ある程度、許容する社会でありたい

 我が家は、田舎(地方の小都市)と呼ばれるところに位置していて、周囲に住んでいる人は、ほとんどいない。

周辺に小さな飲食店はポツポツあるので、ゴミ出し場には、いつもある程度のゴミの袋は出ている。

彼らはどうやら毎日営業しているわけでもなさそうなので、営業日の夜にゴミ出しをするらしく、それが数日間放置されていたりもする。

都会なら、すぐに問題視されるような状況だ。

それを市役所にクレームしに行ったとしたら、すぐに受け付けられると思うし、ごみ収集日を徹底するように、看板くらいは設置してもらえるのかも知れない。

でもね。逆の立場だったらと、考えるのだ。

もし一週間のうち数日しか営業しないお店の店長さんが、わざわざごみ収集日の朝に、車に乗ってやってきてゴミ出しすることのコストたるや。その合理性がどこにあるのか、とも思うのよ。

どうせクレームをつけるとしたら、我が家くらいしかないのだが、別に家の目の前というわけでもなく、特に迷惑しているわけでもないから、クレームをつけるまでもない。

 先日もゴミを出しに行ったら、車で乗りつけたおじいちゃんが、車のトランクからゴミを出して置いている場面に出くわした。何か言おうと思ったら言えるんだけど(殺人事件の証拠隠滅のためだったら嫌だなと思ったのだが)、ゴミ出しをうっかり忘れて他のエリアに持っていく事は、確かに誉められることではないけれど、行動として理解できなくはない。ちゃんと市の指定ゴミ袋に入れて、分別もされているようなので、私に被害が及ぶまでもないことに対して、怒るつもりもないので、特にアクションは取らない。

 もっと言えば。

 ごみ収集のお兄さん方が、めっちゃくちゃ許容度が高いのである。ゴミ出しをしたけれど、カラスがその袋を食いちぎって、中身が散らばっていることも多々ある。ゴミ回収後に残っていたら掃除しに行こうかなぁとぼんやり考えていて、午後にその場所に行くとキレイに回収されているのを見て驚いたのだ。あまりに驚いたので、ちょっと気にかけていたら、なんとゴミ収集のお兄さん方が、手袋をしているとは言え、手で拾って回収してくださっていたのだ!!!!

 すごくない?

 おかげさまで、私はそのエリアを掃除する必要性に迫られたことがない。そんな恩恵を受けながら、ちょっと他エリアからゴミ袋を置きに来たおじいさんを、数日前に出していた飲食店の店長さんを、糾弾することなんてできないよね。

 そのエリアにはそのエリアなりの、許容できる程度のルール違反の見逃しはあって良いし、そういうのが残っているのが田舎なのかなと思ったりもする。都会の集合住宅の場合は、ルール違反を見逃すと、どんどんとルールが形骸化してとんでもないことになる。そのため、明文化されたルールのところに厳格なラインを引いて、徹底的にそれを守らせるべく監視の目を光らせるというのは、当然のことかも知れない。

それでも、自分に実害のないことについては、ある程度許容していくことで、自分が逆の立場になった時にも許容してもらえるのかも、と思ったりする。

 厳格であることよりも、多少緩くてもスルスルと回る社会の方が、人間は生きやすいだろうなと思う。完璧な人間なんていないんだからね。

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