#29 周年パーティーに学ぶ顧客満足の考え方
(この記事は、近隣のお客さんを取り込みたい飲食店、個人で店舗を持つ人に何らかのヒントになる記事です)
先日、数年前から足を運んでいるイタリアンで周年パーティーがありました。今年12年目を迎えるそうです。7,8年前くらいに初めて行ったのをきっかけに、不定期な頻度ですが年に何度か足を運んでいます。常連というほどではないけど、店員さんは顔を見れば「あぁ、いつもどうも」という感じで覚えていてくれている様子です。
facebookで周年パーティのことを知って、ちょうど行けそうな日時だったので参加しました。そのときに感じた「顧客満足」の考え方とその手法に発見があったので、そのことを書いてみたいと思います。
手法、と書きましたが、ここから書くことはあくまで私の分析であって、そのお店自体が意識的に実施しているかどうかは定かでありません。むしろ、お店を運営していく上で自然とそうなったのではないかな、と思います。
しかし、業種は違いますが、店舗に集客して売上を立てるという部分は自分のスタジオと同じこともあり、顧客満足を高めながら運営をしていく秘訣のようなものを常々求めていて、いろいろな店舗からヒントを得たいと考えています。
ということで、私なりに感じたそのお店での「顧客満足の秘訣」を分析しています。
★周年パーティーの内容
お店自体は駅からすぐの立地で、席数は25、6くらいです。窯焼きピザがとても美味しく、他のお料理や飲み物も、お手頃価格で楽しめる気軽な雰囲気です。イタリアン居酒屋、という呼び方が相応しいかどうかは分かりませんが、一人あたり4,000円前後もあれば、まぁまぁお腹もお酒もちょうどいい感じになるのではないかなと思います。
周年パーティでは、参加料金3,000円で飲み放題、お料理は事前に用意されたビュッフェスタイルです。
最初にfacebookでその告知を見たときは、
「飲み放題になっていてこの値段だと、飲み物も食べ物も相当限られているのかな」とか、
「立食形式であまりたくさんは食べられないのかな」と思いました。
感覚値としては安すぎる、もしかしたらピザはないのかも~、と勝手にアレコレ想像していました。
しかし、いざ参加してみたらビックリ。飲み放題の飲み物は、通常メニューの大半が対象になっているし、お料理もかなり豪華。ローストビーフや生ハムもある、ピザも焼いてくれる!そして、席に座れる!立食じゃない。お得すぎやしないか?相当な赤字になるんじゃないのか・・などと余計な心配を思わずしてしまうくらい、想像を超えた満足度。「大盤振る舞い」という言葉がピッタリな感じでした。
★周年パーティーの考え方
お店が周年パーティーを開く背景には、それぞれ経営者のいろいろな思いがありますが、「お客様への感謝」という部分は共通していると思います。
なので、飲食店の場合は日頃ご愛顧いただいているリピーターのお客さんを中心に、いつもよりお得感を味わっていただきたい、という内容のメニューにするお店も多いと思います。
ただし、この場合は恐らく、事前に参加していただくお客さんをある程度限定できるような工夫をしていると思います。なぜなら、そういうことが広く知れ渡ってしまうと、「お得感」目当ての一見さんが押し寄せる可能性もあるし、少々厚かましいお客さんがいると、いつも来ていただいているお客さんに対して不快な印象を与えてしまう可能性が高いからです。いわゆる「荒らし客」のような人はお店にとっては大変なリスクです。
なので、「いつもご利用いただいているお客様への感謝」が趣旨であれば、招待状を持参いただくなど、お店が事前にお客さんを把握できる「限定」をつけると思います。
もう一つ、飲食店が周年パーティーを開く背景には、その日に「大きく売上を立てる」という考え方もあります。
こちらは、どちらかというと「イベントで集客する」という要素と同じで、この日ばかりは、と華々しいイベントにしていつもより集客を募る、というやり方です。
お得感も見せつつ、決して赤字にはしない、いや、むしろなんとしてでも利益を出す。そして、告知もバンバンしてとにかく一人でも多くのお客さんに来てもらう、一見さんもちろん歓迎!というスタイルです。お料理や飲み物は、正直、まぁ、「それなりだよね」という印象のことが多いと思います。
これはこれで、お店を認知してもって新規顧客を獲得するには良い機会だと思うし、食べるより「飲む」がメインであれば、周年パーティーで知ってそのあと、再訪してもらえる可能性もあるやり方だと思います。
★顧客満足を高めつつ、リスクを回避する方法
ところが、今回参加した周年パーティーは、お客さんを事前招待制にするわけでもなく、料金もそれほど高くはない。なのに、あれだけのお料理や飲み物をサービスできる。変なお客さんが来る心配はなかったのかなぁ、と不思議に思いました。
しかし、パーティーの構成要素を分析してみると、もしかしたらこういう方法でリスクを回避しているのかな、と思うようになりました。
