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【後悔のある人へ】朗報!過去を変えられる方法が発見されました! - 『マチネの終わりに(平野啓一郎)』を読んで

今日紹介する本『マチネの終わりに』平野啓一郎 著

2019/11/06作成 2019/11/10最終更新

今日はここ最近読んだ中で断トツで面白かった作品を紹介します。

皆さんには後悔はありますか?
「あの時こうしていれば…」「あの瞬間がなければ…」誰にだって変えたい過去や消したい過去があると思います。
今日は『マチネの終わりに』で最も主要なテーマのひとつになっている「過去との付き合い方」について考えていきます。

本作について別テーマでもう1本書いてます。
『【意見求む】脇役の人生ってどう思いますか?』
↑をタップで記事に飛びます。こちらも是非。

1.前置き

「悪いね。早くから来てもらっちゃって」
「ほんとだよ。まだどこも空いてないっての」
「すまんすまん。この興奮を一緒に味わってから、遊びに行きたくてさ」
「どうせカラオケだろ。で、発表何時から?」
「9時から。もう少しだから飯でも食って待とうぜ?」
「落ち着いてんな。ま、あんだけ勉強してたもんな」
「まぁね〜。で、何食べるよ?モス?」



2014年の3月。この日は僕の大学入試の合格発表の日だった。
受験したのは僕の学力よりも少し上の大学。なんとなく進路を意識した時からずっと行きたいと思っていた。
部活動の引退後に通い始めた予備校の授業はハイレベルだが分かりやすく、着実に成績を上げ、入試に臨めた。
試験の手応えは十分で、その日は友達と合格発表を見て、開放感に浸りながら遊ぶ予定だった。
…それでも、合格者一覧の中に、僕の番号はなかった。
その日は友達にお詫びして、そのまま解散。
あの時ほど、過去に戻ってやり直したいと思ったことはない。

どぉーもぉー!だいきでぇーす!
最初から暗い話してごめんなさい。

皆さんは「過去を変えたい」「過去を無かった事にしたい」と思ったことはありますか?
あの時こうしていれば、あの瞬間がなければ…受験に失敗しなかったかも, 仕事で成果を出していたかも, もっと充実した海外旅行にできたかも, 友達や恋人と不仲にならなかったかも…。皆さんも同じように思った経験があるでしょう。

ドラえもんが来てくれたらなぁ…と何度思ったことか。もしもタイムマシンがあったら…と考えると夢が膨らみますね。

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僕は「脂肪細胞の数は3歳までに決まる」という研究結果を見て以来、タイムマシンが手に入ったら真っ先に赤ん坊の僕に会いにいって、ウィダー・イン・ゼリーとサプリメントだけで育てると決めています。

それでも『ドラえもん』によるとタイムマシンができるまでは少なくとも80年かかりそうです。たぶん僕らは死んでます。

そんな僕らに朗報です!過去を変えられる方法が発見されました!
今日はそれが載っている本を紹介します。

2.マチネの終わりに

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たった三度出会った人が、誰よりも深く愛した人だった——

天才クラシックギタリスト・蒔野聡史と、国際ジャーナリスト・小峰洋子。四十代という“人生の暗い森”を前に出会った二人の切なすぎる恋の行方を軸に、芸術と生活、父と娘、グローバリズム、生と死などのテーマが重層的に描かれる。いつまでも作品世界に浸っていたいと思わずにはいられないロングセラー恋愛小説!

最近読んだ中では断トツで面白かった。アメトーークの読書芸人で又吉先生も絶賛していました。
切なくも美しい大人な恋愛小説です。

先週から映画も上映されています。

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主演は福山雅治と石田ゆり子。最高かよ。

今日は作中を通して描かれる、本作で最も主要なテーマのひとつについてお話しします。

3.未来は常に過去を変えてくれる

「祖母は、転んだ時に、石庭で頭を打ってしまったんです。これくらいの天然石で、わたしは子供の頃、よくそれをテーブルに見立てて、いとことままごとをして遊んでいました。その石が、まさか将来、祖母の命を奪ってしまうなんて。…」

蒔野聡史と小峰洋子の出会いのシーン。
そこで洋子は亡くなった祖母の話をします。

周りは「仕方ないことだよ」「自分を責めないで」と慰めますが、逆に戸惑ってしまいます。
わたしが話したかったのは、そう言うことではない、と。

そこに蒔野がやってきます。

「洋子さんは、記憶のことを言ってるんじゃないかな。
お祖母様が、その石で亡くなってしまったんだから、子供の頃の石の記憶だって、もうそのままじゃないでしょう? どうしても、頭の中では同じひとつの石になってしまう。そうすると、思い出すと辛いよ、やっぱり。」

