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<連載>国内外事例から読み解く、2023年オムニチャネル戦略論②

 前回の振り返り

  • 本レポートはここ数年間の国内外の様々な事例研究を通じ、今後のオムニチャネル戦略像を考察するものです。

  • オムニチャネル戦略の紐解き方として、まずは「今後の実店舗の存在価値とはどのようなものか」について触れ、その後そうした店舗戦略を支えつつも「小売サービス全体としての価値創造を行うためのECやWEBのあり方とは何か」という順で話を進めていきます。

  • 国内外事例から店舗戦略を読み解くと、そこには大きく4つの価値化の方向性が存在しています。

    • ニューノーマルSHOP

    • サービスSHOP

    • エクスペリエンスSHOP

    • リアルEC SHOP

  • これらの店舗は、単にカスタマージャーニーの終着地点としての店舗という範囲を超え、ネットと店舗が融合した販売を含めた新たな顧客接点の場としての可能性を追求したものであると言えます。

今回は、それぞれについて事例を交えながら詳しくご紹介していきます。


ニューノーマルSHOP

ニューノーマルSHOPとは、物販機能を中核とする従来型店舗をベースとしつつも、IT技術等を有効活用することで様々な買い物行動を合理化し、未来型店舗としての新しい利便性づくりに価値化を見出す店舗です。主にはスーパーやコンビニ、ディスカウントストアなど、最寄品を扱う店舗が多く取り組む戦略で、キーワードは「オートメーション化」であり、その内容はさらに細かく4つに分類できます。

 

決済オートメーション系

決済オートメーション系とは、店頭で選んだ商品をレジを通さずモバイル決済したり、ITを使って自動商品カウントしたりなど、料金支払いに関する利便性向上を図りつつ、店舗スタッフ業務の低減化を進める取り組みです。
この分野の動きは、ニューノーマルSHOP的取り組みの中でも特に進んでおり、海外で先行導入され、数年遅れて日本でも広がり始めています。


ケース1:Amazon Go / Just Walk Out(アメリカ、SM/CVS)

この事例で最も有名なのがAmazon Go(アメリカ、SM/CVS)です。Amazon Goは数年前に日本でも注目されましたが、いわゆるレジなし店舗で、CVS店舗での導入から始まり今や店舗規模がその数倍のSMにまで広がっています。スマートフォンにダウンロードした専用アプリのQRコードで入店し、あとは購入したい商品を手に取り、店を出ていくだけの「ジャスト・ウォーク・アウト(Just Walk Out)」となっています。
 

ケース2:Macy’s /Mobile Check Out(アメリカ、百貨店)

Amazon Goほどの仕組みではないものの、百貨店でも導入が進んでいます。
メイシーズの「モバイルチェックアウト」では、 「レジ待ち決済なし」「ほしいものはアプリで買い物カゴに入れる」といった購買利便性に関する顧客体験を提供。専用アプリで欲しい商品のバーコードをスキャンしてモバイル上で決済を実行。決済完了後、店内の「モバイルチェックアウト」専用デスクで画面を提示して防犯タグをはずし買い物は終了となります。


ケース3:スマートカート

さらに最近は、カート一体型商品スキャン&決済端末「スマートカート」が話題になっています。商品スキャンの機能をカートに持たせ、従来であればチェックアウト時に実施していたスキャン作業をカートで移動中に行なってしまうもので、最終的に「決済」まで行なえるスマートカートも出ています。5-6年前に海外の展示会で見られるようになり、ようやく日本でもスーパーを中心に導入が進み始めています。


 

ガイド・オートメーション系

ガイド・オートメーション系は、店舗内で商品をお探しのお客様や何か困りごとのお客様へのご案内等を自動もしくは遠隔で行うことでより便利でストレスフリーな買い物体験を提供する取り組みです。
店内のガイドを自動化する動きも、決済オートメーションに次いで様々見られるようになっています。

 

ケース4:Target / Wishlist Guidance(アメリカ、ディスカウントストア)

ターゲットでは、ビーコン技術を活用することにより、消費者のニーズに応えた、オンラインサービスや実店舗でのより高い買い物体験を提供することに注目が集まっています。例えば、広い店内で消費者がショッピングカートリストの商品を見つけ安くするために、Google Mapsのようにユーザーの位置情報を店舗マップ内の青い点で示し、リアルタイムで目指す売り場までの位置を示し、確認することができる仕組みを導入しています。
 

ケース5:SHIRO SELF(日本、化粧品店)

シロ セルフは「⼈はいないけど、愛がある。」がコンセプトで、商品説明などの接客をする販売員を配置していません。来店客は気になる商品のQRコードをスマートフォンで読み取ることで説明の⾳声を聞き、販売員の接客を受けることなく商品を購⼊することができます。販売員が担当するのは金銭授受と商品の受け渡しのみで、リアルとデジタルを融合した新感覚の店舗となっています。

