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幻獣戦争 2章 2-3 英雄は灰の中より立ち上がる⑩

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幻獣戦争 英雄は灰の中より立ち上がる⑩

 西ノ島駐留艦隊からの砲撃が始まり、那久岬沿岸部一帯に砲火が集中する。爆発と衝撃波を掻い潜り、渡河中の蜘蛛型幻獣が旧比奈麻治比売命神社(跡地)防御陣地に着実に近づきつつあった。最前衛の蜘蛛型幻獣は、海面をアメンボのように滑りながら防御陣地へ近づき、防御陣地一体へ砲撃を繰り出す。生体ミサイルに加え高速の砲弾が雨のように降り注ぎ炸裂していく。

 本来ならば、幻獣の集中砲火で展開中の部隊は壊滅してしまうが、俺が率いる部隊は違う。各部隊に配備されている新装備、サーマルガトリングの近接防御により、幻獣の砲撃は防御陣地に届くことなく爆発。その爆発が煙幕変わりとなり幻獣の視界を遮る結果となるが、爆発の衝撃が確実に展開している大隊各隊員の士気を蝕んでいく。

「想定出来ていたとはいえ、これは辛いですね」
 防御陣地前線で攻撃に参加している一樹機が無線越しに呟く。
「そうですね。弾が切れたら粉微塵にされるぞ。これは……」
 その隣で中隊を指揮している真那機が無線に応じる。
 お互いに機体の無線同士の会話なため、表情は伺い知ることはできないが負担は相応に感じているのだろう。

「中隊各員、サーマルガトリングによる近接防御は交互に継続しろ。同時に弾切れを起こしたら死ぬぞ!」
 真那は無線で各員に命令する。傍で展開している真那中隊の隊員達は『了解』と応じる。

「各員、敵が陽動に乗ったようだ。ここからが正念場だ。補給は適時後方に後退し行ってくれ」
 旧比奈麻治比売命神社(跡地)防御陣地前線に合流を果たした俺は無線上でそう告げる。

 幻獣は変わらずこちらを目指して前進を続行。コックピットモニターに表示されている戦域図で確認すると、まもなく敵幻獣先頭集団がこちらの有効射程内に入る。
 俺は水平線の彼方に視える敵幻獣群に電磁加速砲を構え、迎え撃つ準備をする。

「敵集団、有効射程内……来ます」
「全機射撃開始! 敵を蹴散らせぇ!」
 黄泉の言葉を受け、俺は無線上大隊全隊員に向け声荒らげ電磁加速砲のトリガーを引く。

 水平線の彼方から侵攻してくる敵幻獣集団に向かって砲火が集中し、着弾と同時に水しぶきが上がり爆発が巻き起こる。

 すぐさまコックピットモニターに映されている天照の観測映像に目を向ける。敵幻獣集団が、こちらの火砲と爆発でバラバラにされ、霧散していく幻獣の姿が映っている。しかし、それでも気にすることなく幻獣は前進を止めない。幻獣は指揮官といえる存在が倒されない限り無限に増殖する。ある意味で不死身の存在であるため、恐怖心などなくただひたすらに突撃してくる。人類が敗退を続けている理由はそこにある。

「黄泉、指揮官タイプの索敵を急いでくれ」
「今のままじゃ無理だわ。一旦攻撃を止めて機体の能力を全部索敵に回す必要がある」
 俺の言葉に黄泉は振り向き言う。俺は幻獣を迎撃しながらどうするべきか思考する。幻獣がこちらに至近してからでは遅い……なら今しかない。

「大隊各員に通達。今から本機は敵指揮官タイプの索敵を行う。索敵中本機は攻撃にも防御にも参加することが出来ない。しばらくの間、持たせてくれ!」
 俺は無線上で各員に連絡する。直ぐに一樹機、真那機が直掩に回るため合流。他の戦略機大隊各機は、機甲中隊が展開しているラインまで後退。抜けた火力を補うためだろう。

「陸将、タケミナカタの砲撃をこちらの敵前衛集団に向けます」
 機甲中隊と合流していた朱雀は無線上で言うと、直ぐに砲撃座標を変更してタケミナカタの砲撃を水平射する。海上に巨大な水しぶきと爆炎が昇り、衝撃波と共に敵先頭集団が一瞬にして消滅する。
 

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次回に続く

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