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情熱を持って創った人たち(木村泰司『印象派という革命』)
明るい風景画
世間を映し出した主題
筆の動きがわかる筆致
私が抱いていた印象派のイメージは「明るく、軽やか」だった。
印象派以前の絵画は宗教画や宮廷画であり、宗教(=キリスト教)や時の為政者のための、いわば権威を表すもの。
そこにいきなり「日常」描く人たちが現れて新しい風を吹かせた、そんな風に思っていた。
しかし現実は政治や権力との闘争があり、信念を曲げずに描き続けた人たちの熱狂なくしては歴史に残ることがなかったことが、この本を読めばわかる。
マネ、モネ、ルノワール、ドガ。
印象派と言えば名前があがる人はもちろん、今よりもずっと女性に自由がなかった時代に画家として生きた、モリゾ、カサットについても書かれている。
各人の作家性の違い、主題の変化の理由が、彼ら彼女らの人生とリンクしているのがよくわかる。
グループとして一括りにされているが、生き様は千差万別だ。
人の歴史を垣間見ることは、自分を見つめ直す機会にもなる。
書いてある全員けっこう波乱万丈だが、描くことへの情熱は失わなかった。
そして何歳だろうが貪欲に作品の向上を求めていた。
作品は「この程度」などと思わずやり続けた人たちが至った過程であり境地だ。
それ程までに情熱を持てるものが自分にあるのかと考えてしまう。
『印象派という革命』という題名の通りどのように革命だったのかについて書いてあるが、そこに書かれているのは時代背景の中であのような作品を作ることへの敬意に溢れている。
もちろん、色彩分割法の確立や風景、風俗といったそれまで評価されなかった主題への挑戦、戸外製作といった手法の革命についての言及も詳しい。
しかしそれ以上に、時代背景と作家の人生をみせることで作品に奥行きを与え、その価値を再確認させてくれる本だと思う。
先日の横浜美術館の印象派展の前に読んでおけばよかったと、ちょっと後悔した。
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