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臨界パワーモデル(5)

 臨界パワーモデルの本質に迫るため、先週の内容を受け、日本人選手のマラソン歴代上位者の記録を分析してみました。先日の東京マラソンの内容が反映されていないのが残念なところでしょうか。それはこんどやろうと思います。

日本の男子マラソン歴代上位選手を分析してみる

note用グラフ

 結果は上の表のとおりです。「臨界スピード」というのがこの表のミソでして、それぞれの選手の1,500mから10,000mの自己ベスト記録を元に計算したものです。

そもそも臨界スピードとは

 臨界スピードの意味は、前回までに説明した通り、理論上何時間でも走り続けられるペースで、その状態はMLSS(maximal lactate steady state)と呼ばれています。現実には、気象条件や、長時間走ることに伴う臨界スピードの下降、ペースの揺らぎによって、限界が来てしまいます。臨界スピードは、だいたい1時間くらい継続できるものと説明されたりします。

 従ってこのスピードで2時間近くかかるマラソンを走り切るのはそもそも不可能なのです。

マラソンの走速度は臨界スピードの95%

 という前提で上の表を見てみると、マラソンの平均スピードは、臨界スピードの95%前後にそろっていることが分かります。児玉選手と谷口選手は公開資料から1,500mと3,000mの記録がなく、そのためやや異なる結果が出ているようです。

 この表は、臨界スピードについて教えてくれた論文「The ‘Critical Power’ Concept: Applications to Sports Performance with a Focus on Intermittent High-Intensity Exercise」に掲載されていた世界の男子マラソンの上位記録にならって作成しました。本来、臨界スピードを求めるには、2分から20分継続できるベスト記録を使うのに対し、この論文は1,500mから15㎞を採用しています。それでいいのかという課題は残しつつ、上の表は、1,500mから10,000mの結果で算出しました。

マラソンのペース 臨界スピードから決められる?

 上の表から言えることは、臨界スピードが分かれば、マラソンの記録がだいたい予測できるということです。裏を返せば、1,500mから5,000mの記録を上げることは、マラソンの成績向上につながるかもということろでしょうか。

 次はできれば個人の臨界スピードを求める方法までいきたいところです。

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