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【意見求む】脇役の人生ってどう思いますか? - 『マチネの終わりに(平野啓一郎)』を読んで

今日紹介する本『マチネの終わりに』平野啓一郎 著

2019/11/06作成 2019/11/10最終更新

皆さんは「脇役の人生」ってどう思いますか?
少なくとも僕は、脇役の人生なんて送りたくありません。
なんだか地味だし、報われなさそう。
でも、この物語には誇らしげに脇役の人生を選ぶ人がいます。
「どうして誇らしげなの?」「本当にそれで幸せなの?」
僕にとって新鮮な人生観で、まだ自分なりの答えも用意できていません。
今日は一緒に、考えていただければと思います。

本の詳しい紹介は『【後悔のある人へ】朗報!過去を変えられる方法が発見されました!』へ。
タイトルをタップで記事に飛べます。

1.前置き

あたたかな液体が身体を濡らす。べったりとしていて…赤い。
それが血だと気づいた瞬間、2人の仲間の倒れる音が聞こえた。
なぜだ?爆弾を仕掛け、仲間を連れ出し、勝利を確信していたのに。
ついさっきまで共に勝利を喜んだあいつらは、もはやただの肉塊となり海へ沈んでいく。
なんて速さだ。たった1度の交錯でやつは2人を葬った。そしてもうすぐ俺も…。
俺の大剣では、蝶のように舞うやつを捉えることはできない。だけど犬死にはごめんだ。ここは差し違えてでも、やつに一太刀浴びせてやる。
初めて感じる死の恐怖。それをかき消すように、相手への憎悪を燃やす。
「ちくしょぉぉぉおぉぉおおおお!」
自慢の大剣を振りかぶった所で、俺の意識は途絶える。



あとは、頼みます。我らの…キャプテン・フッ…ク… 。

だいき6歳、幼稚園のお遊戯会『ピーター・パン』での記憶。

見事なやられっぷり。見事な脇役。
どうも、だいきです。

皆さんは脇役にどんなイメージを持ちますか?
目立たない、主役の引立て役…そんなイメージだと思います。

試しに「脇役 俳優」で調べてみました。

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うーむ。パッとしない。
人気者もいますが個性派な顔ぶれです。
この並びにいると、右下の高橋一生ですらバナナマンの日村に見えてくるほど画面に華がありません。

僕はどうしても「脇役=主役になれなかった人」だと思ってしまうのです。
確かに、脇役でも名優はたくさんいます。それでも、こう思ってしまうのです。
「果たして、この人たちも最初から脇役になりたかったのだろうか?みんな主役になりたかったんじゃないの?」と。

そんな僕の目の前に、自ら脇役の人生を選択する人が現れます。彼女の人生観は僕に衝撃を与えました。

2. 私はこの人が主役の人生の“名脇役”になりたいって、心からそう思ったの

『マチネの終わりに』の一部分。
世界的ギタリストである蒔野をマネージャーとして支える三谷早苗のセリフが、僕の心にずっと残っています。

みんな、自分の人生の主役になりたいって考える。それで、苦しんでいる。自分もずっとそうだったけど、今はもう違う。蒔野さんの担当になった時、私はこの人が主役の人生の“名脇役”になりたいって、心からそう思ったの。
どんなに想像してみても、私は自分が主演を務める人生には、ドキドキしない。
三谷早苗の伝記映画なんて、誰が見に行きます?でも、蒔野さんの伝記なら見たいでしょう?そこには、三谷早苗っていう登場人物は欠かせないんです。それって、凄くないですか?
蒔野さんが主演を務める人生に、ずっと、すごく重要な脇役としてキャスティングされ続けるなら、私の人生はきっと充実したものになる。考えただけでも胸が踊る。だから、蒔野さんのためなら何だってできる。

うわぁ…。
ここを読んだ時、ぶん殴られた気持ちになりました。
三谷早苗の誇らしげな顔が浮かんできて…。
なんか…すごく…敗北感を覚えました。
「あぁ、俺はずっと主役になりたかったんだ。そして、主役になれない現実との間で、ずっと苦しんでたんだ…」と気付いてしまった。

僕は小さな頃から目立つのが好きでした。
学級委員になったり、学園祭でダンスを踊ったり…。人前で何かをして、注目されるのが大好きでした。

それが社会人になって、誰にでもできそうな仕事を歯車のようにこなす日々を送って、すごく焦っていたような気がします。
noteを書き始めたのも「会社から離れて、自分の名前で何かをしたい」と思ったからです。

僕は主役になりたい。
自分の名前を世界に響かせて、誰もが羨む成功を収めたい。
…夢みがちな事を言っていますが、単純に言うと、僕の主役願望はここに行き着きます。
でもそれって、やっぱりすごく難しい。

3.主役になるって難しい

問題です。皆さんはこの人が誰だか分かりますか?

