブと云う女の子の髪型へと変わりはじめる。まずは霧吹きで髪の毛を湿らせてくしで丁寧に梳かれ、そしてカットはさみを持って「切ってて髪の毛が目に入ったらいけないから少しの間目を閉じてようか。」と言われたので目をつむる。
「いよいよわたし女の子の髪型になるんだ。それもおかっぱボブって定番の髪型に・・・・・。あゆみちゃんみたいにわたしにもあの髪型似合ってればいいな・・・・・。」わたしはそんな事を思いながらとても内心どきどきしていた。
目をつむっているのでどうされているのか分からず不安だけどはさみの冷たい金属の感覚がわたしの頭を伝わり、「ジョキ、ジョキジョキ」と云う髪を切る音が耳元で響くように聞こえてくる。そして「あ・・・・・わたしいま・・・・・おかっぱボブになってるんだ・・・・・。」そう思っていると続いてはさみの金属感がおでこに伝わり、ちょうど眉毛のあたりで前髪を切ってもらっているよう。
そしてカットが終わったようで軽く頭を振るようにさわり、細かい髪の毛を払いのけたあとはとりあえずくしを通して髪型を整えてくださっているような感じがしていると三橋店長さんが「はい、とりあえずカット終了しましてかわいいおかっぱちゃんになりました。じゃあ目を開けて鏡で見てみましょうか。」と言う。
わたしは目を開けるのがとっても怖かった。今までセミロングのウィッグを被ったわたしはまあまあ女子に見えていたけど、髪を切っておかっぱボブになったとしても果たして今までと同じように女子に見てもらえるレベルなのだろうか?・・・・・。それにもし似合ってなかったりパス度下がったら大好きな学校に行きにくくなっちゃうかも・・・・・。そんなのやだ・・・・・。そう思うと目を開けるのがとっても躊躇する。でもそんなわたしに三橋店長さんが「神原さんどうしたの?。とってもかわいくなってるから目を開けて自分の新しい髪型を見てみて。」と優しく諭すように言ってくださったのもあって恐る恐る閉じていた目を開けてみる。
「えっ・・・・・この子だれ?・・・・・。」
そこにはかわいらしい黒髪おかっぱボブの女の子が映っていた。後ろ髪はあごの線より少し前で切りそろえられ、前髪は眉毛が隠れるラインで横一直線に同じく切りそろえられている少し短めのおかっぱボブの髪型をした女の子だ。
「だれって、神原さん、あなたよ。でも神原さんおかっぱボブとても似合うね。よかった。」
このおかっぱボブの女の子が、わたし??・・・・・。そう思ってわたしは鏡に向かって首を傾げてみる。そうすると鏡のおかっぱボブの髪型の女の子も同じように首を傾げる。
「わたし、おかっぱボブになっちゃったんだ・・・・・。」
ようやく自分の地毛をおかっぱボブと言う女の子の髪型になった事へ実感が少しずつ沸いてきた。ちらっと横を見ると弥生ちゃんも同じようにおかっぱボブになっていてその姿を信じられないと言った感じで鏡で見ている。
そうしてシャンプーをしてもらってタオルとドライヤーで髪を乾かして、改めてブラシとくしで切りたてのおかっぱボブ頭を整えて下さり、程なくわたしたち3人の「変身カットライブ」は終了した。
ケープを外され、カット椅子から立ち上がると隣に同じ髪型の黒髪おかっぱボブ少女が居る。「わあー由衣ちゃんも弥生ちゃんもほんとかわいいー。おかっぱボブ似合うー。」と「おかっぱボブの先輩」のあゆみちゃんがまず褒めてくれる。カットの終わったあゆみちゃんは改めて「レトロかわいさ」満点で、はじめてのおかっぱボブの弥生ちゃんは元が美形なのも手伝ってわたしたちと同じ髪型ではあるけどまた違うどことなく洗練された垢抜けた感じでかわいらしさの中にも持ち前のクール感漂う感じでどちらもとってもよく似合っててすてき。
