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幻獣戦争 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才①
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序章 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才①
翌日、俺は一樹と食堂で朝食を共にしていた。勇司の準備が終わるまでは一樹も暇らしい。本来なら俺も書類仕事などの隊務をやらねばならないはずだが、編制中のせいか隊務の話が何も来ない。まあ雑務がないことはうれしいが、無駄飯ぐらいのようでちょっと居心地が悪いのも事実だ。
食堂は厨房と飲食エリアが一体化しており、飲食エリアは長テーブルと椅子が並べられている程度の簡素な造りとなっている。利用法は入口にトレイが用意されているのでトレイを持って好きな食材を選ぶか、厨房にメニューを伝えて作ってもらう形式だ。自衛官であれば無償で食べられるため、隊務が終わった後食事をして帰る隊員も多い。
俺達は厨房から朝食を受け取り、空いている飲食エリアのテーブルに陣取って朝食を食べ始めた。
「今日はどうしますか?」
「何も決めていない」
席の対面に座る一樹が朝食を食べながら問う。俺も同じように朝食を食べながら答える。因みに朝食は、ご飯と味噌汁におかずが焼き魚の定食で、一樹は目玉焼きとソーセージがおかずの定食だ。
「私も非番ですからねぇ……そうだ! シミユレーターで訓練でもしませんか?」
「そうだな。勇司からも言われているしな」
俺は一樹の提案を受け入れた。勘を取り戻せとか言われていたしな。
「勘が鈍っているようには思えませんがね」
「おいおい、4年乗っていないんだぞ」
一樹の嫌みを俺は苦笑交じりに軽く返す。正直に言えば今一樹と模擬戦をしたら勝てる気がしない。
「その割に幻獣撃破してるでしょうに。他の隊員が聞いたら嫌味に取られますよ」
「本当そうよね」
一樹が冗談っぽく言うと唐突に女性が会話に割り込んできた。俺は声のした左隣へ振り向く。
視線の先には日本人と思えない金髪ロングストレートに碧眼の女性が立っていた。
「うん? たまたまだと思うがな」
「おはようございます神代博士。珍しいですね」
俺が少し驚きつつ答えると、知り合いなのか一樹はそう挨拶する。
「ちょっと気分転換にね。隣良いかしら?」
「俺か? 別に構わないが」
神代博士と呼ばれた女性の問いに俺は朝食を食べながら答える。
「ありがとう。貴方が比良坂舞人陸将なのかしら?」
「そうですよ」
博士は朝食を乗せたトレイをテーブルに置き座りながら質問する。視線を外しちょうどご飯をかきこんでいた俺の代わりに一樹が同意してくれた。
「なにか用か?」
「初めまして、よね? どんな人なのか興味があったのよ」
「なるほど。ぱっとしない根暗で拍子抜けしたんじゃないか?」
俺は視線を博士に向けあっさりと答える。興味ねぇ……逃げた人間の何処に興味が湧くんだ? 俺の淡白な対応に博士は一瞬驚くがすぐに笑みを戻す。
「すみません。彼、初対面の人にはいつもこうなんですよ」
一樹が慌ててフォローをいれ苦笑いする。
「――そうなの?」
「さあな」
俺は雑に返し朝食を食べる。正直なところ人となりを探りに来る人間はあまり好きではない。その手のタイプは大体相手の弱みを見つけ優位に立とうとする人間が多い。
次回に続く
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