知って得する「人材版伊藤レポート2.0」人材戦略×健康管理の新常識
経済産業省は、5月13日に「人材版伊藤レポート2.0」を公表しました。
伊藤レポートは、企業価値を高めて持続的成長を促すためためのさまざまな道が示された提言です。
その中でも「人材版」伊藤レポートは、いま最もホットな資本といえる「人」に着目したものです。
経営戦略というと、ごく一部のトップが行う決定事項のように思えるかもしれません。しかし、組織を構成する基本は人です。
人を大切にした働き方は、現場で業務に携わる従業員一人ひとりに関係する話。人材版伊藤レポートには、組織に関わるすべての人が働き、生活する中で実践していくべき大切なことがらが詰まっています。
人材版伊藤レポートが「2.0」にバージョンアップされ、これからの人材育成の新しいスタンダードが示されたといえるのです。
人材版伊藤レポートでは、取組のひとつとして健康管理に触れています。
大局の視点から理解し、健康管理での具体的な展開をイメージできるようになりましょう。
伊藤レポート/人材版伊藤レポートとは
デジタル・ICT技術の進展と感染症パンデミックによるコミュニケーションの激変、脱炭素化へのシフトなど、既存の価値が通用しない世の中、働くことの意味が問われています。
人材版伊藤レポートが、コロナ禍をはさんでどう変わったのか、何が変わらず重要とされているのかを簡単にみておきましょう。
人材版伊藤レポートとは
伊藤レポートは、経済産業省により2013年7月から取り組みが進められた「『持続的成長への競争力とインセンティブ ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」の最終報告書で、2014年8月に公開されました。
伊藤レポートは、企業の「稼ぐ力」を高め持続的な企業価値の向上を促す観点から課題や現状を整理し、企業と投資家が質の高い対話を目指すよう提言しています。
伊藤レポートの特徴は、具体的な達成目標として「ROE(自己資本利益率)8%」を掲げたところです。この数値に注目が集まって反響を呼び、企業統治(コーポレートガバナンス)のありかたに大きな影響を与えました。
3年後の2017年10月には、さらに論点整理された「伊藤レポート2.0」が公開され、同年度内には企業と投資家の対話による経営戦略や非財務情報などの開示・評価を行う際の「価値協創ガイダンス」も出されました。
そして、さらに3年後の2020年9月、こんどは企業の人的資本、つまり働く人にフォーカスした「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」が設立され、検討の成果として「人材版伊藤レポート」がとりまとめられたのです。
人材版伊藤レポートは、コロナ禍を経て2022年5月、「人材版伊藤レポート2.0」としてバージョンアップし、公開に至りました。
人材版伊藤レポート2.0で伝えたいこと
人材版伊藤レポート2.0では、経営戦略と人材戦略の連動を、先進的な取組を行う企業事例などをまじえながら、実践的に紹介します。
経営戦略と人材戦略の連動では、次の「3つの視点」が示されています。
経営戦略と連動しているか
目指すべきビジネスモデルや経営戦略と現時点での人材や人材戦略との間のギャップを把握できているか
人材戦略が実行されるプロセスの中で、組織や個人の行動変容を促し、企業文化として定着しているか
また、具体的に取り組む際には、次のような5つの共通事項が重要になるとしています。
動的ポートフォリオ:多様な個性が活躍する人材ポートフォリオの構築
知と経験のダイバーシティ&インクルージョン:対話につながる環境
リスキル・学び直し:目指すべき将来と現在のギャップを埋める
社員エンゲージメント:多様な個人が主体的・意欲的に取り組める社員
時間や場所にとらわれない生き方:コロナ禍でさらに明確になった
人材版伊藤レポート2.0では、この「3つの視点」と「5つの共通要素」の枠組みについて、具体化させるためのポイントを取り上げています。
健康管理の側面からみた人材資本の強化
健康管理は、「5つの共通要素」のひとつ、「社員エンゲージメント」を高めるための取組の中で紹介されています。
ここでは、法的に義務付けられている安全確保や健康への配慮を超えた健康経営の実践の重要性がうたわれています。
社員の健康維持や健康増進により、生産性や企業イメージが高まるだけでなく、組織の活性化や社員のエンゲージメントにもつながることから、企業と投資家との対話の中で重要な視点とされているのです。
鍵となる「Well-being」の考え方
人材版伊藤レポート2.0における健康管理の工夫のひとつとして重要視されているのが「Well-being」の視点です。
Well-beingとは
Well-being(ウェルビーイング)は、社会的な関わりを含めて心身ともに満たされた状態を指します。
WHO(世界保健機関)は、70年以上も前の1948年、WHO憲章の中で健康を定義しました。Well-beingはこの中にしっかりとうたわれています。
心と体だけでなく、社会的なつながりも健康の本質を構成するものであり、Well-beingが掲げる「満たされた状態」になくてはならないものです。
社員一人ひとりの働く意図や生きる上での価値観が異なるため、Well-beingは多義的になります。
他者から評価されることで得られる機能価値や、自分自身がつながりの中で心身ともに満たされることで得られる存在価値など、満たされる内容もそれぞれです。
人材版伊藤レポート2.0の事例
人材版伊藤レポート2.0のもうひとつ特徴は、具体的な「実践事例集」が付随したということでしょう。
Well-beingを明確にうたった事例として、ロート製薬の取組が挙げられています。
ロート製薬では、社員と会社が互いに自律した関係でともに成長できるよう、「人財マネジメント」を構築しています。
取組のポイントとして、社員と会社のパーパスの共有、年齢・性別・国籍などの属性を超えた多様な個を生かした組織づくり、多様なキャリア活用・社員と経営部門との対話によるつながりでの共成長などが示されています。
これからますます重要視されてくるWell-being。実践ポイントを先進事例から学び、職場での取組みのヒントにしていきましょう。
SDGs × Well-being の新視座
WellGoでは、CSA Japan Summit 2022 バーチャルセミナーにて、
「SDGs × 健康 WellGoが考える ”ウェルビーイング経営”とは」と題し、
講演を開催します。
大手企業の事例をご紹介しながら、社員と会社が共に生きる「Well-being」について解説します。ふるってご参加ください。