リモートワークの生産性が出社よりも劣るわけないやん
海外を含めて、リモートワークを実施していた企業が、どんどんと出社を求めるようになってきている。その理由は色々とあるのだろうが、「リモートワークの生産性が、出社時に比べて低いかも?」と考えた経営者が多かったんじゃないかな。
ちなみに米国のIT企業は、そこそこの広大な土地にどでかい建物を建てていたりして、社員が出社しようとリモートワークだろうと、その建物とそれに付随する維持費が変わることはない。それは固定費である。
交通費を支給していた会社は、その分だけコスト削減できたかもしれないけれど、その分をリモートワーク補助として出している会社もあるから、それほど大きな差があったのかどうかは不明。
一時的にせよリモートワークになっていた職業については「遠隔地でもできる仕事」である。そうでない仕事は、あんなに大変なコロナ禍においても、毎日出社していたのだよ。だから可能か不可能かと言えば、可能である。
なのにリモートワークではなく出社した方が生産性が上がると考える人は、経営者または経営陣、管理職などで、それ以外の実際に仕事をしている人にとっては、自宅の環境要因もあるだろうが、多くがリモートワークの方が生産性が上がるはずである。
その理由を述べたい。
経営者側からすると、社員が仕事時間だと認識しているものは「出勤してから退勤するまでの時間」である。いわゆる就業時間と呼ばれる時間帯に、社員がこなした仕事の成果を見ているのだ。
が、社員からすると、それは全く違うのである。実際には、下記のような、雑多なコスト(時間コストを含む)が発生している。
1、朝起きてから身支度にかかる時間(化粧含む)
2、通勤時間
3、ちんたらと無意味に過ごすランチ時の一時間
4、退勤時間
5、通勤や出勤のための被服費とそれを選ぶ時間
6、通勤用の服のクリーニング代とそれに要する時間
それを社員側に押し付けている(無料とカウントできる)から、生産性が高いと認識してしまうのである。
ざっくりと計算してみよう。
出社時のパフォーマンスが100とする。それを7時間の就業時間内に平均的に仕事をしたとすると、その時間あたりのパフォーマンスは、
100÷7≒14.3
くらいとする。
これが、「経営者から見えるパフォーマンス」である。
社員側から見た実際のパフォーマンスを計算してみよう。
身支度や通勤退勤、ランチ時間のうだうだを、低く見積もって一日2時間だとする。
100÷(7+2)≒11.1
である。これが「社員から見た仕事するために費やした時間で割った時間単のパフォーマンス」である。
でさ。
リモートワークの場合は、この「雑多な時間のすべてを自分のプライベート時間に割り振れる」ので、純粋な仕事時間は、まさに業務にあたっている時間だけである。
経営者や管理職から見ると、コミュニケーションに出社時よりも高いコストを払っている気がするみたいなので、それを加味して、実際の成果を出社時の1割減として計算してみると、
90÷7≒12.9
である。
つまり
P(パフォーマンス)を経営者側から見た場合、
出社時のP > リモートワーク時のP
社員から見た場合、
リモートワーク時のP > 出社時のP
となってしまう。
要するに
社員の通勤や身支度の時間を完全無視できるなら、出社させた方が生産性が高いと言えるが、社員からすると「投じた時間に対する生産性は、出社時の方が圧倒的に低くなる」ということが言える。
リモートワークの時には、仕事の始まる数分前まで、自分の時間として使える。そしてランチの時間もササっと済ませて仕事にとりかかれば、もっと早くにその日の仕事を終えることができる。
ミーティング時間と被らなければ、有給をとって病院に行く必要もなく、ささっと病院に行き、その日は、その中抜け時間分だけ長く仕事をして、でも残業代を請求せずにいれば、それは会社と社員のいずれにおいても、特に大きな問題ではない。
保育園のお迎えだって行ける。
体調がそれほど悪いわけではなくとも、お腹の具合が悪い日もある。出社するにはキツイから休みをとるけれど、リモートワークならば頻繁にトイレに行こうとも問題なく仕事ができる場合もある。
逆に出社時には、自分以外の人にかかってきた電話も、その人が席を外していたら自分が取らざるを得ず。自分の仕事の没頭している際に、横から話しかけられたら手を止めざるを得ない。出社で常にパフォーマンスが上がるわけでもないのだ。
そして口頭のコミュニケーションは、言ったの言わないの、いつ言ったの聞いてないのと色々とトラブルになりやすいが、チャットメッセージでのやり取りであれば、すべての証拠がタイムスタンプつきで残るのだ。
私の母は、フリーランサーとして在宅で出版社の仕事をしていたのだが、ある時期に社長に乞われて正社員として出社していた時期があった。
が、半年ほどでフリーランスに戻った。
理由は、通勤退勤の時間コストや、身支度やお弁当をつくるコストが無駄に感じ、そしてランチ時間のどうでもいいガールズトークが苦痛だったらしい。そして出来高制のフリーランスの時期よりも収入が大幅に下がり、良いところがなかったそうな。
そして最大のコストは「健康コスト」である。通勤での疲労、職場での受動喫煙等の不快な環境、噂話が聞こえてメンタルをやられるなど、いいことなしであった。
こういう諸々を経営者側は今までガン無視できたのだ。
ところで、社員側でも出社したい人はいる。
自宅の仕事環境が良くない
リモートワークになってエアコン使用が増えて電気代が上がったにも関わらず、会社から補助がない
仕事とプライベートのON/OFFがつけにくいタイプ
人と会いたい、もしくはクリエイティブ職などで人と会うことの効果を実感している
等々の理由があるとは思う。
そういう人のために、リモートワークを導入しているIT企業の多くは、フリーアドレス(席が固定されていない)オフィス環境を整え、かつオフィスを最小限に抑えて固定費を下げることに成功している。
全員をリモートワーク固定にしなくても、色々と柔軟性のある働き方が可能な時代に、経営者側が工夫することなしに(リモートワークにおける評価基準の設定や、管理システムの導入など)、「リモートワークにすると社員が怠けるから全員出社!」と叫ぶ会社を、若い人材が避けるようになるのも目前である。
出社時の個々人が負担するコストをガン無視する経営システムを、従業員が気づき始めたとも言える。それが人権問題に発展する未来もあり得る。
ちなみにグローバルに「そもそもオフィスすらない、全員リモート勤務」で大成功している企業があり、なんとそのノウハウもすでに公開されている。
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経営者の方、管理職の方、この本を読んで出直してこい!w
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