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二条城でいま、観光客に人気のお土産とは。
前回の記事に引き続き、GRAPHプロデュースの消しゴムのお話をもうひとつ。
今回は2020年2月に発売された、「二条城限定消しゴム」についてです。
担当したのは、GRAPH京都事務所でPMを務める稲垣 周さん。初の京都スタッフ登場ですね。
稲垣さんは長く海外に住んでいて、もともと料理人だったという異色の経歴の持ち主なんです。き、気になる……!
稲垣さんのストーリーは後日じっくりインタビューさせていただくとして、今回は「二条城の消しゴムができるまで」の話を伺ってきました。
大阪城限定消しゴムのお話はこちらからどうぞ!
繊細な金の箔押しで二条城の文化財を表現
大阪城消しゴムのお話にも出てきましたが、二条城限定消しゴムもまた、「平等院ミュージアムショップ」での消しゴムの販売実績がベースになって始まったプロジェクトです。
平等院ミュージアムショップで消しゴムを購入するメインのお客さまは、修学旅行で訪れる学生さんや訪日外国人観光客です。
そしてそれは平等院に限った話ではなく、観光名所が数多く連なる京都全体で見ても同じこと。
ならば、京都の他のスポットでも、求められるのではないか。
そんな思いから、コラボレーション先を探していたのだそう。
「京都にはコラボレーションの候補となる物件はたくさん存在しています。でも、どなたに話を持っていけばよいかということを探るのも、実際にお会いしてお話するのも、ハードルが高いところがあります。
GRAPHとしても、いろんな場所で消しゴムの企画をご提案して広げていきたいなと考えてはいましたが、どんな手法で行うのか、模索していました。
そんな中でご縁がつながったのが、京都市観光協会さんでした。協会が受託運営されている二条城大休憩所内の売店でならオリジナル消しゴムが実現できるのではないかと、プロジェクトが始まりました」
二条城限定消しゴムは、平等院同様、金の箔押しで、デザインは4パターンで展開しています。
▲左から、「重要文化財 唐門」、「国宝 二の丸御殿」、「重要文化財 障壁画 松鷹図」、「大政奉還の表明」。
二条城と聞いて、もっとも有名なのは、「1867年に、徳川幕府の終焉を告げる大政奉還が表明された場所」だということではないでしょうか。
しかし築城されたのはもっと古く、1603年のこと。徳川家康が征夷大将軍に任命された年なのです。
つまりは“江戸時代の幕開けから幕引きまでを見届けた城”、ということになるわけですね。
主に、江戸に住む将軍が上洛の際に滞在する宿として使われており、豪華絢爛な装飾もみどころ。完成したのは3代将軍・徳川家光の時代だったそうです。
消しゴムに使われたデザインモチーフは、こうした二条城の歴史や、貴重な文化財の中から選ばれました。
「建物や美術品など、文化的な価値が高いものが多く残っており、モチーフの候補は比較的豊富でした。いくつかご提案した中から、最終的に選ばれたのがこの4案です。いかにキャッチーなモチーフを引っ張ってくるか、というところで頭を悩ませました」
まず外せなかったのは、国宝でもある二の丸御殿。
江戸城、大阪城、名古屋城にかつてあった御殿が消失してしまった現在、国内の城郭に残る唯一の御殿群として、大変貴重な建物です。国宝にも指定されています。
そして、二の丸御殿の正門にあたる唐門。
国内最大級の唐門として有名。豪華な唐破風や、極彩色でいろどられた鮮やかな装飾はじっくり見てみていたもの。
消しゴムのスリーブでは、唐門の装飾を金箔のみで表現するわけですから、どのように版のデータをつくるか、かなり細かいところまで調整が必要とされます。まるで彫刻のような繊細な技術にぜひ注目してください。
さらに、これまた重要文化財の障壁画、「松鷹図」(まつたかず)。
二の丸御殿だけで、残されている障壁画はなんと約3600面もあるそう。松鷹図は、大広間 四の間に描かれている絵画。幕府の御用絵師であった狩野派の狩野探幽が一門総出で制作したものです(松鷹図の制作者については、狩野山楽だという説があります)。
大胆に描かれた松の巨木と、勇壮な鷹。
松は常緑樹であることから、長寿や子孫繁栄を象徴するとされている縁起のいいモチーフ。鷹は、鷹狩りに用いられることや、誇り高く有能な様子から、武家に好まれるモチーフだったようです。
▲「松鷹図」。二条城ホームページよりダウンロード可能な、「二条城デジタルパンフレット」より
「松鷹図」の全体像はこのようなものですが、消しゴムのスリーブでは鷹を中心に象徴的な部分を切り取って表現しました。
それから、大政奉還の表明。
1867年の大政奉還は、江戸幕府が政権を朝廷に返上することを申し出て、それを朝廷が許可したもの。
15代将軍・徳川慶喜は、二条城の二の丸御殿大広間に、在京していた40の藩の重臣を集めて意見を聞きました。この消しゴムはまさにその場面をデザインしたものです。なので、奥にいる方が将軍です。
「モチーフ選びはいろいろ悩みましたが、大政奉還は絶対にやりたいねと、デザインを担当した一成さんとも最初から話をしていました。
大政奉還の場面というと、一般的には豪華絢爛な装飾が施された二の丸御殿の大広間に、将軍と重臣たちが並んでいる様子をイメージします。でも箔押しでの表現ですから、その空間すべてを表すことはできません。
結果的に、人物だけを取り出して、表現することになりました。僕も一番気に入っているデザインです」
販売用のパッケージは、黒地に、英語メインの商品名及びコピーを入れました。
「外国人観光客の比率も高いことから、英語表記がメインとなるように設計しました。
ちなみに、消字率を表す「Erasure rates」は、造語なんです。
長く海外にいたこともあって僕も英語のニュアンスがわかることと、現地の友人知人も多いのでチェックしてもらって、言葉をつくりました」
長くイギリスに在住していたという、PM稲垣さんのバックグラウンドが活かされていますね。
このようにして完成した二条城限定消しゴム。二条城内、大休憩所売店にて販売中です!
※現在、新型コロナウイルスの感染防止の観点から、二条城の二の丸御殿の観覧は休止されています(2020/3/16時点)。二の丸御殿以外は通常どおり観覧可能ですが、今後状況が変わる可能性もありますので、お出かけの際は公式HPにて最新情報をご確認ください。
そして京都に関連して、もうひとつお知らせです!!
GRAPH京都事務所にて、「グラフのお店」がひっそりオープンしています。
初の実店舗です。GRAPHが手がけた商品を中心に、オリジナルアイテムを販売中。ここでしか売っていないレアものもあります!
しばらくは不定期での営業となり、予定はTwitterでお知らせしています。近隣の方々、そして京都へお出かけになる方々、どうぞお立ち寄りください。
「グラフのお店」はじめます。 pic.twitter.com/wzARPQDXaM
— グラフのお店 (@GRAPH_no_omise) March 11, 2020
<インフォメーション>
グラフのお店
<実店舗>京都市花園京都府京都市右京区花園寺ノ前町53
<オンラインショップ>graph-oms.stores.jp
では、また次回の『週刊GRAPH』にてお会いいたしましょう!