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変わるEUの中国観 仏日・欧日はもっと手を組める|【特集】「一帯一路」大解剖 知れば知るほど日本はチャンス[PART-9]

マチュー・デュシャテル(モンテーニュ研究所 アジアプログラム・ディレクター)

一帯一路への対抗策として、フランスは日本などインド太平洋の国々との協力を模索している。安全保障だけではなくインフラ開発においても、協力の余地はある。

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EUは中国に対する警戒感を強め、フランスはインド太平洋への関与を模索している(FRANCOIS MORI/REUTERS/AFLO)

 欧州連合(EU)と中国の相互接続(コネクティビティ)は現在、新型コロナウイルス感染症により大きな打撃を受けている。米調査会社ロジウム・グループによると、2019年に134億㌦だった中国による欧州への直接投資は、20年には44%減少して75億㌦まで落ち込んだ。では、今後の欧中関係はどうなるのだろうか。

イタリアとフランスの一帯一路への対照的な反応

 19年には、EUと中国間で相互接続に関連する外交活動がピークを迎えた。3月には習近平国家主席がイタリアを訪問し、イタリア野党や与党内部からの強い批判をよそに、「一帯一路」構想に基づく覚書を交わした。だが、習氏が次の訪問先であるパリに到着すると、彼を出迎えたのはフランス政府の懐疑的な態度だった。フランスは、中国との経済関係に具体的な効果を及ぼすとは思えない一帯一路に対して、形式的に署名をする気はなかった。

 フランスのこの懐疑的な見方は、かなり根深いものだった。マクロン大統領は18年に初めて中国を公式訪問した際、習氏の一帯一路を地政学的に解釈し、新しいシルクロードが「新たな一国支配(ヘゲモニー)」への道となり、沿線諸国を中国に隷属する国家に変えてしまうリスクがあると主張した。

 イタリアとフランスが見せたこの対照的な反応は、一帯一路についての欧州内での大きな認識の違いを表している。これまで東欧や南欧など15のEU加盟国が、協力枠組みに関して中国と覚書を交わしている。実際には、こうした協定はほとんど意味をもたない。中国指導部は覚書の調印を高く評価しているが、その見返りとして実際にインフラ整備プロジェクトがもたらされるとは限らない。

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