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幻獣戦争 2章 隠岐の島攻略作戦⑨

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幻獣戦争 2章 隠岐の島攻略作戦⑨

 翌日、俺は完成した隠岐の島攻略作戦計画書をデスクの端末から若本陸将補宛に送信。
 これから勇司を経由して田代本部長、雲井本部長、東師団長と順に回覧され問題なければこれを基にブリーフィングが開催されることになる。

 今頃、勇司は作戦計画書が驚異的な速さで完成したことに驚いているだろうが、寝ずに検討を重ねた結果に過ぎない。俺はデスクで淹れたコーヒーを飲みながら、随伴する部隊長達を待った。寝ていないので少し辛いが、これが終われば休息に入るとしよう。しばらくして、執務室のドアが開かれた。
 来訪者は、小野一樹一佐、桜井朱雀二佐、星野真那二佐、井上霞二佐の4名だ。

 4名が来たことを確認して、俺はデスクに置いている作戦計画書を片手に応接用ソファーに座りなおす。
「4人とも掛けてくれ」
 俺は作戦計画書を応接用テーブルに置き、声をかけ4人が向かい側に座るよう促す。
 4人は、小野一佐、桜井二佐、星野二佐、井上二佐の順に着席した。
「早速だが、今回の作戦計画書だ。確認してくれ」
 俺はそう述べ目の前に座る一樹に資料を提示する。一樹は資料に目を通し終えると隣の朱雀に手渡した。

「随分早くできましたね」
「悩んでいる時間がなかったからな」
 笑みを浮かべる一樹に俺は感嘆と答える。
「なるほど、寝ないで検討したんですね。ダメですよ。これが終わったら寝てくださいね」
「ああ、わかっている」
「――大型幻獣を初撃で撃破及び陽動ですか。派遣する部隊はどの程度になるのでしょう?」
 苦笑する俺に一樹はそう質問を切り出す。
 その間、隣の朱雀は資料を見て険しい顔をして真那に資料を渡す。真那は早く読みたかったのか興味津々で資料に目を通し始めた。
「そうだ。勇司は大隊規模と答えている。が、装備がどの程度揃ってかつパイロットの慣熟訓練が済むかによる」
 俺は練度次第というニュアンスで答えた。

「慣熟訓練なら現在実施しています。しかし、機体が大隊を編制できるほど揃うかはまだ不明ですね」
「そうか。しかし、戦略機はそんなに多くは随伴させることはできないだろう。それを念頭に精鋭の選抜を頼む」
 一樹の報告に俺は頷き真那を見る。資料に目を通し終えた真那は霞に資料を手渡し、俺を見て意図をくみ取るように頷く。
「なら、場合によっては星野さんを外すことにもなるかもしれませんね」
「はっはっはっは。面白い冗談だな小野一佐」

 一樹の冗談に真那は闘志を燃やすように言う。こいつらは4年の間にどれだけ腕をあげたのだろうか? 俺はともかく、あいつらの代わりが務まるくらいに成長していてくれれば、今回の作戦はだいぶ楽になるだろうな。

「……質問があります。この大型幻獣を砲撃で撃破するという任務は、もしかして僕の部隊がやるのですか?」
「そうだ。今回は朱雀の部隊が主役になる。大型幻獣は朱雀、君が撃破するんだ」
 話題を戻すように質問する朱雀に俺は朱雀を見て頷く。
「僕は狙撃の類が苦手で特科に転向したんですよ? その僕に狙撃じみた砲撃をしろってなんの冗談ですか!」
「俺の記憶が正しければ桜井二佐。君は俺が教えた中で一番の狙撃の才能があった。それを生かすために砲兵になったわけではないのか?」

 不快気に言葉を漏らす朱雀に俺は疑問を呈し挑発する……こいつは、俺の教え子の中で狙撃の才能があったはずだ。4年振りに再会してもその自信は備わっていないか……仕方ない。
「買い被らないでください。僕には――」
「俺は朱雀を信頼する。失敗したとしても朱雀の責任じゃない。任命した俺の責任だ。朱雀が気に止む必要はない……なあ、朱雀。君は隊の中で一番優しく面倒見がよかった。しかし、優しすぎるが故に訓練ではいつも下手糞を演じていた」

 俺は昔を思い出していた。教導時代、目の前に居るひよっこは、本人が自覚していたかどうかはわからないが、実力を隠すのが非常に上手かった。それ故に、本来持つべき大事な自信という土台を巧く作りきれなかったのかもしれない。もし仮にそうなら、ここで矯正するのも元教官としての役目……だよな、信康。 

ここまでお読み頂きありがとうございます! 

次回に続く

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