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よるのさんぽ

「ぷらぷらと散歩に行きますか?」

天気が良い日にはたまに散歩にでかける。ママと一緒に手を繋ぎながら、ルートも決めることなく、気の向くままに歩き続ける。

家の近所を歩いていても発見があるものだ。今日も大人の隠れ家のようなイタリアンを見つけたし、何回も通っている道に公衆電話があることに気づいて時の流れを感じた。

「いつから散歩するようになったんだっけ?」

ふとママから聞かれて、はて、いつだろうと悩んだ。
2019年に入って引っ越ししたけど、前の住居に住んでいる時は散歩することはなかった。コンビニに買い食いすることはあったけど。

妊娠が発覚してから、いまの住居に引越しをして夜の散歩が始まった。僕も日中パソコン作業で体を動かさないし、ママも運動がてらでかけるのにちょうどいい。

夜のまちは静かで、空気が落ち着いている。
一軒家やマンションの前を通り過ぎ、カーテンの隙間から家の灯りが漏れている。家の数だけ住んでいる人がおり、その家庭ごとにいろんな人生が詰まっているとつい色々と想像してしまう。

夜の散歩は時間が過ぎるのがゆっくりだ。
一緒に歩いていた道を通ると、昔の記憶が呼び覚まされて、懐かしい気持ちになる。振り返ると、濃密な一年をともに過ごしてきた。

けれど、振り返らないとそれもわからない。
ゆっくりと歩きながら、一年前もここを通ったねとか、その時は電球がびかびかと輝いていたよねと話していると、時の流れを感じてしまう。数年前にはママとも出会っておらず、いまの生活はまったく想像することができなかった。

毎日当然のように過ごしていることも、実は当たり前ではない。日々変化していることもあるし、変わらないこともある。月夜はひっそりと僕らを照らし、ありのままを映し出す。

夜の散歩はどこか心地が良い。
すっと真ん中に戻してくれるのだ。

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