「Entô」と島まるごと図書館のコラボ!島まるごと読書プランを体験してきました。《前篇》
皆様、師走もいよいよ後半戦です。令和7年もいよいよ目前に迫ってまいりましたね!
今回、私は、地元・菱浦の港のすぐそばにあります「泊まれるジオパークの拠点施設『Entô』」にて冬季限定の宿泊体験をさせていただきました。その名も「島まるごと読書プラン」といいます。
冬季限定の魅力的なプラン
隠岐諸島全体は、今、観光シーズンとしてはいわゆるオフシーズン中で、冬季の隠岐-本土間の船便がもっとも少ない時期です。この、少し落ち着いた時期ならではの魅力的なプランが、現在3つあります。
①「海士町で巣ごもりプラン」
②「島まるごと読書プラン」
③「セルフウェルビーイングプラン 冬限定特典
– 文具店カキモリと贈る、未来の自分への手紙」
私は今回、②「島まるごと読書プラン」のモニターとして宿泊させていただきました。
「島まるごと読書プラン」では、この島の図書館の司書さんが、事前アンケートをもとに、5、6冊の本をセレクトしてくださいます。
この島には、島の中にたくさんの分館があり、どこでも本を借りたり返したりできる「島まるごと図書館」という取り組みが2007年から実施されています。島の中心部・海士町役場のほど近くにある「海士町中央図書館」は、島民のみならず旅行者の方の立ち寄りスポットとしておなじみで、島の文化的な拠点施設であり、島民による手作り感のあたたかみのある場所です。
(2024年6月に『武器としての土着思考: 僕たちが「資本の原理」から逃れて「移住との格闘」に希望を見出した理由』/東洋経済新報社 を上梓された青木真兵さんは、この場所を『いい意味で手垢のついた場所』とおっしゃっていました)
選書していただいた本と出会う
さて、12月17日(火)、いよいよ宿泊の日です。チェックインを済ませた後お部屋に案内されると、このようなかわいらしいバスケットが置かれていました。本の他にもいろいろなアイテムが入っております。
まず目をひく表紙の『がくこ』!!すごい表情です。
スティックに入ったハーブティーを眺めているだけで小一時間経ちそうな感じでした。綺麗。
早速読んでいきましょう
焼き菓子のセットは、少しずついただくことにしましょう。読む環境はバッチリです。
①「がくこ」著者:がくこ/辰巳出版
著者は「がくこ」さん。X(旧Twitter)アカウント@vloc_ol
洗練されたレイアウトというのではなく、ページをめくると、画素数のやや粗めな感じの、しかしインパクトの強い犬たちの表情が迫ってきます。写真に添えられているコメントも味わい深く、笑みがこぼれます。
もともとツイ廃の私、「がくこ」さんのアカウントをすぐ覗きに行きたくなりますが、今夜は本を読むための宿泊なので一旦は我慢です。
②「男の隠れ家特別編集 一度は読んでほしい 小さな出版社のおもしろい本2019」/三栄書房
こちらのページ(電子書籍版) から立ち読みできます↓
レースとクルマの電子雑誌書店 ASB電子雑誌書店
https://www.as-books.jp/books/info.php?no=OKS20181110
地方にある個性豊かな出版社さんが沢山。
私は歌人をしており、よく歌集を購入したり図書館で借りたりしているのですが、『新鋭短歌シリーズ』でおなじみの「書肆侃侃房」さんの記事がまず目に留まりました。福岡の出版社さんなんですね。
③「彼方の友へ」著者:伊吹有喜/実業之日本社
こちらは小説。日本の昭和時代(戦前、戦中、戦後)が舞台なのですが、現代小説のようにスッと入り込める文体でした。私は読み始めると一気に読み終えたいタイプなのですが、あまり駆け足で読み終えてしまうと楽しくないため、冒頭の部分だけ読んで、いったん本を休めました。
本を読むためのプランとはいえ、あまりガツガツしすぎないほうがいいと思いました。
④「精神科医が読み解く 名作の中の病」著者:岩波明/新潮社
こちらは、現役の臨床心理士である著者が古今東西の文学作品の登場人物たちを架空診断し、どんな病であったのか読み解くというもの。
私は今回の宿泊では読まずにおいた本。この夜は、自分がちょっと深く考え込みそうな感じがしたので、いったん、読まずに置いておきました。その日のコンディションによって、こういう積読もありかと思います。(元気が有り余っているときにあらためて図書館に借りに行こうと思います)
興味を惹かれた方はこちらの書評が詳しいです。
【書評】「病」の記録としての文学史(2013年3月号掲載)
⑤「四季の名言」著者:坪内稔典/平凡社新書
著者は著名な日本文学研究者であり俳人。なので、この本の中にある「四季」には、季語を集めた歳時記のような分類がされているのかと思いつつ読んだが、そうではなかった。
著者によるあとがきによると
「ところで、本書は四季に分類しているが、その分類に厳密な意味はない。読んでいただくための簡便な手がかり、というくらいのものだ。読者の方々が、私といっしょに言葉の世界を漂い、右に左に、あるいは上に下にと、さまざまに揺れてくださると著者としてはうれしい。」
とある。目次で引用された明言に目を通すだけで満足感が得られる。目に留まった名言のページから読んでいくのもいい。それぞれの名言が、見開き左右1ページに収まっているので、少しずつ読み進めるのにいい本です。
春
■春風や闘志いだきて丘に立つ 高濱虚子
■春は曙。やうやう白くなりゆく、山ぎはすこし明りて、紫だちたる雲の細
くたなびきたる。 清少納言
■友をえらばば書を読んで六分の侠気四分の熱 与謝野鉄幹
夏
■愁ひつつ岡にのぼれば花茨 与謝蕪村
■蛇 長すぎる。 ジュール・ルナール
■このなま身の人間なしにいかなる古典も伝統もありはしない。
岡本太郎
■馬を洗はば馬のたましひ冴ゆるまで/人恋はば人あやむるこころ
塚本邦雄
秋
■読書するとは、自分でものを考えずに、代わりに他人に考えてもらうこと
だ。
ショーペンハウアー
■五億年経ったら帰って来る 高橋新吉
■ベッドのなかで、自分が途方もない虫に変わっているのに気がついた。
フランツ・カフカ
■君があたり見つつを居らん 伊勢物語
冬
■冬よ/僕に来い、僕に来い/僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
高村光太郎
■こころよ/では いつておいで 八木重吉
■好きで描き続けている人のことは、誰かがどこかから見ていてくれるよう
な気がするのです。 やなせたかし
自分が、これ好きだな~と思った言葉を抜き出しただけで気持ちがスッキリしてきました。次回後編では、部屋の外に出てみようと思います。お楽しみに!ここまで読んでいただきありがとうございました!