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#36 アンケート結果の裏側を考える

自社商品やサービスを広めるときの発信のきっかけとして
「アンケートでは約8割の人が〇〇と感じています」
といった感じで、アンケート結果を利用することがありませんか?

営業や広報などで、関係する話題のアンケート結果を資料に入れると、なんとなく説得感があるような気分になりますよね。

アンケート結果は多くの場合において「客観的な数字」として捉えられやすく、消費者へのアプローチとしても「こんなに多くの人から共感がある」とか「こんなに多くの人が抱える悩みなんですよ」と、心情に訴えやすい。
そして、そういうアプローチを取ることでサービスを提供する側の ”一方的な主張" を薄める効果がある、緩和される印象があります。

なので、日常的になんらかのアンケート結果を見聞きすることが多いと思います。

私も、会社やスタジオのサービス案内を作るときには、ネットでアレコレ検索して使えそうなアンケート結果がないかを探すし、日頃からチェックしています。


また一方で、アンケートに答えることも、わりと日常的にしています。

企業からのアンケート調査依頼を受ける会社に登録していて、月に数回、あらゆるアンケートに回答しています。業界はどちらかというと日常生活にまつわる身近な話題のものが多いかな。自分がよく知らない話題のアンケートもたまにあります。

アンケートに答える側にいると、質問項目からその業界が今後考えていることや気にしていることなど、ある程度見える場合もあります。


ただ、中にはこの質問の仕方はいかにも、のちに使われるであろう宣伝だけのためじゃない?と感じるときもあります。

たとえば、ノンアルコール飲料に関するものを例に取ると

「ノンアルコール飲料は気になっていた、あるいは改めて気になった」

「ノンアルコール飲料は安くなったら、一度購入してみようと思う」

「ノンアルコール飲料は飲むと楽しい気分になる気がする」

「ノンアルコール飲料は飲むと癖になりそうだ」

「売り場でノンアルコール飲料を見たらついつい買ってしまいそうだ」

いかがでしょうか…? 
(*実際のアンケート項目を外部に開示してはならないという規約があるので、上記に書いた例はあくまで架空の質問ですが、ニュアンスはほぼ一緒です)

この質問項目に対して、それぞれ

そう思う・どちらかといえばそう思う・どちらでもない・どちらかというとそうは思わない・そうは思わない

の5択形式で回答します。

この質問の仕方は、なんというか、商品開発に活かすとかノンアルコール飲料に対する意識調査とは明らかに違う意図が見えますよね。
この調査結果を使った宣伝が思わず目に浮かびます。
あたかもヘビーユーザーが自発的に述べた感想として扱われた広告やリリースのコピーになってそう。


数字の入ったアンケート結果を見たとき「そうなんだー」と感じることもありますが、上記のようなアンケート収集の方法は果たして本当にそうだといえるのか?

”アンケート結果”としての事実はそうであっても、真実はやや歪められているような印象があります。
アンケートに〇〇と書いてあって、「そうは思わない」とは言えないか・・、言われれば、そう思うこともあるか・・という心理状態と、
回答者が自発的に「〇〇と思います!」という心理状態には大きな差があります。

また、回答形式は5段階でも、集約段階ではなぜか「どちらかというとそう思う」「どちらともいえない」までを「そう思う」に含めてしまう場合もある。
「不満と感じた人はわずか5%!多くの人が満足していると回答しています」というような使われ方をするパターン。ウソではないし表現のテクニックではあるけれど、ちょっとモヤっとするひともいるかもですね。


アンケート結果を使うのは、発信者側がそもそも "使いやすい” から使うというのが前提にあるし、私自身も ”表現の工夫" はしているので、先ほど書いたようなやり方が「良くないこと」とは思いません。
ただ、気をつけているのは、事実と表現のテクニックを混在してはいけないな、と思っています。

事実と異なることを思い込んだり、言い続けたりしていると、自分自身もいつの間にかそれが「事実」だと信じてしまったり、記憶がすり替えられてしまうのが一番こわい。取るべき戦術を誤った方向へ導きかねません。

ということで、アンケート結果の使い方には、ちょっと注意をしています。知らず知らずのうちに、自分で自分を騙してしまったらマヌケですからね。



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