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違います。インドカレー屋のオーナーではありません。彼はサンダー・ピチャイ、現GoogleのCEOです。Google Chromeを開発し、GmailやGoogle Mapsなどのコア事業を監督しためちゃくちゃすごい人です。
僕は全然知りませんでした。友人たちに聞いても誰も知りません。
Googleを使わない人はいないはずなのに、誰がそれを運営しているのか把握していないのです。

それでは、次の問題に行きます。
この人だーれだ?

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違います。カーネル・サンダースではありません。
実はこの人、ジョン・ウィリアムズと言って、E.T.やスターウォーズ, ハリーポッターの映画のBGMを作曲した超すごい人です。
しかし、カーネル・サンダースにしか見えません。

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(↑絶対あだ名ケンタッキー)

曲は誰もが知っているのに、作曲した彼を誰も知りません。

一方で、誰もが知ってるビジネスマンと言えば、ビル・ゲイツや孫正義など、起業家を思い浮かべるのではないですか?
シネマ界での著名人と言えば、スティーブン・スピルバーグや宮崎駿など、映画監督の名前が浮かぶはずです。
彼らは「物事をゼロから始め、成功まで導いた人たち」
主役に求められる資質とは、そこにあるのかもしれません。

え?それって、めちゃくちゃ難しくない?

では、限られた人しか主役になれない世知辛い世の中で、何を希望にして生きていけば良のでしょうか?

4.脇役になるのも、また難しい

果てしない旅路の果てに「選ばれる者」とは誰?
たとえ僕じゃなくたって それでもまだ走ってゆく 走ってゆくよ
降り注ぐ日差しがあって だからこそ日陰もあって
その全てが意味を持って 互いを讃えているのなら
もうどんな場所にいても 光を感じれるよ

Mr.Children 『GIFT』

人は誰しも、誰かの人生の脇役であって、自分の人生の主役である。

でも、僕はそんな綺麗事で妥協するつもりなんてありませんでした。
誰にとっても主役と思われるような人生、歩みたいじゃないですか?
でも、それってほとんど不可能なんですね。

じゃあ、誰もが認める主役にはなれない世の中で、どうしてみんな生きられるのでしょうか?

そのヒントは幼稚園時代の僕にありました。
どうして、目立ちたがり屋の僕が脇役である海賊を選んだのか?

…でかい剣を持ちたかったからでした。

「ピーター・パンは短剣だし、フック船長は手がフックなんだよな。それよりも大剣を振り回せる海賊役がいい。出番はちょっと少ないけど、それで満足だ」、そう思ったのでした。いかにも少年らしい。
自分の好きなものの為なら、主役脇役は関係なかったのです。

三谷早苗は「自分はこの人の脇役でもいい」と思える人に出会った。だから、あんなに輝いて見えました。

自分の好きなもの、憧れの誰かにこの身を捧げる。それだけで、その人生は素晴らしい。他の人生と比べる必要もないのです。

僕はまだ、全てを捧げられるものに出会っていないのかもしれません。「脇役でもいい」と思えるほどの誰かに、巡り会っていないのかもしれません。

脇役になるのも、脇役に徹するのも、また難しい

それでもやっぱり、自分の名前で何かを成し遂げたいと思っちゃってます。「主役の人生」への憧れが、消えることはありません。

…難しい。

そこで皆さんに、もう一度質問です。
「脇役の人生」ってどう思いますか?
この本を読んで、僕と一緒に考えてみませんか?

【後悔のある人へ】朗報!過去を変えられる方法が発見されました!』に戻る。

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今日紹介した本

『マチネの終わりに』

平野啓一郎 著
2019年 文春文庫より
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