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【大学の研究者へのリレーインタビュー】産学連携について思うこと(匿名)
【大学の研究者へのリレーインタビュー】では、様々な先生方の産学連携への想いや期待を伺います。第3回目は匿名ならば、という条件で、ある若手研究者の胸のうちを教えていただきました。(京都大学・鈴木)
1.産学連携に対してどんなイメージを持っていますか?
事業を動かすためには、資金面などで企業の力がある程度必要になってくるというのが事実だと思います。なので、企業と協力関係を構築して動けるようになっていくことは大事だと思います。
マイナスな部分としては、企業にとっては、市場があり利益を出せる見込みがあること、が最も重要なポイントだと思いますので、アカデミアの考え方とベクトルが異なり、理解しあえずに別の方向性に動いてしまう危険があるのではないかと思います。
2.これまでどのような産学連携をされてきましたか?
私自身は産学連携を行ってきていないのですが、所属研究室では企業とコラボしている方もいらっしゃいます。
3.産学連携を行っていない理由はありますか?
正直にいうと、そこまで自分の仕事を広げる余裕がなかったというのが一番の理由です。自分の研究でタスクをこなそうと精一杯になっているというところです。ただ、共同研究に対するモチベーションはあります。できるならやっぱりしてみたいですね。そのために、企業とアカデミア間の交渉がお互いの理解の上に成り立つように、そういうサポートがあると非常にありがたいのではないかと思います。
私はあるデバイスを用いた研究を行っていますので、そのデバイスを使ってどういうことができるのか、どのように発展していけるのは、などといったことを相談できる関係、こちらでは気づけないことを気づいて下さる関係を築ける企業さんと出会えると非常によいと思っています。
4.やはりアカデミアの先生は忙しい?
私自身は教授のように様々な業務を行うというような立場ではないのですが、それでも毎日時間がなく業務に追われています。自身の研究だけでなく教育や大学用務もありますし・・・次のポジションを考えると論文を出したり学会発表をしたりして、成果を出していくことが最優先となります。
アカデミアポジションを見据えた成果を出しつつ、さらに新しく産学連携のプロジェクトを始めるとなるとシンプルに時間がないかな、というのが率直な現状ですね。
5.産学連携に期待することは何ですか?
そうですね。研究費もそうですが、最終的には社会貢献という形につなげたい気持ちはあります。ある程度は研究成果を広く共有していかないと、いろんな人たちがそれを使っていけるようにならないと思うので、広げるというのは大事だと思っています。
6.どのような環境や支援が整っていたら産学連携に踏み出しやすいと思いますか?
研究に関して、トップダウンの傾向が強いのが大学という組織なので、研究室全体に産学連携に対して前向きな雰囲気がなければ、進めるのは難しいかもしれません。助教や講師などに、もう少し独自に動ける権限があればよいかなと思います。また、産学連携について、「どんな企業とどのような連携ができるのか」を学内で一緒に考える機会があって、自由に参加できるとよいと思います。そこから具体化するかどうかは次のステップですが、壁打ちのように産学連携の話を膨らませていけるような機会があればハードルも下がるのではないでしょうか。
KUMBL※のような組織(産学連携支援)についてどのように思われますか?
実はこれまでに利用したことがなくてわからない点も多いのですが、学内にそういった産学連携を管轄してくれる組織があるのはやっぱり良いことだと思います。学内組織である、という安心感もあります。守秘義務もありますので、自身の研究について深くお話をすることに抵抗感もないですね。また、KUMBLのような組織は学内の産学連携事例の情報をたくさんお持ちですよね。どのような研究者と企業が産学連携研究によって成果をあげたのか、学内の産学連携に関する先輩研究者達の事例を情報として共有・公表されていたら参考になると思います。普段、産学連携に関する情報ってなかなか入ってこないので、先輩研究者に直接話を聞ける場があったら非常にありがたいと思います。
※KUMBL(京都大学「医学領域」産学連携推進機構)は2002年に京都大学の医学研究科が立ち上げた産学連携支援などを行う組織で、2024年からは京都大学成長戦略本部と一部機能が統合されました。
https://www.kumbl.med.kyoto-u.ac.jp/