そして、こう続けます。

「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてくれるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい新鮮で、感じやすいものじゃないですか?」

と。
確かに、少しのきっかけで過去の捉え方って変わりますよね。
結末を知ってから、見方が変わった物語があったり。
あんなに嫌だった部活の練習が、試合で勝った後には「意外と悪くなかったな」と思えたり。
恋人が喧嘩した途端に「そう言えばアナタのココもココもココも嫌だった!」と後になって怒涛の様に言ってきたり。

僕たちが思っているよりずっと、過去は変わりやすいものなのかもしれません。
それでは、過去をより良くするために、僕たちはどうすれば良いのでしょうか。
その答えは、現代における最も優れたリーダーの1人である彼が教えてくれています。

4.点と点は後から振り返って初めて繋げれられる

スティーブ・ジョブズはスタンフォード大学卒業式の式辞でこうスピーチしました。

(↑Ryu Tricks りゅートリックス がシェアしてくれて知りました。時間がある時に是非見てみて。本当に素晴らしいスピーチです)

私は経済難で大学をドロップアウトしましたが、その後も大学に居座り続けました。
興味のない必修科目に出る必要もなく、純粋に興味のある学問に集中できたからです。
私は当時、国内最高水準だったカリグラフィの講義を受講しました。
もちろん当時は、その知識が将来役に立つとは思っていませんでした。
しかし、その10年後、マッキントッシュを開発する時に、当時のことが蘇ってきたのです。
もし私が、大学であの講義にもぐっていなかったら、マックには複数フォントも字間調整フォントも入っていなかったことでしょう。

マッキントッシュは私の最高の作品でした。
しかし、そのマッキントッシュを発表した1年後、私は会社をクビになってしまいます。
自分の全てをかけて打ち込んできたものを奪われて、私はボロボロになりました。
それでも、私はまだ、この仕事を愛していたのです。だからもう一度やり直してみようと決めました。
後から思い返すと、アップルから追い出されたのは最良の出来事でした。再び身軽な挑戦者になることができたのですから。
その時、私は人生で最もクリエイティブな時期を迎え、ピクサーを作りました。
後にピクサーは最も成功したアニメーション・スタジオとなり、アップルに買収される形で、私は古巣に戻って来ました。
そして今やピクサーで培った技術は、アップルの基幹事業を支えています。



点と点は後から振り返って初めて繋げられるものです。したがってあなた方は、点と点が将来どこかで繋がると信じて行動しなければなりません。

スティーブ・ジョブズは経済難で大学を退学せざるを得ませんでした。自らが立ち上げたAppleを、追い出されたりもしました。
それでも、彼は「それは、私の人生には必要な出来事だった」と語っています。
より良い未来を目指し、行動し続けたからこそ、過去を肯定的に受け止められる様になったのです。

残念ながら、過去に起こった出来事は変えられません。
それでも過去の持つ意味は、これから先どう生きるか次第で、いくらでも変えることができます。

失敗したら、それをバネにして成長すればいい。
積み上げたものを失ったら、またいちから挑戦すればいい。
友人や恋人と喧嘩しても、仲直りすればいい。
より良い未来を目指し、常にアップデートを続けていれば、いつか振り返ったときに「あの瞬間があったから、今の僕が、僕たちがいるんだ」と思えるはずです。

先日の学祭で後輩が叫んでいました。
「俺は人生を何度繰り返そうが、この大学に来る。それだけ、ここは素晴らしい大学だ」、と。

(↑大学の王を決める学祭の名物企画。バカバカしい事にもアツくなれるのが、この大学の良いところ)

僕もそうです。何度生まれ変わっても、僕は同じ大学に入ると思います。
僕は大学で7つの団体に所属しました。たくさんの友人に囲まれて、大学生活を謳歌しました。
あの時志望校に落ちて、ハングリー精神を持ったまま母校に入学したことは、僕の人生に必要なことだったのです。



誰にだって後悔はあります。その辛い過去を憎んだり、見ないフリをすることもできます。
でも、過去は案外簡単に変えられるものなのです。
より良い未来を目指して行動を続けた先で、過去はきっとプラスの意味を持って、僕らの今と繋がってくれる。
僕らの人生に無駄なことなんてない。過去の後悔も、悩んでいる今も、きっと未来の糧になる。
だから迷わず進みなさいとスティーブ・ジョブズは言いました。

よかった。
つまり僕がモンストに数万円課金した過去も、いつか必要だったと思える日が来るってことですよね。
…来ますかね?笑


『【意見求む】脇役の人生ってどう思いますか?』へ続く。

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今日紹介した本

『マチネの終わりに』

平野啓一郎 著
2019年 文春文庫より
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