指導教員の類型と院生活
東大の研究室はまさに「王国」と言えるかもしれません。
王国ごとに財政(運営資金)・法律(ルール)・常識・文化も違います。
東大の大学院とは、まさしくいくつもの王国が存在している大陸みたいなものです。
王国にはすべてを決める王様が存在しています。すなわち指導教員です。
今回は、「王様」の類型があるとされているので、在学生の方は自分の指導教員はどうなのか、進学を希望している方には指導教員をどう見極めるべきなのか、これを判断する材料を提供したいと思います。
米・Duke大学で流行したThe nine types of principal investigators というコミックの指導教員の類型をご紹介します。
原文は英語だったので、日本語に直してみました。
では、現役東大院生である私の立場から上記類型を解説したいと思います。
最悪なケースから見てみましょう。
9位.サイコ
論文を執筆するとき、必ず必要なのが指導教員からの指導です。
このサイコ指導教員にあたったら最悪かもしれません。
質問もしづらいですし、そもそも研究室の雰囲気はいつも暗く・重い状態になると思います。
サイコの特徴としては、自分の「気分」が一番重要であり、感情がいつも剥き出しになっています。なので、ご機嫌取り/ ゴマすりといったことを学生はしなければいけません。
研究はおろか、うつ病になるといったリスクもあると思います。
研究者としての能力は秀でていても、人生の先輩としていかがなものか?といった疑問が絶えない場合、辛く暗い院生活になると思います。
研究室から逃げることが恥ではない代表的な事例だと思います。
8位.奴隷主
研究室の学生を奴隷ごとく実験の駒として扱う奴隷主系指導教員も存在するとされています。
特に化学の研究室に多く、コアタイムが10To10(午前10時から午後10時まで)の場合もざらにあるとされています。
長所としては片っ端から研究に関する知識が得られ、比較的に短時間で論文執筆が可能になることです。
しかし、強いられてやっていると知りたくてやっているとでは天と地の差程のモチベーションだと思います。精神的にも疲弊しやすい環境なので、自分の性格と相談してみましょう。
研究室から逃げることが恥ではない代表的な事例その2だと思います。
7位.村長
研究のモチベーションは、やはり先輩や指導教員がどんな世界を目指し、何を得てきたかによると思います。「自分も頑張れば、あんなライフスタイルが待っているんだ。」など臭いですが、夢を見させてくれる環境って結構重要だと思います。
村長の場合、夢はおろか、野望がないのでプロジェクトも稼働していない確率も高く、それによって研究資金がなく、機材・支援が全くない場合が多々あります。もし、あなたが何か目標があって進学をしたのであれば、物足りないと感じてしまう環境でしょう。
6位.のんびり屋
修士課程の学生は「研究者の卵」であり、論文執筆に必要な知識を培う時期だと考えています。
論文の基礎を片っ端から学んで、ようやくまともな論文が書けるといったイメージです。
指導教官がのんびり屋の場合、無関心なので学生への指導が二の次はおろか十の次みたいな事もありえます。研究自体に無関心な場合が多く、印税で生活をしているといった感じです。
こういった研究室の場合、准教授・助教がいるかもしれません。最悪の場合ですと、そういった講師陣もいない場合もあります。
怒りを買うかもしれませんがしつこく質問に行くことが重要だと思います。
5位.能弁家
資金調達が上手く、潤沢な資金を基に研究室を運営しています。アドバイスも聞こえのよいものをして、学生のモチベーションを上げてくれます。
もし、なんとなく進学するのであればこういった研究室が適しているのかもしれません。
しかし、マイナスな点にも注目すべきです。
研究成果の伝達(世間へのメッセージ等)が上手なだけで、研究成果としては微妙といった場合もありえます。
外面はキラキラしているけど、中身が無い可能性もあるので、注意しましょう。
4位.神
50人越えの大型研究室の王様に値すると思います。東大・人工知能と検索すれば必ずヒットするあの教授が思い浮かびますね。資金力は国内上位0.1%で、おそらくですが、億単位の資金を常時運用できる研究室だと思います。
しかし、院生として本当に指導を「神」からしてもらえるのかはまた別の話です。准教授がメインの指導を担っている可能性が非常に高いと思われます。プロジェクトが大規模な場合、人手もその分多く必要になりますし、研究内容を応用するといった場面がメインになってくるので、研究内容を進歩させる・させられるといった可能性は低いと考えられます。プロジェクトに参加しているものの、研究指導はなく放置、といった場合であればのんびり屋と実質あまり大差はないと考えられます。
ですが、「神」自ら指導をし、院生が立派に論文を執筆し、社会に進出すると「神」の人脈の輪の中に入れるので素晴らしい機会が待っていると考えられます。
2位.統制狂・科学オタク
修士課程の学生であれば、望ましい指導教員だと思います。
しつこく言ってくる細かいアドバイスには論文では読み取れない、経験からの暗黙知を伝授してくれているからです。
躓くポイントなども質問する前から指摘されるので、スムーズに研究をすすめることができるでしょう。
卒業後、院生活を振り返ってみると、感謝の気持ちでいっぱいになるはずです。
こういった指導教員の基であったら、自分がサボらない限り、必ず良い論文が書けると思います。
1位.ライジングスター
言うまでもありません。入ることが可能であれば絶対入りたい研究室です。
時代の要求に合った研究をしていて、資金力もあり、指導教員は若いパターンです。
人気殺到なので、研究室には実力者が多く、実力がないと淘汰されるリスクもありますが、学びの質・量は圧倒的だと考えられます。もし、自分の実力を世界水準にしたいならば絶対おすすめです。
今回は少し長いですが指導教員の類型に関して解説をしてみました。
次回はこの類型の特徴をもとに「ブラック研究室の見分け方」を解説したいと思います。
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