表情を読み取るよりも、大事なこと

 こんな記事を見つけた。

ネット上でも、常時マスクをつけている子供達が、相手の表情を読み取る訓練ができていないのは由々しき事態であるという論調を見かけるようになった。

海外出羽守だから思うのかもしれないけれど、私はこういう話がキライ。

相手の表情を読み取ってあげて、想像力を働かせて思いやってあげて、空気を読んで...........

日本の「お察し」文化が大嫌い。

誤解してほしくないのだけれど、人間として目の前の人を理解しようと務めること、思いやりを持って対応すること、相手が口に出せない何かを、表情その他から読み取ろうとする姿勢は他者に対する愛に他ならない。自分もそういう愛のある人間でありたいと切に思う。

でもね。

過去の日本の社会って、そういうのに長けた人たちが、それができない人たちをコミュ障といって嘲笑してきたのよね。空気読めないヤツと言って、排除してきたのよ。

さて。

彼らは相手の表情を正確に読み取れていると、どうやって確認したのかな?

相手の表情や言動から、自分が理解したことの答え合わせを毎度毎度やっていて、その正答率が9割を超えたりしているから自信満々なのかな?

そんなわけないやん。

読み取る側に愛があるなら、読み取らせる側にも愛があって、相手を気遣って本当のことを言わずに、そんな素振りは見せずにいる状況はたんまりあるわけよ。

それでも読み取れるの?読み取れないよね。結局わかってないのよ。

わかってないのにわかったと思ってる方が実害があると思うよ。自分は相手のことはわかっているから、相手が口に出していることはウソだと言ったりする人がいる。

いや、違うでしょ。

本人が言っている言葉を信じてあげてよ。

それが例えば赤の他人で、自分を騙そうとしている場合がある。そういう時に騙されないように、相手を見抜けるように訓練すべきと思う人がいるかもしれないけど、絶対に分からないから。

過去に詐欺罪で捕まった人やメディアに出ている人の顔を見続けていたけれど、私なら分かんない。優しそうな人なのになぁって思う。意地悪な顔をしていて、目をギラギラさせているような人なら、誰も騙されないのに騙されちゃうのは、詐欺する側が、言葉だけではなくて表情その他の非言語情報を利用しているから。そこでは防げないのだ。

騙されないようにするには、もう原理原則で通すしかない。絶対にハンコつかないとか、お金を出したら戻らないと思え、うまい話は向こうから絶対にやってこないとか、そういうことで防ぐしかない。

だから、相手に何かを伝えたいなら、言葉の限りを尽くさないといけないのよ。訓練するならそちらの方。そして言葉を発しない限り、相手に理解されることがないと早めに知った方がいい。

だからぶっちゃけ、表情なんて読み取れなくていいのよ。

だってそれは正解かどうか分からない。確認しようもない。確認もとれていないことを「自分は相手のことを理解している」と勝手に思い込むことの方が問題を複雑化させるのだよ。

ある女性が、自分の彼氏が、過去に言及したこともない自分の希望を叶えてくれなかったといって相手を批判したりするのも、「察することが善」「察してくれて当然」というわけのわからないカルチャーがあるからだよ。

だから、マスクで顔の表情が見えなくなっている今、個人的には日本はもっと良くなるんじゃないかと思うのだ。

相手に自分の表情を読み取らせるなんて、そんな負担を与えるなと思う。

それよりももっともっと心を砕くべきことは、

自分が伝えたいことを一所懸命に伝えようと努力して言語化すること

の方だよ。

小さい頃から、自分が言いたいことを言語化する訓練をすることの方が、相手の表情を読み取る訓練よりも1万倍大事なことだ。

そして、

目の前の人が口から出す言葉を、一所懸命に考えてようやく出した自分の言葉と同じように、尊重して受け取ってあげること

相手が辛いとかしんどいとか言っているのに、そんな顔してない、涙が出てないと言って否定するのはおかしいってこと。

「嬉しい」と言ったら嬉しいと、「悲しい」と言ったら悲しいと受け取ってあげることの方が大事だよ。喜び方が足りないとか、悲しそうに見えない、反省しているように見えないと言って否定するなら、そちらの方が愛が足りないと思うよ。

自分が言っている言葉を、優しい気持ちでそのまま受け取って理解してくれたら、そこに人間はしみじみと愛を感じるのだ。「自分は尊重されている」と信じられるのだ。

費やしたお金や時間の量ではなく。

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