ダンシングヒーローのお話
1980年代のソロアイドル歌手・荻野目洋子の「ダンシングヒーロー」という楽曲がありますね。デビュー当初はヒット曲に恵まれなかった彼女だが、デビュー2年目の1985年に同曲が初めてオリコンでトップ10入りし、最大のヒット曲となった。
1985年、ライジングプロダクションの平哲夫 社長がレコード会社・ビクターの制作担当から「荻野目ちゃんには合わないと思うけども、聴いてみてもらえますか」と言われ、デモテープ3曲を渡たされた。その中に入っていたうちの1曲が「ダンシング・ヒーロー」だった。平 社長はこの曲は売れると判断して次のシングルに決定した。
楽曲のタイトルは、80年代前半に「新御三家」の3人が20代後半になり、その後に続く10代の男性アイドルが不在していたので平 社長が赤坂でスカウトした高校2年生の男の子がいた。その子は週末、新宿のディスコでバイトしていたようで「ディスコで僕がダンスを踊ると、みんなマネするんですよ」と話していたらしく、その子が踊っている姿をイメージして「ダンシング・ヒーロー」と名付けた。ちなみにその男の子を男性ソロアイドルとしてデビューさせる予定もあったが諸事情によりデビューさせることが出来なかったという。
ダンシングヒーローといえばやっぱり振り付けが特徴的ですよね。イントロのステップは、振付を担当した三浦 亨がアメリカの女性歌手・マドンナの代表曲「Like a Virgin」のダンスを参考にしたものである。
後日、荻野目洋子も日本テレビで放送されていた「速報!歌の大辞テン」に出演した際に、「当時、マドンナが世界的に流行っていました。1985年に行われたMadonnaのコンサート「The Virgin Tour」でLike a Virginを踊っているときのステップを見て自分の楽曲の振り付けに取り入れました。」と明らかにした。当時は現在のK-POPのように日本のアイドルたちも海外の影響を受けていた時代であり、女性歌手はマドンナ、男性歌手はマイケル・ジャクソンをお手本にしていたと言っても良いでしょう。
また余談ではあるが、同じ80年代に活躍したおにゃん子クラブのメンバー出身の工藤静香の代表曲「嵐の素顔」も似たような例である。
まず楽曲のイントロはLady Lilyの「Get Out Of My Life」を使ったもので、イントロのダンスは、Michael JacksonのBillie Jeanから取ったものである。
そして一番有名な顔の横で手をLの字に動かす振り付け(通称:縦横ダンスまたはL字ダンス)は、マイケル・ジャクソンがSPEED DEMONのPVで踊っていた動きを取り入れたものである。荻野目洋子とは対照的に工藤静香はマイケル・ジャクソンのダンスを参考にした。女性歌手でマイケルのダンスをするのは珍しいかもしれませんね。
ダンシング・ヒーローは、1985年のヒット以来、盆踊りの曲として定着したり、「とんねるずのみなさんのおかげです」のコント「貧乏家の人々」で使われたり、お笑い芸人の平野ノラがネタの出囃子に使用したりした。
2017年には、大阪府立登美丘高等学校ダンス部がコンテスト用の組曲に用いたことにより再注目され、リバイバルヒットするなど、現在でも80年代を代表する音楽として認知されている。