欧米やアジア先進国から10年ほど遅れる日本のトレンド
日本でも、ようやく欧米のトップ大学に目を向けるような人が増えてきた。国内に進学せず、最初から欧米の大学を目指すのだ。そういう予備校も出てきたし、田舎の方でも、海外に進学するという選択肢を見かけるようになってきた。
日本から有名大学に進学する学生さんは、どういう学部に行くのかは分からないが、英語圏ではComputer ScienceやInformation Tecnologyの志願者が増えまくっており、かなりの競争激化になっている。理数系に強く、以前なら他の学部、例えば医学系や数学系に進んでいたような子たちが、こぞってコンピュータサイエンスや情報科学系に進学しようとしているのだ。
さらに、そこからキラキラのIT企業に高額で雇用されるような人は、博士号をとったような学生で、ビザも不要で優秀な自国民でさえ、就職時には競争が激しいのだ。
さて。
IT業界の本場では、キラキラ学歴よりも、その場で動くプロトタイプ(のプログラム)をサクッと書けるような本物のgeeky/techy(技術系オタク)が求められるようになって久しい。
MakeSchoolの創業者は、キラキラ学歴のMITを中退して、このプログラミングの専門学校を開業した。それが2012年だ。オープン当時には、社会にかなりのインパクトを与えた。皆が憧れる大学に行ったとしても、真に必要とされる技術は得られないのだということが、多くの人に理解されたのだ。
学費の支払いオプションはいくつか用意されているが、最も注目を集めたのは、学費の支払いが就職後まで猶予され、ある期間、給与の一定割合を支払うことで賄われるというシステムだった。米国のIT企業に就職できたなら、そんなものは安いもの。世界中から優秀な人材が集まり、今ではなかなかの難関校になってしまった。
その理由は、実際に現場で必要とされるスキルを徹底的に習得できるようなカリキュラムになっているからだ。決して情弱ビジネスでもなく、学位よりもスキルを欲する人だけが、難関を突破し、その入学切符を手にするのだ。そしてビシバシ鍛えられた上で卒業する。
つまり、ITのトップランナーである米国のど真ん中では、2012年の段階ですでに「学位より使える真のスキル」の価値が高まっており、と同時に高額報酬にタッチできる層は、トップ大学の関連学部で博士号も取得し、AI等の優秀な論文を連発しているような人であった。つまり、ふわっとIT系の大学を卒業できたら、高額報酬ウハウハなどという話では決してないのである。
でね。ここからが本題。
私は、オンライン教育についても、長年ウォッチしている。MITのopencousewareを始めとしたMOOC(Massive open online course)の開校ニュースが出ると、片っ端からチェックして、面白そうなプラットフォームにはアカウントを作成したりした。当時はMITに追随して、全米の教育機関が色々とコースを公開し、民間の専門サイトも出現した。
特にCourseraは、IT系の講義が多数開校され、有償のコースを卒業すると、大学から正式なCertificateが出るものも出てきた。その数は日々増えている。
こういう環境にある昨今、IT業界の人たちは皆知っているのだ。学ぶ意欲がある人は、自宅でこういうリソースを利用しながら学習できる環境がすでに存在しているということを。そういう中で、あえてそれを選択せず、高額な海外大学に進学して学位を取得しようとする、その思考がそもそも
ちゃうやろ
ダサダサやん
IT業界に向いてないんじゃね?
という雰囲気が漂うようになってきているのだ。
例えば、いま
「ハーバードのMBAに行こうと思う。学費はローンを組んだ。」
という人を見たら、「うっわー、見事にマーケット感覚がない......」と感じる、その感覚に似ている。
スキルならもっと安価に、ダイレクトに獲得できるツールが準備されていて、特にIT系人材なら、必要なスキルは教育されるのを待つのではなく、自らサクサクと習得していくような姿勢が求められているにも関わらず、
高額な欧米の学位さえ取得すれば、ラクラク就職できるっしょ
という現状認識を持つ人間に対して、現場は、かなり辛辣になってきているのである。
なのに!
今の日本は、欧米の有名大学に進学を希望する人が増え、しかも学部はIT系でも理系でもない文系学部だったりする。そして、それって欧米のトレンド以前に、他のアジア諸国のトレンドからも10年くらい遅れているわけなのだ。
今、私が高校生なら、まず実家から通える計算機工学や情報科学系の地元の大学に進学すると思う。偏差値の高低など関係ない。理系は、文系に比べると偏差値が低く見積もられがちだが、日本の理系は、基礎がしっかりしているため、大学での教育レベルは高い。どんな大学でも学べるのだ。博士レベルまでぶっちぎれるような人なら海外に行ってもペイするけど、そこまでじゃない人は、国内でもどこでも、十分に学べる環境はすでにあるのだ。
そして、夏休みなどにCourseraの講座を受講して、Certificateを積み上げておくのだ。もちろん履歴書に堂々と書けるし、その苦労話や学んだことを、面接であれこれと語れるはずである。
ということで、現在教育業界にいらっしゃるビジネスマンの皆さん。
学生向けに、Coursera等の英語圏のオンライン講座の、履修サポート事業を展開されるのはいかがでしょう。講座を完了できるようにタイムマネージメントを手伝い、課題のレポートの添削など、英語を外国語として学ぶ日本人の学生にとって、かゆいところに手が届くTUTORサービスを提供するのが良いと思う。
ちなみに、時間もお金も潤沢にあるという人は、実際に留学に行くのは非常に良いアイデアだ。日本とは異なる価値観と学び方を知るということは、自分というものを十分に拡大させる。が、そのためにそのコストを支払える人ばかりではないからね。
この本が、2003年当時の私のバイブルだよん。全ページ読んだし、今でも時々リファレンスとして使っている。
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