パプリカを聴きながら子供と朝日を見に行った日
先日、家族で久しぶりに出かけた。
結婚して17年目にして初めて県外の義実家に帰省できなかった、逆に印象深い、短い夏休み。
楽しみにしていてくれていた義父母や義兄に少しでも喜んでもらいたくて、きっと広島では珍しい美味しい物を送ったりして。
車エビの海老フライ、喜んでくれるかな。
心残りを解消した翌朝。
以前から訪れていた場所の日の出をどうしても撮ってみたかった。
天候にも恵まれた、体も軽い。
泊まった場所から車で行ける距離。
ひとりで行くつもりだったけど、同行したいと言った、手のかかる上の子もその早朝に珍らしく愚図らず何とかギリギリ起きて。
夜明けまであと30分の山中。
月と金星が並んでいる、西の空。
20分少しかかるという海岸まで、上の子と車で向かう。
「間に合うかな?」
「分からないな、でも日の出が見えなくてもきっと綺麗だよ」
まだ暗い道を山から海方面へ進んでいく。
BGMは娘の「パプリカの人がいい」。
明るくなって来た空、山道から海の道へ曲がる直前、後ろの方を見た上の子が
「あ、蟹だよ、ママ!」
蟹が道路を横切っている。
「後ろから車来てる、危ないよ、死んじゃうよ、ママ」
「それはまだ分からない、あのカニ動いてる」
「……、あっ、間に合った!」
海岸に到着した私たちは、横から出て来た朝日を目にする。
「間に合わなかったかな?」
「ママ、急ごう、間に合うかもしれないよ!」
娘と一緒に海岸沿いを走る。
到着した砂浜には既に撮影している人たちがいて。
邪魔にならないような場所で撮影した。
空のブルーグリーンと朝日の周辺のオレンジがかったピンク色のグラデーションの空に、金色の日の出。
構図は予定していた構図ではないけど、その時一番綺麗だと感じた構図で撮れた。
日の出を撮影した後、海岸にはたくさんのトンボが飛んでいて、その写真も撮りたかったが
「ママ、虫多いから怖いよ、帰ろうよ」と言う虫が大嫌いな上の子と、神社にお参りして帰路に着いた。
薄暗かった行きとは違って、朝日に浮かび上がる山への道。
BGMはまた米津玄師。
それまであんまり知らなかったけど、田んぼとこの人の曲って合うなぁと思いながら
稲穂が茂った田んぼの間を通りながら、「いいなぁ」「いいね」と言い合いながら上の子と聞いていた。
しばらくして
「ねぇ、ママ、嬉しかった?本当によかった?」
それを繰り返し尋ねてくる。
「そうだね。どうして同じことを聞く?」
「いっつも、ママ、私のせいで大変そうだから。仕事もできなくなったんでしょ」
「…できなくなったんじゃなくて、仕事を減らしただけだって」
そうか、責任を感じていたのかもとその時気づいた。
大変は大変かもだけど、それは。
義母がよく言っていた自分の子供達に対しての「お金は残せんけど、教育は残せるじゃろうと思ってそこだけは頑張った」と言っていたのを、本当にそうだなと思ってサポートしていただけだし。
家族が幸せでないと自分が幸せでないからなんだけど。
この方が相対的に自分の幸福量が増えるから、子供や家族のためではなく自分のために選んでいたのだと。
どう言えば彼女が自分を責めないで済むのかなと考えを巡らせて、ほかの家族が待つ場所へと帰った。
またパプリカを聴きながら「いいね」「いいなぁ」と言い合って田んぼの間の道を通って。
「日本の白砂青松100選」の一つ、大分県を代表する杵築市の美しい奈多海岸に浮かぶ小さな岩の島、市杵島。
その海岸に、海に向かって立ち、八幡社の総本社宇佐神宮とも深く関係している八幡奈多宮の元宮と言われている。
FIND/47の情景写真の一つに採用していただきました。
全国各地の地域色豊かな写真が掲載され、閲覧のほか、自由に使用・加工ができます。(商用可)