週G228-6

GRAPH東京オフィスの奥にある、 “傾いた棚”の正体。

GRAPH東京オフィスの奥にある一室。

これまで手がけたお仕事の商品や印刷物が並べられたアーカイブでもあり、主に一成さん所蔵の本が並べられている資料室です。

この棚、実は……傾いているんです。こんな風に。

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この傾きには、理由があるのです。


思考回路をたどるための、螺旋状のデザイン

この棚はもともと、「オフィスに、人が集う場所をつくりたい」という一成さんからの相談に対して、建築家・川添善行さんが「本棚のある空間」として提案してくださったものなのです。

もともとの本棚の最大の特徴は、螺旋状のデザインにあります。

一般的な本棚がフラットでカタログ的な配置であるのに対して、螺旋デザインは、より思考の内部に入り込むような感覚になれます。

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本は、棚ごとにジャンルで分けたり、古い本から順に並べるということはせず、“本棚自体が1冊の本”ととらえて、興味をもった順に、ジャンルや出版年にしばられることなく並んでいます。

そのため、ある本を読んだ次にどんな本を手に取ったのかがひと目でわかるようになっています。

一成さんの読書方法は、ある1冊を読んだ後、その本の中で気になった項目や未知の項目についての関連書籍を次に手に取る、という進め方。

たとえば、「人間とは何か」を探るために、ホモサピエンスの誕生以前の歴史を解説する本を読んだ後には、「縄文時代」や「土偶」についての本を読む。

かと思えば、ぐっと時間軸を進めて、「未来の人間はどうなるのか」という観点から、ロボットやコンピュータと人間との関わりについての最新の本を読むことも。

また、1冊の本で主張されている説に対して、あえて逆の論理を展開していたり、矛盾する説を唱える本を読むことも楽しみのひとつ。

仕事に必要な事柄がきっかけになることもあれば、ふらりと足を運んだ書店で、気になった本を片っ端から手に取ってめくってみて、おもしろいと感じたら迷わず購入することが多いそう。

そしてこうした思考のインプットが、デザインやブランディングの仕事におおいに活かされています。

だから、本棚はまさに一成さんの“頭の中”を再現したもの、といえるわけです。

さらに本棚は“二重螺旋”になっていて、本とともに、GRAPHが手がけてきたプロジェクトについても示すことで、まるで脳内を整理するかのように、読書歴と仕事をリンクさせることが可能になっています。

つまり、インプットからアウトプットまでの思考のプロセスを垣間見ることができるというわけです。

こうした考え方で作られた本棚は、2017年の「GRAPH展」(クリエイションギャラリーG8にて開催)でそのまま展示されました。

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▲オフィスを飛び出し、“思考のプロセス”をそのままギャラリーに移設した「GRAPH展」。


さて、GRAPH展を終えた後、本棚はオフィスの一室へと戻りました。

現在は一部を本棚として、また一部を資料の展示スペースとして利用しています。

今後また展覧会などがあったら、また本棚ごと出張して、みなさまのお目にかかることもあるかもしれませんね。


デザイナー必読のおすすめ本3選!

さて、ここからは、本棚の中から、おすすめ本3冊をご紹介します!

以前一成さんからおすすめしていただき、私も購入して読んだものです。

1冊目:『アインシュタインの逆オメガ』

小泉英明著/文藝春秋

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“脳の進化から教育を考える”というサブタイトルが示すように、進化論と教育学を結びつけ考察した1冊です。

表紙の絵に象徴的に表されているのは、アインシュタインの脳。

ピンク色で示されている「逆Ω(オメガ)」形の部分は、アインシュタインの脳の中でとくに発達していた部分なんだそうです。

ここは左手指をつかさどる領野にあたり、どうも幼い頃からバイオリンに親しんでいたアインシュタインが、指をたくさん動かしていたことが、知性の発達に深く関わっているのではないかと考えられる、というのです。

「義務教育のころになんとなく教わったな〜」と誰しもが覚えのある人類の進化の話、そして受精卵から胎児、新生児、乳児、幼児と成長していくにつれての詳しい発達の仕方も解説。

そうした進化や発達の法則にのっとって、“本物の早期教育とはなにか”を論じています。

「音楽と創造性には深い関係がある」、「手指の遊びは、なるべく早いうちに」など、たくさんの提言がなされています。人間の情動や行動をつかさどる「脳」について学んでみようかな、と思う方にはおすすめです。

図版も多いですし、全体ボリュームは少なめで、大事な部分だけがぎゅっと凝縮されています。入門書的な位置づけなので読みやすいと思います!!


2冊目:『あなたの脳のはなし 神経科学者が解き明かす意識の謎』

 デイヴィッド・イーグルマン著、大田直子訳/早川書房

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スタンフォード大学の神経科学者が書いた、脳科学の最新知見(2017年当時)が詰まった1冊です。

意識と行動に関する多くの“誤解”と解き明かしています。

たとえば、あなたが何かを手に取るという「行動」をしたとします。これって、「何かを取ろう」という意識が先にあり、意識によって行動がコントロールされている、と思いますよね?

しかしそれも誤解であると、著者はいいます。

カフェに座り、おしゃべりをしながらコーヒーカップを手に取り、一口飲む。このなんてことのない一連の動作、実は多くの“無意識“に支えられた、ものすごく難しい芸当なのです。

目でカップをとらえ、長年の経験からコーヒーというものについての予測をたて、胴体や腕の筋肉に“ちょうどいい加減”の動かし方を指令して、ちょうどいいスピードでちょうどいい高さまで持ってきて、唇がカップに触れると同時に、これまたちょうどいい量のコーヒーがちょうどよく流れるようにカップを傾ける……

こんなこと意識しながらコーヒーを飲む人はいません。ロボットがこの動作をするには、世界最速のスーパーコンピューターが何十台も必要になります。

人間の脳はすごいな、そしてとても不思議だな、ということが、豊富な事例とともにたくさん紹介されているので、さくさく読み進められると思います。


3冊目:『新・脳の地形図』 

リタ・カーター著、藤井留美訳、養老孟司監修/原書房

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この本は私も全体をまだ読めておりませんので、一部を読んだだけの感想に成ってしまいますが……

MRI ってご存知ですよね。医療現場で使われる、人間の体の中を俯瞰してみることができる装置です。ああいった技術が出てきたのは1990年前後のこと。

それまでは探索が不可能だと思われてきた世界を覗くことができるようになり、そうした画像をまるで地図のように使いながら、脳内の場所と、その働きについて解説したのが本書です。第1版は1990年代後半に発行されていますが、

そこから10年以上の時を経て、技術発展により“体の地図”がより詳細に明確に見られるようになってきたことから、2012年に新たな研究成果を付け加えて改訂されました。

右脳と左脳の本当の働き、違いって?

「見える」ってどういうメカニズムなの?

「言葉を理解する」ってどうやっているの?

記憶(過去)の仕組みと、想像(未来や、架空のものごと)は脳の同じ領域の仕事である

こんな感じの事柄に対して、教科書的に示してくれる本です。

人間を対象にしたコミュニケーションを仕事にしている人なら、おもしろく読み進めていけると思います。

以上、3冊のご紹介でした! 

今回は脳科学系の本ばかりになってしまいましたが・・・今後もオススメの本や資料について記事更新していきますね。


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