冒頭でも書きましたが、あくまで私の分析なので、必ずしもそうだ、ということではないですよ。
①開催日に秘密あり
周年パーティーの開催日は日曜日の夜でした。これ、1つ大きなポイントだと思います。
お店があるエリアは東京の下町。住宅街ではあるけど、自営業者や小さい規模のオフィスもそれなりに多く点在している街です。飲食店は大型チェーン店はほとんどなく、10坪以下のややこじんまりしたお店や30席前後の飲食店が多い街です。
こういった下町エリアで飲食店に行きやすい曜日を考えたとき、たいていは木金土あたりを想像します。平日に働いている人は日曜の夜に外でお酒を飲む、というのはなんとなく避けることが多いのではないでしょうか。
つまり、日曜夜の開催でも来てくれる常連さん、または近隣のお客さんに限定できる工夫なんだと思います。
②SNSで告知しても、見込み数が把握できる
お店はfacebookで周年パーティーの開催を告知していましたが、facebook自体の運用をすごくがんばっている印象はあまりありません。更新頻度は月に数回程度、他のSNSも同様な印象。いいねの数やシェアも爆発的に多いという感じはありません。
ということは、SNSで告知をしても、普段の投稿に対する反応から、パーティーに来るであろう見込み数というのもある程度は読める、と考えられます。
私もそうですが、つい、SNSというのは告知効果を期待してしまうし、なるべく多くの人に届くように”がんばろう”とするひとの方が多いと思います。がんばろうとするけど、SNSを楽しく運用できないと力尽きて中途半端な感じになりやすいです。私はわりとそっち寄り。
このお店の”中の人”が、SNSが好きなのか嫌いなのか得意なのか不得意なのかは分かりませんが、きっと「いい塩梅」で運用できているのではないかと思います。いいねとかシェアとか、そういうのは気にせずに運用しているのではないかな。
③入り口での工夫
そして、最後のポイントが、店に入る手前の工夫でした。
お店は2階にありビルの外階段を上って、入り口がすぐあります。通常、階段の一番下に、お店の看板を出しています。
周年パーティーの日はここに「本日貸切」という看板も立てていました。
これも大きなポイントだと思いました。
「本日貸切」と書いておけば、とりあえずたまたま通りかかった一見さんが入る可能性はまずなくなります。
そして、facebookで告知を見た人も、もしそれほどお店のことを知らずになんとなく目にした程度のひとだったら、たとえお店の前を通っても「貸切」とあれば、周年パーティーのことを思い出すこともないと思います。
つまり、facebookで告知を見て確実に「行ってみよう」と思って来た人しか入れない仕組みです。私自身、「貸切」の文字に入っていいものか躊躇しました。「お店に事前に連絡しないといけなかったのかな・・」と過りました。躊躇しながらもお店の扉を開けたら、店員さんがいつもどおり「あぁ、いつもどうも」と気づいてくれました。
この入口の工夫は、パーティーの雰囲気を左右するある種の「カギ」だと思いました。お店側にとっては「絶対来たいと思っていくれたお客さん、ファン」と判断できる。そして入店したときには名前を書く流れだったので顔と名前が一致する。
リピーターやファンをしっかり認識できる良い手法だと思いました。
★満足度が高ければ、必然的にリピートする
顧客満足を高めつつ、荒らし客が入らないようにする、でも、新規の裾野をちょっと広げる、という工夫は、なかなか実際にやるのは難しいです。計画してやろうと思っても想定どおりにはできない。
きっと、私がパーティーに参加したお店は、長い年月をかけてそういう工夫を積み重ねてきたのではないかなと感じています。
パーティーの内容がお得すぎて、「お得すぎるから近いうちにまた来なきゃ、なんか悪いな」と焦ってしまうくらいでした。なので、近いうちにまたお店に行く予定です。
それにしても、自然な気持ちでこういうふうなリピートになるのも、運営する側としては喉から手が出るほど欲しい作戦、お店がこれまでいろいろな工夫を積み重ねてきた結果だと思います。
個人での店舗運営は、とにかく集客に苦労するので、つい、「お金をかけられれば・・」とか「SNSをがんばれば・・」ということを思うことも多いと思います。実際、私自身もすごく日々悩んでいます。
こればかりはすぐに効果を出すのは難しいですが、トライ&エラーを繰り返したり他の店舗を参考にしていく。コレに尽きる。
また、既に来ていただいているお客さんをよーく分析すると、その店舗独自の手法でリピーターを増やすヒントがあるように思います。
上記に掲載したのは東京の下町エリアでの事例ですが、何らかの参考になれば幸いです。
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