そう言うわたしはおかっぱボブの髪型にして少し前よりも幼くなっちゃったかなと云う感じ。でもその分今までとは違ってまた別の自分に会えたみたいだし、こうやって髪型を変えたりそこまで行かなくてもカットをしたりするってなんだか楽しい・・・・・。女の子ってこんな風な楽しみ方もあるんだ・・・・・。
カットの終わったわたしたち3人はお代をお支払いしてかわいくしていただいたお礼を言ってお店を後にしたけどなんとなくこのまま家に帰るのもなんだしと云う事で近所のかわいらしいカフェに入って休憩を兼ねたプチ女子会をする事になった。
服装はそれぞれ違うけどおんなじ髪型の「女子高生」3人はいつものようにあーでもないこーでもないととりとめのない話で盛り上がる。髪を切る前ははじめての女の子としてのカットをする事やおかっぱボブと云う髪型が似合わなかったらどうしようと言った不安もあったけど、カットが終わり3人ともみんなこの髪型がとっても似合う女の子になれてひと安心したのと似合っているのもあっていつもよりテンション高めでおしゃべりをした。
そうして女子会はお開きになり帰っている途中のその電車の中の窓ガラスにおかっぱボブのわたしが映っている。
どことなく幼なくて、だけど自分で言うのもなんだけどちょっぴりよりなんて言うのか「少女らしさ」を増した感じがするわたしにふと放送部の新女子のお姉様が言っていた事を思い出す。
それは「ウィッグをつけて学校に行っているうちはまだ新女子としては”仮免状態”で、自分の地毛をちゃんと伸ばしてから校則に載っている女の子の髪型にしてはじめて本免許にしてもらうようなもの」と云う言葉だった。
家に帰って自分の部屋に入り、よそ行きの洋服から部屋着に着替えようとした時ついいつもの癖でウィッグを外すような感じで髪の毛に触った。でも当たり前ながら今日からわたしの髪型は地毛で女の子のするおかっぱボブ。だから触っても髪の毛が揺れるだけで取れたりはしない。「わたし、これでほんとに”新女子”になっちゃったんだな。」そう思いながら部屋着に着替える。
翌朝おかっぱボブの髪型になって最初の登校。ウィッグでない分暑さも少しだけ和らいだし、何よりこの髪型を見てすみれちゃんや梨子ちゃんや他の子たちはどう思うかな・・・・・と考えながら教室に入る。
すると「わー!由衣ちゃん髪切ったの??。すごーい。これって地毛?。」とか「おかっぱボブとっても似合うー!。由衣ちゃんますますかわいいー。」「うちのクラスの新女子3人ともほんとおかっぱボブにしてかわいくなっちゃったよねー。」とか言いつつすみれちゃんも梨子ちゃんも他の子もわたしの周りに寄ってきて新しい髪型にしたわたしを褒めてくれる。よかった。みんながこのおかっぱボブを似合うって言ってくれて安心した。どうやら放送部のお姉様が言ってたように地毛で女の子の髪型にした事でわたしも新女子の”免許皆伝”になったみたい。
そう言えばボイストレーニングに行ったら他のクラスの新女子の子たちも少しずつおかっぱボブにしてる子が増えた気がする。この前までのあゆみちゃんみたいに元から髪の長い子もいるだろうけど、大半はわたしと同じ長さのセミロングのストレートだったから多分ウィッグだったんかだろうけど、そろそろみんなそれなりに地毛が伸びてきたのでとりあえず女の子の髪型に長さが出来る子はおかっぱボブにしたんだと思う。だけどどの子も似合っててかわいい。
わたしの中では自分の地毛をこの女の子らしいおかっぱボブの髪型にした事で「身も心も新女子になった」ような感覚に包まれていた。そしてなんて言うのか急速にわたしが女の子の色に染まっていくような感じもしていた。
でもいいの。わたしが神原由衣としてこの学校で居続けるためにはこの髪型も袴制服も大切なものだし、何より女の子らしくなっているわたしをみんなは”ひとりの新女子”として優しく見守るように接してくれている。
さて、今日もまた授業が、部活動がはじまる。
(つづく)