幻獣戦争 2章 隠岐の島攻略作戦⑧
2023.04.06『幻獣戦争』絶賛販売中
アマゾン売れ筋ランキング部門別1位獲得!
縦書き版はこちら
※著作権等は放棄しておりませんので、転載等はやめてください。
Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited.
(当サイトのテキスト・画像の無断転載・複製を固く禁じます。)
幻獣戦争 2章 隠岐の島攻略作戦⑧
「……良いの?」
「ただし、隠岐の島攻略作戦までに絶対に準備してください。できなければ多くの隊員が海の藻屑に消えます。それだけは絶対に回避しなければなりません」
「わかったわ。貴方の期待に見事答えて見せようじゃない!」
驚く博士に俺は念を押して言う。すると、博士は上機嫌に高らかと宣言して電話を切った。
「……勇司に電話かぁ」
俺はため息交じりに呟き、切れた電話を繋ぎなおして交換の士官に勇司に繋ぐように告げる。士官は『了解』と、手際よく回線を繋ぎなおす……問題はここからだな。
「――俺だ。作戦計画はまとまったか?」
数回のコール後、電話に出た勇司は早々に作戦計画について訊いてきた。
「まだだ。それより、頼みがある」
「どうした?」
俺の切り返しに勇司は問題が発生したのか心配そうに問う。
「九州に在籍している兵器メーカーのエンジニアを全員神代博士の下に送ってくれ。それから、待機中の封魔部隊も頼む」
「――おい、貴様の敵は幻獣であって経済ではないぞ?」
俺の明らかに無茶な要求に対して、勇司は冗談だろ? と、訊き返す。
「作戦にどうしても必要な兵器を作ってもらわないといかん。そのための措置だ」
「おい、どうした? 神代博士に乗っ取られたか?」
俺の芝居じみた口ぶりが猿芝居だと直ぐに気付き、勇司はふざけるなよ。と、俺の毒気を抜きにかかる。
「知っていると思うが、隠岐の島中心部に大型幻獣が確認されている。こいつが居る以上、小手先の陽動作戦なんぞ意味がない。主力共々仲良く全滅して終わりだ。となれば、初撃、作戦の第一段階で撃破する必要がある。そのための兵器を博士に今さっき依頼した」
「……お前がそう言うならそうする事が最良なのか……しかし、うーん」
窮していることを察して欲しいと解説する俺に、勇司は理解したそぶりを見せるが、やはり悩み始めた。事後処理が脳裏に浮かんでいるのだろう。だが、大型幻獣の撃破の目途が立たない限り作戦は実施できない。
「頼む」
「……わかった。他でもないお前が言うんだ。何とかしよう」
俺のダメ押しに勇司はしばらく悩んだ後了承した。
「すまない」
俺は軽く謝罪して電話を切り受話器を置く。これで最大の課題が解決した。後は砲撃するにあたっての注意の引き方だな……艦砲射撃でめくらましをするか。それとも――思案していると、執務室のドアが開く音がした。
目を向けると黄泉がお茶をもってやってきていた。
「陸将、お茶をお持ちしました」
「ああ、ありがとう。というより丁度よかった。黄泉、今から神代博士のサポートに回ってくれ」
デスクにお茶を置く黄泉にタイミングが良かったと俺は告げる。
「副官の隊務はよろしいのでしょうか?」
「構わない。次の作戦に必要な事なんだ」
「わかりました。では、神代博士の下に向かいます」
俺の即答に黄泉は、薄く微笑み頷くと敬礼すると退室していった。一人となった俺は、黄泉が置いていったお茶を手元に寄せ飲み一服する。
「さて、後は配置だな」
俺は軽く呟きデスクに広げている地図を見直す。まず、新型自走砲は西ノ島東国賀海岸付近に……いや、遠征する第一師団すべてここの集中させてしまおう。随伴の艦隊は中ノ島近海に展開させて艦砲射撃による支援を実施。新型自走砲の一次砲撃で敵大型幻獣を撃破できたとして、2次砲撃から小津久海岸沿岸部から隠岐の島反対部への砲撃を連続して実施。地図に情報を書き加えながらさらに思案する。
幻獣がこちらの陽動に乗った段階で、隠岐の島近海に展開中の主力艦隊が面制圧を始める。頃合いを見て陸上部隊の上陸を実施。橋頭保を確保した後、主力航空大隊が隠岐の島中央部に向けて爆撃を開始。その後、適時航空支援実施。封魔部隊の浄化作業は橋頭保を中心に並行して実施。主力部隊の上陸地点は旧美保神社の辺りが良いな。
主力部隊上陸後、こちらも隠岐の島への上陸を開始。後は隠岐の島を奪還できるまで戦闘を継続する。作戦計画としてはこんなものだろう。地図に書き加えた情報を精査して俺は作戦計画のまとめに入った。
ここまでお読み頂きありがとうございます!
次回に続く
2023.04.06『幻獣戦争』より絶賛発売中
アマゾン売れ筋ランキング部門別1位獲得!