SHIROでは子供の頃からデジタルツールに慣れ親しんでいるZ世代をターゲットにしており、エシカル(倫理的)な消費を意識する傾向が強いターゲットの特性を踏まえ、どの商品も化粧箱を省いた形で販売している。商品そのものは従来型店舗で販売しているものと同じですが、価格は3%オフで提供しています。
 

ケース6:PARCO / Siriusbot(日本)

シリウスボットは身長約94cmの自立走行ロボです。タッチパネルや音声操作で施設内の情報を表示し、目的の場所まで案内してくれます。センサーで障害物を感知して器用に避けて進むので、人の居る店内でも安心して利用可能。商品に付けられたRFIDタグを読み取る「在庫管理機能」も搭載しています。
 
 

プライシング・オートメーション系

プライシング・オートメーション系は、ITを活用し、店頭の値付け(電子棚札)作業をバックエンド一括で対応する取り組みです。単に値付け作業を省力化しスタッフ業務の効率化を図るだけでなく、在庫管理システムと連動し、賞味期限に応じて価格を変動させ食品ロスの削減に取り組む動きや、ECサイトも含めて値付けできることで両者間の価格差是正に取り組む動きが出てきています。


ケース7:Albert Hejin / Dynamic Pricing(オランダ、SM)

オランダのスーパーマーケットシェアの34.9%を誇る業界最大手のAlbert Hejin(アルバートハイン )では、成長戦略にテクノロジー活用が組み込まれており、その一手としてダイナミックプライシングの活用を推進。

従来、航空やホテルといった在庫を翌日に繰り越すことができない業界において活用されてきた同手法をSMにも取り入れ、食品の期限に応じて価格を動的に変動させることで食料ロスを1/3削減しながら、収益を6.3%増加させることに成功したと公開しています。

SMの中には優良顧客向けにパーソナル化された価格調節を行っているところもあります。
 

ケース8:ビックカメラ / ダイレクトプライシング(日本)

ビックカメラが採用した電子棚札は、電子ペーパーの技術を用いています。ネットワークでつながっており、本部で価格を変更したら即座に全国の店舗で同一商品の値札が更新される「ダイレクトプライジング」を可能にしています。

また、オンラインショップと店舗との価格差も解消され、さらには電子棚札の左上にはLEDランプが内蔵されていて、客からの取り置き依頼が届くと点灯する仕組みになっています。指定された店舗にある該当製品の棚札が光るので、スタッフは正確にかつ迅速に商品を探してキープできるわけです。


 

レコメンド・オートメーション系

レコメンド・オートメーション系は、VR技術やロボットなどを活用して、自動でおすすめ商品を提案してくれる取り組みです。店内に設置されたサイネージを活用したバーチャル試着は、現在では様々なサービスが導入され、比較的一般化してきましたが、昨今はバーチャル試着をスマホで実装しECにも転用するなどさらに利用が広まっています。


ケース9:Rebecca Minkoff NYC Flagship / VR Mirror(米国、アパレル)

同店は流行発信型のフラッグシップ店舗として、ニューヨークにオープンし、洗練された装飾、目を引く商品アレンジ、壁に導入された最新のVRテクノロジーによって、パーソナライズされたファッション情報共に、新しいショッピング体験が提供されています。

ここで展開されている仮想試着サービスは、服のバーチャルデータに重力値が組み込まれ、スクリーン上の人の動きに合わせて、スカートの裾や服の袖が揺れたり広がったりする仮想試着の技術が展開されており、従来よりも快適で臨場感のある試着ができるように工夫されています。さらに、試着の際にスクリーンに外の風景を映すことで、外観に合わせた試着を行ったり、利用者の興味、好みなどに応じて商品がレコメンドされ、映し出された商品をタップしていくだけで、お気に入りリストが次々と生成。そのミラーを通じて決済もできるようになっています。
 

ニューノーマルSHOPまとめ

ニューノーマルSHOPは、最先端テクノロジーを活用し、店舗業務の合理化や無人化を目指す店舗戦略であり、主に最寄品などの低単価商材を扱うSMやCVS、DSなどを中心に拡大しています。

さらに言えば、昨年末のChatGPTの登場以来、急速にAIが私たちの生活の中に浸透してきていますが、そのようなAIを搭載したロボット接客なども、これからどんどん増加していくことも予測されます。

このような動きは、確かにこれからの店舗戦略の大きな1つの方向感にはなると思いますが、この方向性の向かう先はおそらく「ECとの同質化」であり、店舗ならではの特性を活かす方向感とは異なります。

 
続いて、「サービスSHOP」「エクスペリエンスSHOP」をご紹介していきます。これらはECにはできない店舗ならではの特性を活かした店舗戦略になります。
<次回へ続く>
 
 


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