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国内旅行市場においてウェルネスツーリズムが長期滞在につながる理由

 コロナ禍が日本国、全世界に与えた影響はご存じの通りで、特に移動を伴う観光業においては壊滅的な被害が起きました。
こうした中で、「新しい働き方」が提唱され、内閣府・観光庁・環境省などの中央省庁のワーケーション支援策が開始され、令和3年度に入りワーケーション支援策が増発され、ワーケーション自治体協議会に加盟する会員自治体数は203自治体(1道23県179市町村)にも及び、ワーケーション関連サービスを提供する事業者、ワーケーションを実施する企業は急速に増え、様々な取組みが増えてきました。
株式会社矢野経済研究所のレポートによると、2022年度のワーケーション市場規模は、909億円と予測されています。

奥飛騨温泉郷・温泉旅館での早朝ヨガの様子

 通常の観光旅行よりも長期滞在となるワーケーションでは、1つ1つの施設単位ではなく、地域全体としてのワーケーター受け入れの魅力づくりが極めて重要となり、例えば、地域の食材を使った気楽な定食屋さん、美味しいコーヒーと焼き立てのパンが食べられるカフェ、地元の人と各地から集まってくるワーケーターの人たちが心地良い距離感で気楽に飲みながらいつでもコミュニケーションがとれる素敵な「場」などの提供です。

 ワーケーションを積極的に行う人たちは、風光明媚な場所や有名な観光地、豪華な施設を求めているわけでは無く、彼らが欲しているのは、緩やかな紐帯と居心地の良いコミュニティーの中での非日常感であり、快適なサードプレースであると考えられます。こうした動きはミレニアル世代、ポストミレニアル世代を中心にグローバルな潮流として顕在化してきています。
しかし、我国での実際はワーケーションの制度を積極的に活用していく人たちへのマーケティングが不十分なままは、国家施策を活用してワーケーション施設の開設・誘致をしてみたが競争優位を獲得できていないワーケーション施設が乱立し、ワーケーションに行く側の社員の立場で見ると、「ワーケーションというが、施設の差別化はほぼ無く、どこに行くべきかが判断不能」という状態に突入しています。

石巻北上川領域・追波湾テラスのワーケーションスペース https://oppawan-terrace.jp/concept

 ウェルネス研究、ウェルネスツーリズム研究の第一人者である荒川 雅志氏(国立大学法人琉球大学 国際地域創造学部/観光科学研究科 教授・医学博士)はウェルネスツーリズムを「心と体の健康に気づく旅、地域の資源に触れ、新しい発見と自己開発ができる旅、原点回帰し、リフレッシュし、明日への活力を得る旅」と定義しています。
 ウィズ・アフターコロナの世界は新しい生き方、働き方、ライフスタイルが求められる中で、ウェルネスツーリズムは、地域(資源・人・コミュニティ)と直接結びつき、地域資源を「ウェルネス資源」という新しい価値として、地域が協働で生み出し、自走する雇用が発生し、提供するサービスの付加価値が高まり、生産性が向上。また、地域の1次、2次産業企業との連携により収益の域外移転を抑制する課題解決にも通じます。

 よって、ワーケーション事業を推進する自治体や現在のワーケーション施設が、地域資源を「ウェルネス資源」という新しい価値として付加させ、ワーケーションにウェルネスツーリズムを付加させる動きが加速すると予測されます。


well f.m. 乗鞍Lab 


 これにより、ワーケーション施設は、いわゆるフリーランスやデジタルノマド的な働き方ができる「イノベーター」「アーリーアダプター」層を中心にしたものから裾野が広がり、国内マーケットが拡がっていく中で、ワーケーションエリアとして居心地がよく魅力的な人が集まる地域として付加価値を高められる手段「ウェルネス―リズム」の導入により、レッドオーシャン化するワーケーション市場から脱却した「選ばれるエリア」となり、また、将来インバウンド客が戻ってきたときに外国人ワーケーターやグローバルデジタルノマドに人気の受入れ地域となる可能性にもつながっていきます。


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